テスト、なんて嫌な響きだ
「まだ治らないな」
「あぁ、」
俺たちが目を覚まして1週間、
要するに怪我をしておよそ2週間なのだが
怪我が治る気配が全くない。
まぁあの怪我だからな、と言っている間に
2週間経過してしまったわけだ。
その間は魔法を使うことはおろか、
魔力を練る事すら出来なかった。
俺らは今日、「魔法が使えるかどうか試してみてください」
という一与姫のお願いを聞き、今中庭に居る。
横では清水と阿立が見張っている。
俺がさっき清水らに
「なんで清水さんが居るんすか?」
と聞くと「お前には関係ない」とか言ってるし、
何だろうな、清水らがここに来る必要ないのにな
まぁいいかと割り切ってとりあえず魔法が使えるかどうかを試す、
って言う目的のはずだからな、
「よし!」俺は張り切って魔力を・・・練れない・・・
「俺も!」と、隼も魔力を・・・練れていないようだ・・・
「どうした?」
「まだ無理か?」
清水と阿立が俺らの様子をうかがう。
俺らは別に今日中にしないといけないわけでもないので即座に諦め、
阿立と清水に、
「じゃ、学校行って来るんで」
そう言って学校へ向かった。
「ってことがあってだな」
「へーだから今日も遅刻したの?」
槇は『信じ切れなねぇよ!』
という目線を送るとともに
「まぁ、なんで王族の城に住んでるのかは聞かないけどさ」と始める。
俺は無言で『あぁ、聞かないででくれ』オーラをだすと槇は、
「遅刻ばっかりしてるとテスト欠るよ?」と言った。・・・ん?
「テスト?」
「うんテスト。」
「マジで?」
「マジで☆」
「どんな内容?」
「筆記」
「死んだ・・・」
「お疲れ」
「因みにいつからだ?」
「明日って先生言ってたじゃん。」
「聞いてないぞ!」
「その時君たち学校来てなかったしね・・・」
「じゃあ教えてくれよ!」
「まぁ、何とかなるんじゃない?」
「ならねーよ!間にあわねーよ!」
「じゃあ知ってたら勉強してたの?」
「・・・・・すいませんでした」
「ほら!やっぱりそうじゃん!どうせテスト前は一夜漬けなんでしょ?」
「まぁな、わざわざ一週間も前からする気起きねぇし」
「私はちゃんとやってるけどね!」
「ウソ・・・だろ・・・」
「何その反応・・・」
「だってお前って『やっば!明日テストじゃん!』とか言いながらも結局その日もなんだかんだでなにも出来ずテスト直前に『あばば』ってしてるキャラじゃん!」
「あんた・・・それ梓沙じゃん・・・」
「え?マジ?」
「そうよ!あの子ああ見えて馬鹿なんだから」
「ギャップ萌えやべぇ」
「オイコラ」
~2日後~
「じゃ、テスト返しますよ~」
山内先生がテストの解答用紙を持って来る。
〇〇君、〇〇さん、と、俺の順番が近付いてくる。
槇は結構良かったようだ。
梓沙は・・・涙目だった。
「次は・・・一二三一君」
不覚にもキュンと来てしまった。
「あれ?一君?」
いやはや、普段キリっとしてる分、こういうテスト駄目駄目という
マイナス面がむしろプラスに働いている。
「一君?」
恐るべし、梓、
「一君!」
「うお!」
「テスト、取りに来てください。」
「はい」
「点数良かったからってぼーっとしてちゃ駄目ですよ?」
「あ、はい」
全く、俺とした事が、自分の世界に入っていたらしい。
点数は・・・91点か、一夜漬けなら問題なしだな。
「次、隼君」
「隼君?」
「お~い」
「隼君!」
「うお!」
あいつもか・・・
「さっき帰って来たの、何点だった?」
槇が自信満々にこっちと自分のテストの答案をチラチラみながらニヤニヤしている。
「俺は別にそこまで良くなかったぞ?」
「あぁ、俺もだ」
俺らが答えると梓沙の表情がパッと明るくなった。
やべぇ、萌える。
「何よ、あんたたち一夜漬けで頑張ったんじゃないの?」
槇は相当点数が良かったようだ。
まぁ、あのテスト結構簡単だったしな。
「私は89点よ!」
・・・・・空気読まずに勝っちまったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ
「・・・・。」
「・・・・。」
「槇ちゃん凄いよ!」
俺らは空気を壊さない為に押し黙る。
「で?あんたらは?」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「私は23点・・・ぐすっ」
やっべぇ可愛い!!!
「やっぱりね!梓沙はアレだもんね」
「酷いよ・・・。」
「で?あんたらは?」
「・・・。」
「・・・。」
「あんたらは?」
「・・・。」
「・・・。」
「どうしたの?悪かったの?」
槇が挑発的な態度を取る。
やっべ、ウザい!今のはウザい!俺らが何のために黙ってると思ってやがる!
我慢だ我慢我慢我慢我慢!
「いや、悪かったと言うか、」
「なんというか」
「ふふっ、だから一夜漬けじゃ無理っていったのよ」
言ってねぇだろお前!
「ま、私に頼みこめば勉強くらい教えてあげなくもないけど?」
くっそ!マジくっそ!お前舐めやがって。
「あ。」
俺の手から答案が滑り落ちる。
そしてその答案は槇・・ではなく梓沙の元へ・・・
「?!」
槇の顔から希望の色が消える。
梓沙はきっと俺たちが結構悪いみたいだから仲間が居ると思っていたんだろう。
なんだかもう泣きそうだ、というかもうあれ泣いてんだろ
梓沙には悪い事をした。
俺は梓沙から答案を受け取る。
「梓沙?何で泣いてるの?」
槇は空気が読めないようだ。
「何でも・・・ないよ」
梓沙はいい子だなぁ・・・
俺は隼と目線で会話を試みる
(・・・・・・・・・。)
(・・・・・・・・・。)
分らん・・・。
全く分らん・・・。
「スキあり!」
すると槇が俺の手の中から回答用紙をするりと抜きとった。
そして・・・・
空気が死んだ。