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ドラゴン討伐

……………………


 ──ドラゴン討伐



 80階層のドラゴン討伐前日。

 俺たちは早めに家を出て、合流地点である79階層を目指した。


「道中のエリアボスは太平洋保安公司が掃討してくれているらしい」


 俺は作戦計画に記された情報を見てそう言う。

 道中のクリーチャーやエリアボスは太平洋保安公司の先遣隊が掃討し、俺たちはスムーズに79階層まで潜れると、そうなっていた。


「確かにエリアボスはいませんね」


「退屈だなー!」


 サタナエルとマルキダエルのふたりもエリアボスのいない階層を見渡してそんなことを言っていた。


「油断はするなよ。と言っても対処するのはどうせ俺なんだが……」


 俺はそうぼやきながら79階層に向かう。

 そして、無事に79階層に到達すると、そこには太平洋保安公司の部隊が待っていた。


「あんたが佐世保?」


「ああ。生体認証してくれ」


「了解だ」


 指揮官らしき男が俺をARデバイスで生体認証。


「確認した。ようこそドラゴン退治へ。俺は指揮官の長谷川だ」


 生体認証が終わると指揮官は長谷川と名乗った。


「で、具体的な作戦はあるのか? 無反動砲も通用しなかった相手なんだろう?」


「ああ。だから、無反動砲より強力な火力を使うことにした。こいつだ」


 そう言って長谷川が俺に見せたのは──。


「爆薬。それも信じられないほど大量の爆薬だな」


「ありったけの高性能軍用爆弾で爆殺する。それがプランAだ」


 俺が目を見張るのに長谷川はそう言った。


「それに失敗したら?」


「あんた頼りのプランB。あんたはドラゴンを殺ったことがあるんだろう? 今回もよろしく頼むぜ」


「はあ」


 俺は長谷川に軽く言われて思わずため息。

 今回はチーム戦で無理な負担はないかと思ったのにな。


「分かった、分かった。だが、これだけの爆薬を使えば確実に爆殺できるだろう」


「そう。俺たちはドラゴンが死ぬかどうかより、ダンジョンが崩壊する方を恐れているぐらいだ」


 しかし、爆薬で解決できる問題ならば俺が呼ばれる意味が分からない。

 恐らく司馬は爆薬で殺せないと思っているのだろう。

 そうでなければ俺に作戦に参加するだけで90階層の情報や通行許可を与えたりしないはずだ。


「では、行くぞ。作戦開始だ」


 俺の中に不安が残る中で、長谷川の号令で作戦が開始された。


 俺たちは隊列を作って80階層に潜っていく。

 手順はこうだ。

 工兵が先に援護を受けて80階層内に爆薬を設置。

 それから無人地上車両(UGV)でドラゴンを誘い出し、爆薬設置個所まで誘導

 そして起爆。ドラゴンを吹っ飛ばす。


「工兵、前へ」


 長谷川が命じ、工兵たちが爆薬を抱えたミュールボットとともに前に出ようとした。

 しかし、その時点で計画が狂った。


『……忌々しい人間どもが……』


 重低音の地獄から響いてきたような声が聞こえると、何かが羽ばたく音が聞こえ、それからすぐに俺たちの前に──。


「ドラゴン……!?」


 そう、金色の鱗のドラゴンが姿を見せたのだ。


「爆薬設置は!?」


「間に合いません!」


 ああ。畜生。長谷川たちは完全にパニックだ。

 この至近距離で爆弾を仕掛けて離脱するのは無理だろう。

 あまりにもドラゴンとの距離が近すぎる。


『死ね、人間ども』


 ドラゴンはそう言うと火炎放射を放つ。

 爆薬を搭載していたミュールボットが炎に包まれるも、まだ爆薬には信管をつけていなかったので誘爆することは避けられた。

 しかし、工兵たちは炎に包まれてしまい、全員が逃げ散っている。


「俺が出る。プランBだ」


 ここで俺は前に出た。

 爆薬はもう使えない。この場で生存するには俺が前に出るしかない。


『貴様は……』


 俺が超高周波振動ナイフを手に前に出ると、ドラゴンが本当に僅かに動揺するのが分かった。


『なるほど。サタナエルとマルキダエルを倒した男か……。忌まわしい……』


 それからドラゴンはやはり重低音でそう言うと、俺に向けて火炎放射を放った。

 俺は強化脳を起動し、火炎放射を紙一重で回避。

 一気に勝負をつけるためにドラゴンとの距離を詰めようとする。


『私が連中のように簡単にやられるとは思わないことだ』


 ドラゴンはそう言い、距離を詰めようとする俺に向けて炎の壁を展開する。

 しかし、炎の壁は機械化し、痛覚をマスキングしている俺にとって勇気があれば越えられる。

 俺は炎の壁を突破し、ドラゴンに迫る。


『ほう。なかなかに厄介だな……』


 ドラゴンは唸るようにそう言うと火炎放射ではなく、別の攻撃手段を用いた。

 それは──。


「炎の剣……!?」


 マルキダエルが使ったような炎の剣だ。

 それを両手に装備したドラゴンがそれを交差させるように振るう。

 火炎放射器のように放たれた炎は回避しきれない。

 俺に向けて迫る炎に死の覚悟を決めたときだ。


「旦那様」


 サタナエルが前に出て炎を消滅させた。

 その様子にドラゴンが苦々しげな恐ろしい表情を浮かべる。


『なぜそいつに味方する、サタナエル。我々は最深部を守らねばならん』


「ボクの旦那様だからですよ。それにこの方は全てを変える存在になりえます」


『ほう。その男が特異点だと?』


「ええ。ボクの魂がそう言っています」


『面白い。では、試させてもらおう』


 特異点? 何の話だ?


『特異点、イレギュラー、そして英雄。全ては同じこと。このダンジョンを制覇する集団ではなく、個を我々は待ち望んでいた。お前にその資格があるのか、確かめさせてもらおう』


 ドラゴンは再び炎を剣を構えて俺に立ち向かってくる。


「そうかい。なら、やってやるよ──!」


 俺は機械化した身体の出力を全力を越えて引き上げ、加速し、加速し、もっと加速し、ドラゴンが炎の剣を降る前に懐に飛び込もうとする。


『その程度か?』


 ドラゴンは挑発するようにそう言い、俺の予想よりずっと速く剣を振るった。

 しかし、今度は座して死を待つような真似はしない。

 俺は食らいついた。ドラゴンの炎の剣から放たれた火炎を回避し、ドラゴンの懐に向けて全力で飛び込む。


『ぐぬ……!』


 あまりに俺が勢いよく飛び込んだためにドラゴンは衝突時の衝撃で姿勢を崩した。

 チャンスだ。


「くたばりやがれ!」


 俺はドラゴンの首を狙ってナイフを突き立てる。


『この程度!』


 ドラゴンは首を振るって俺を振り払うと首から血を流しながらも、俺の方を殺意の籠った視線で見つめる。


『確かに価値がありそうな人間だ。くだらぬアリのように集まらなければ何もできない忌まわしい連中とは違う。価値のある個人のようだ。しかし、私を突破できなければ、やはり価値はない』


 ドラゴンはそう言うと握っていた炎の剣を宙に浮かべた。

 それが分裂し、空中に6本の炎の剣が浮かぶ。


『さあ、私を倒せるか?』


 ドラゴンはそう俺に問いかけてくる……。


……………………

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はっ!浮かぶ炎の剣、まさか!?
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