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ロード・オブ・三国志X ~ 乙女ゲーム転生! 推し軍師・郭嘉の神技能を継承し、曹操を主君として、乙女軍師として征く三国覇道 ~  作者: 初美陽一
第三幕 荊州の無血開城から、長坂の戦いへ――三国英傑と初の戦! 『VS劉備軍!』

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第27話 ゲームにはなかった、不測の事態――〝敵の転生者〟の影――!

 司馬懿しばい殿を含め、曹操軍の名立たる軍師たちが、戦場の至る所で計略を繰り出し、逃げ惑う民たちを捕縛していく。


「うむ……さすが、おれの自慢の軍師たち。民を出来る限り殺さず、という困難な戦いを、見事にやってのけている……素晴らしい智謀の士らよ!」


 曹操様が喜ぶように、その様子は龍の尻尾に食いつく鳳の如く、長大に過ぎる民草の列は、最後部から徐々に減らされていった。

 攻撃して蹴散らす方法ではなく、降伏・捕縛を旨としているから、さすがに進行は遅い。けれど着実に、戦は曹操軍の優位で進んでいる。


 ゲーム知識からの経験則だけど、このまま順調にいけば、こちらの損害は最小限に抑え――劉備軍の猛将たちによる反撃も、封じたまま戦いを終えられる。

 ただ、劉備をこの戦いで倒す、あるいは捕まえることは、実質的に()()()だ。


1.劉備に追いつくなら、民を蹴散らして迅速に侵攻しなければならない。

2.民に危害を加えると、それに比例して劉備臣下の猛将たちの士気が上昇する(つまりパワーアップ。しかも上限が無いレベル)

3.結果、猛将に対抗できず曹操軍が手痛い反撃を受け、しかも劉備には逃げられる。


 と言う流れで、デメリットしかない――かといって10万を超すかもしれない民の群れを相手に、どんなに効率よくくだしても、劉備に追いつくのには間に合わない。


 つまりこの長坂の戦いでは、どう頑張っても劉備と決着を付けることは出来ない、というわけだ。

 なので先々を考えても、この戦で実現できる最良の結果は……


※解答※

『民は出来るだけ確保して曹操勢力に戻し、こちらの兵力の損耗を最低限に抑え、武将たち人材の被害を出さないようにする』


 ということになる。……出陣前から覚悟はしていたけど、やっぱり()()()()、困難な戦よねぇ……ゲームでも、ここの難易度は本当に異常だったもん。


 それでも今のところは、劉備軍の猛将……特に張飛ちょうひなんかの反撃が無いのを見るに、事は上手く進んでいると思う。上昇かかっている時の張飛は、本当に〝万人敵〟の異名の通り、()()()()()()()()()()()強さだからなぁ……。


 そんなことを考えていると――不意に伝令の声が届く。


『――報告いたします! われらが曹公(※曹操)の軍の背後から、一騎の……胸中に()()()()()()()()()が、単騎駆けで猛進している模様! 遮る兵も、無きかの如くに……その武威、異常! 如何いたしましょう!?』


「むっ……なんと! 好きに暴れさせるな、誰か将を援軍に――」

「お待ちを、曹操様!」


 赤子を抱き、単騎駆けする若武者――そのイメージに、私は明確な()()()()があった。だからこそ、()()()()()()()()に献策する必要がある。


「その若武者の突撃は、恐らく何者にも止められません。それほど今は()()()()()()()状態かと。下手に道を遮らず、素通りさせてしまうべきかと存じます!」


「! ふむ、甄嘉のことだ、それほどハッキリと言うなら、何かおれの知らぬ根拠があるのだろう……あい分かった、その通りに兵を動かそう! その赤子を抱いて駆ける()()な若武者には、むしろ同情して道を譲ってやれ!」


 なるほど、と頷きたくなる上手い言いようだ。若武者を恐れて逃げるわけではない、と曹操様は言外に伝えている。

 とにかく、これで私にとって()()()()()()()()()からの被害は、最小限に抑えられるだろう。下手に当たれば、どんなに強い味方武将でも、討ち取られてしまうほどだから。


 とにかくまずは、一安心――ではない。



『ほ、ほ……報告いたします! くだんの若武者が……激しく()()()()し、われらの軍に後方から突撃していきました――!』


「――――はい?」



 それは私にとって、完全に――不測の事態だ。

 その若武者は赤子の救出を第一義だいいちぎとし、攻撃を優先するコトは、あり得ないはずだから。だからこそ、発揮できている力、そのはずなのに。


 なのに、今――あまりにも不自然な方向転換。まるで()()()、が、ここでのみ発揮される若武者の武力上昇を()()()()()、利用すべく動かしたようだ。

 そして、若武者の突進する先を確認して、私は大いに焦燥感を煽られることになる。


「! ――まずい! このままでは、あの若武者は……夏侯惇かこうとん殿の背に()()()()ます!」


「むっ! むうう……あの尋常でない勢いは、確かに見過ごせんが……夏侯惇の武勇なら、そう遅れは――」


「っ、申し訳ございません、曹操様――甄嘉は、夏侯惇殿の救援に向かいます! 馬車、は……丘陵と林に遮られて、いけないっ……最短距離で、走っていきます!」


「なっ……おい、甄嘉!?」


 馬車を飛び降り、駆け出しながら、私は曹操様に声をかける。


「曹操様の覇業のため、ここで夏侯惇という筆頭将軍をうしなうワケにはいきません! 大丈夫です、何とか……何とかしてみせますので!」


「! ……夏侯惇を、喪う、だと? あの若武者は……それほどの脅威だ、と……甄嘉、キミの目は、それを見通しているのか? っ……ええい、おれも追う! ついてこい、虎豹騎こひょうき、迂回して丘を降りるぞ!」


 重装騎兵の馬蹄が響くのを聞きながら、私は振り返らず走り――考える。


 若武者の、明らかに異様な行動、方向転換――赤子を抱えた彼は、()()の下へと一直線に向かうはず。その一直線の向かう先を操作するなら、恐らく劉備の居場所を動かし、旗などの合図で若武者に伝えたのだろう。


 でもそれは、〝そういう行動パターンなのだ〟と知っていなければ、出来ない芸当だ。そう、たとえば私のように――

 ――〝ロード・オブ・三国志というゲームの知識がある、()()()〟――


 そして、私やサイちゃんと同じような時期に転生したとして、この戦とタイミングが合致するプレイヤーヒロインといえば、一人が思い当たる。

 史実においては、あの〝諸葛亮孔明〟の嫁として有名な、彼女。


 〝黄夫人〟か――?


(っ……これが正解なら、劉備軍側に異様な強化のある、この戦で……()()()()()()()()()()()の存在は、危険すぎる! 相手の立ち回りに対応できなかったら、とんでもない痛手を……夏侯惇将軍――!)


 今から訪れるだろう、()()()()()を想像し――走り慣れしていない女軍師の足で、私は懸命に駆けた。


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