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ロード・オブ・三国志X ~ 乙女ゲーム転生! 推し軍師・郭嘉の神技能を継承し、曹操を主君として、乙女軍師として征く三国覇道 ~  作者: 初美陽一
第三幕 荊州の無血開城から、長坂の戦いへ――三国英傑と初の戦! 『VS劉備軍!』

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第26話 狼顧の鬼謀、司馬懿の策略――!

 丘の上から十万を超える民の大移動を見下ろし、私は馬車に乗り、曹操そうそう様は騎馬した状態で何やら緊張気味だ。


 そしてこの場に呼ばれた、スラッとした体格で、整った顔立ちの()()風の青年が――口の端に笑みを浮かべ、流暢に発声する。


「ご主君、軍師・荀攸じゅんゆう殿に甄嘉しんか殿、お待たせ致しました。

司馬しば 仲達ちゅうたつ〟――命に従い、参上しました」


「……う、うむ! 足労だったな、司馬懿しばい


「いえいえ、勿体なき御言葉です、ご主君……くっくっく……」


「……う、う~む……」


 何やら怪しそうに笑う青年――司馬懿殿に、たじたじという様子の曹操様。あまり大っぴらには見せない気弱な裏の顔が、ちょっぴり出ている気がする。


 一方の司馬懿殿は、瞳が見えないほど糸のように細められた目で、私のほうを見つつ尋ねてきた。


「それで……自分を呼んだのは甄嘉殿とお聞きしましたが、何用でしょう? 自分を推挙してくださったという恩に報いるべく、出来る限りは致しますよ?」


「司馬懿殿、感謝いたします。お願いしたいことというのは、他でもありません……今現在、劉備に付き従って逃亡している民。彼らは出来る限り傷つけずに捕えられれば、と考えております。ですがこの常識外れの人数、軍師が総出で当たらねば、間に合いません。ゆえに司馬懿殿にも、ご助力いただきたく存じます」


「! ほほう……そのような大切な御役目、自分に任せてもよろしいので? ……くっくっく……」


「っ――し、甄嘉、甄嘉……ちょ、ちょっと!」


 話に割り込み、馬車に寄りかかって呼ばわってくる主君・曹操様に、仕方なく《《ヒショヒショ話》》で対応する。


「そ、その、こんなことを言っては、司馬懿にも申し訳ないのだが……大丈夫、だろうか? いやまあ、優秀なのは分かるのだが、何というか、その~、え~と……」


「なんか裏切ってきそうで、めっちゃ怪しい、ですか?」


「そそそこまでは言っていないぞ!? ……でも、まあその……んん……」


 否定しきれていない辺り、曹操様にも何やら引っかかるものがあるらしい。

 けれど私は、まあまあ、と手ぶりして宥めつつ、〝説得〟(※成功率100%)することにした。


「仰りたいことは何となく分かりますが、今回の戦は出来るだけ民を傷つけないのが肝要……武力ではなく、軍師の策略が最も重要になります。司馬懿殿も、荀攸殿や荀彧殿に匹敵する知力の持ち主。頼りになりますので」


「う。……そ、そうか、甄嘉がそう言うなら、まあ……」


 やはり渋々、という様子で曹操様が納得しかけていると、司馬懿殿は何やら呟き始めた。


「くっくっく……この陰謀、おっと間違えました、策謀を揮える機会に恵まれるとは……全く、嬉しい話ですねぇ……早く始めたいものです、血の沸き立つような戦を……くっくっく……!」


「……し、甄嘉、ええと……本当に大丈夫だろうか……?」


「ご心配なく、大丈夫ですよ。さあ、とにかく始めましょう、あまりゆっくりしていては、劉備が逃げてしまいますから」


 曹操様の不安は尽きないようだけど、キリがないし、早く始めちゃおう。荀攸殿は荀攸殿で少し不安そうにしつつ、彼の持ち場に戻っていったことだし。


 夏侯惇殿を初めとし、曹操軍の名立たる将軍には、あくまで民を牽制するにとどめ、民の士気を下げる役目をしてもらう。夏侯惇殿の不満そうな表情が目に浮かぶようだけど、後で私から謝るとして、ここは我慢してもらうしかない。


 さて、そうこうしている内に、伝令が前線に届き――ギリギリで民を攻撃しない絶妙な距離感で、牽制が始まる。十万もの民からは恐れによる悲鳴だけでなく、怒りで罵倒してくる声まであった。う~ん、逞しい……。


「くく……なるほど、上から見ていると〝落としどころ〟が見えてきますねぇ……ではご主君、甄嘉殿、自分も向かいます。まあ見ていてください……くくく!」


「あ、はい……い、いや、うむ。頼んだ、司馬懿……」


 曹操様の気はまだ晴れないようだけど、気にしていない様子の司馬懿殿は、そのまま馬を走らせ――特に恐慌状態の民を目掛けて駆けていく。


 この的確に見極める眼、司馬懿殿も技能〝鬼謀〟の持ち主で、計略の成功率が見えているのだろう(私の見え方と同じかまでは分からないけど)。


 糸のように細い目のまま、ニヤリと不穏な笑みを深め、彼は恐慌状態で士気がどん底に落ちている民へ向けて、策謀を放った。


「武器を捨てよ、民たちよ! 無駄な抵抗をやめれば、今なら命は助けてやるぞ!」(計略:降伏勧告・成功率90%)


『ひっ、ひいいっ……わ、わかりました! 命だけは、命だけはお助けを!』


「おまえたち、まだ知らないのか!? 劉備はおまえ達を時間稼ぎの囮にして、既に逃げ去っている! おまえ達を守る者は誰もいないのだ!」(計略:虚報・成功率70%)


『そ、そんな……おらたちは見捨てられちまったのか……』

『う、ウソだ、そんな……劉備さまはそんな御方じゃねぇ~!』


「劉備はおまえ達を利用して、己一人が助かる腹積もりだ……そんな奸賊に付いて何になる、おまえ達の怒りを向けるべき相手は誰だ!」(計略:扇動・成功率50%)


『りゅ、劉備さまが、そんな……いや、劉備……許せねえ! オラァ!』

『ウワッ、何をする! 敵の巧言こうげんに惑わされるな!』


「く、くくくっ……こうも容易く操られるとは、くくっ……はははっ……!」


 何とも愉快そうに悪意いぢわるな策をもって弄ぶ、司馬懿殿――う~ん、悪役ムーブだなぁ。私の横で震えている曹操様が、警戒する気持ちも分かるっていうか……。



 ――――――★女軍師・甄嘉のやわらか人物評★――――――


司馬懿しばい』攻略可能キャラ

 字は仲達ちゅうたつ。後に曹操が興した〝魏国ぎこく〟を――最終的には()()()()()を起こして滅ぼす原因となる人物。

 非常に優秀なものの、ポーカーフェイスで本心をあまり見せないことから疑われやすく、曹操も警戒していたと言われるほどだった。


〝ロード・オブ・三国志〟シリーズでは、俗に言う〝糸目キャラ〟のミステリアス系イケメン。怪しい言動がやたらと強調され、自勢力内でも怪訝な目を向けられやすい。


 あと余談だけど〝狼顧(ろうこ)(そう)〟という、要するに体は前を向いたまま()()()()()()()()()()という尖った体質の持ち主だった。

 それを見た曹操様が、結構明確に「キモッ!」(※要約)と驚いたのは三国志では割と有名な御話。だから警戒していたのかなぁ……。


 ――――――――――――――――――――――――――――



 ……まあ実際、言動はかなり怪しいし、一人でも意味深に含み笑いしていることもあるし、〝Ⅹ〟の気弱な曹操様が疑う……というか怖がるのも仕方ない。


 実際に今も、なかなか悪役じみた雰囲気で、民を縦横に操って高笑いしているのが、丘の上からでもハッキリ聞こえてくるし……。


「く、くくっ、何とも愉快……いや、愉悦……! これが策謀を操るたのしさか……くっ、ははっ……ははははっ!!」


「なあ甄嘉、本当に大丈夫だろうか、甄嘉!? なんかもう司馬懿の様子が、アレ、あの……かなりヤバくはなかろうか!?」


「あ~、大丈夫です、大丈夫です~。安心してください~」


「本当に!? なんかもう大分だいぶ、怖い感じになってしまっているのだが!? というかあの司馬懿を見て、良くそんなに落ち着けるな!?」


 曹操様が狼狽しつつ指さした先で、司馬懿殿のテンションは最高潮に達しようとしていた。


「くっ、ははっ、ははは――あーっはっはっは!! 我が智謀、天下をてのひらに転がすことさえ可能! ふははははははは!!!」


「甄嘉!? ねえ甄嘉!? 本当にアレ大丈夫なのかな甄嘉――!?」


「ダイジョブダイジョブ、ダイジョブデスヨー」


 カッ、と糸目を開眼させ、魔王の如くに大笑いする司馬懿殿を見て、曹操様は怯えまくるけど……まあ私はゲームを通しても司馬懿殿を知っているし。

 あ、さっきの人物評では思い出し忘れていたから、ちょっぴり補足しちゃおう★



 ――――――★女軍師・甄嘉のちょっぴり補足★――――――


『司馬懿についての補足』

 後に魏の滅亡の原因となり、色々と素行は怪しい彼だが、実のところ――曹操・曹丕の存命中に、彼が裏切ったことは史実においても()()()()()()()

 その優秀さから曹操に嫌疑をかけられたという話はあるが、その上で重用され、曹丕の代には重臣の位に就いていた。

 最終的に魏へクーデターを起こしたのも、魏の弱体化や政権の変遷へんせんなど、立場的に仕方なかったと司馬懿を擁護する説も多い。


〝ロード・オブ・三国志〟シリーズでも、言動が何か怪しくて意味深というだけで、実のところ本人は普通に過ごしているつもりだった、と明かされたりする(ナンバリングやイベント次第では、絶好調で裏切ってくることもあるけど)。


 何というか演義などの印象もあって〝悪役イメージ〟が付いちゃって損をしている印象。その辺りちょっぴり不憫なので、イメージ回復してあげてネ!


 ……まあでも胡散臭いことは胡散臭いし、陰謀も得意なので、やっぱりある程度はしょうがないかも。南無三ナムサン


 ――――――――――――――――――――――――――――



「――ふう。すみません、()()興奮してお見苦しい様を見せてしまいましたね、ご主君、甄嘉殿。お恥ずかしい限りです」


「ひっ! あ、いや……み、見事な策士ぶりだったぞ、うん……」


「あ、お帰りなさい司馬懿殿、お疲れ様でした~」


 いつもの雰囲気、いつもの糸目に戻って、司馬懿殿は騎馬して戻ってきたそのままの足で、報告を交えつつ次へ向かおうとする。


「さて、方針通りに民は計略によって篭絡するか、抵抗を防ぐために退散させ、生き残らせることに終始しました。とはいえ数が数だけに、各所で戦闘は起こっております。そちらにも向かい、民をくださせていこうかと」


「迅速なる機転、感謝します、司馬懿殿。……あのところで〝それは秘密です♪〟って言ってもらっていいです?」


「はい?」


「あっいえ、何でもないです何でもないです。ではご活躍、期待しております!」


「? ?? ええ、では……失礼をつかまつります、ハッ!」


 首を傾げながらも、馬を煽って駆け去っていく司馬懿殿。

 そんな彼の背を見送り……曹操様は震えていた。


「……う、うう……なにやら怖い……うう」


 ちょっぴり気弱な一面にトラウマを残しているようで、私は「ダイジョブですよー」と軽い調子でお慰めするのだった。


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