ドッヂボールだ(キリッ
「とりあえず逃げるぞ!」俺と隼は同じチームに選抜され、恐怖のドッヂボールは始まった。球は燃えたり電流が走ってるわ風でボールの方へ引き寄せられるわ床は濡れて滑るわでカオスなドッヂボール、俺たちに対抗する魔法は無い、なので無駄に広いコートを逃げ回るしかないのだ、俺も隼もこっちの世界では運動神経が飛躍的に上昇している(それはもう50mを3.5秒で走るレベルに)逃げるだけなら問題はないし、受け止める事さえ出来れば(出来れば苦労しないのだが)そこらのボールより2倍は速い球を投げることだって出来る。だが、今の俺たちに球を受け取る事は出来ない。要は「隼、取りあえずちょこまかしとくか、」「・・・あぁそうだな」こうなるのである。
「一、大丈夫か?」俺が一の心配をしていると『よそ見してる暇はないぜ』と言わんばかりの球が飛んでくる、俺はそれを華麗に避け、次の球に備える、一もまだやれそうだ、俺たちは『死ぬんじゃないぜ!』的アイコンタクトを交わした。
試合中盤、40人クラスの内20人づつのチームなのだが、こちらのチームは後11人、向こうのチームは槇と梓沙を含め後9人の所で、槇が梓沙に「そろそろ本気出そうか♪」と爽やかな汗を流しながら言った、俺らは最初は「負けてる癖に、ハッタリだろ。」と思いっていた、少し怪しいと言えば怪しいのは梓沙が槇の後ろに立っている、あの発言の後なので何かしているんだろうと思いつつ、敵の攻撃に備えていると、槇が投げるモーションに入った、さっき槇が投げるのを見たときは、燃えてはいたものの、スピードは余り速くなく、何より水の魔法使う子に捕られていた、あれなら避けれる。そう思ったその瞬間だった。槇の細い腕から放たれた球は一瞬でその水の魔法を使う男の子を吹き飛ばした。
は?何だあれ、無理だろ、取れるわけないじゃん。槇が放った球は時速300キロ程の速度で左に立っていた子の腹に直撃した。その子は魔法で守ったにも関わらず10m程吹き飛んだ。何より怖いのは投げた瞬間には既に300キロの速度が出ている上に速度が落ちないのだ、その上燃えている。俺たちは戦慄を覚えたね、正直怖い。マジ怖い、っふう、冷静に考えると多分あれは梓沙の技だろう。どうせ微弱電流の塊である脳の電子回路をちょっと弄って体のリミッタを解除したのだろう、あいつは今下手したら俺らより運動能力が高いかもしれない。だがそうだとしたら長くは続かないだろう。槇は転がって来たボールを拾い上げ、投球する。
じゃんじゃん当たっていく、それにあたった球は綺麗に槇の足元に転がっていく、もしかしてそれ、計算なのか?と思いたくなるレベルだ、そして俺らを狙わないのは、後々じっくり痛めつける為だろう、ドSめがこの野郎・・・そしてなんだかんだであっという間にこっち側チームは俺ら二人になってしまった様だ、でも、それと同時に槇の脳ミソも限界らしい、梓沙は槇の後ろから離れ、槇の左側に立っている。そして槇は肩で息をしている。これで槇は使い物にならないだろう、そしてこちらのボールからである。俺は隼にボールを投げ渡した、
何となくだ。
一が何故か俺に球を回してくる、俺が一の顔を見ると一は『え?何となくだけど?』とでも言いたそうな顔でこちらを見てくる。仕方ないので俺は特に仲良くもない男の子に向かってちょっと強めに球を投げた。「ドゴッ」と言う重い音が聞こえる、あぁ、やっちまった。俺は一に転がって来た球を投げ渡す、
何となくだ。
あ~ぁ、隼やっちゃったな、普通に280キロは出てたなあれ、多分隼的には7~8割しか出してなかったんだろうけどな、大丈夫か?あの子、その時、隼が俺にボールを渡してきた。俺は特に仲良くない子に向かって超全力で球を投げた。その球はそのままその男の子に直撃し、跳ね返った球が、更に槇含む3人に当たり、俺は前人未到の4人同時当てを成功させた。そして調子に乗った俺はあれ?あの魔法球位受けれるんじゃねぇ?などと浅はかな考えをしてしまい、梓沙のビリビリ球が直撃、しびれた体で退散する羽目になった、因みにこのドッヂボールに外野のルールは無い。俺は最後の希望を隼に託し、コートを去った。
一、あいつ何考えてるんだ、馬鹿なのか?360キロは出てたぞあの球・・・当たった子保健室につれてかれたし・・・その上梓沙に当てられたのにかっこよくコートから去っていったし、まぁどっちにせよ俺が残りの4人相手にしないといけないわけで、と言う事で俺は妖刀を鞘から抜くことにした。
プレイボールの掛け声とともに梓沙がビリビリ球を投げてくる。俺は自慢の愛刀でその球を斬りつけ、魔力を吸収した。・・・がその球は魔力こそは無くしたものの、球の勢いは残っている。球は魔力を吸収された後、一直線に俺の足元に向かって俺の足首に直撃する形となった。
要は勝者、槇チーム!だった。