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ロード・オブ・三国志X ~ 乙女ゲーム転生! 推し軍師・郭嘉の神技能を継承し、曹操を主君として、乙女軍師として征く三国覇道 ~  作者: 初美陽一
第二幕 もう一人の転生者!? ブッチぎりの、やべー女(ヤツ)がやってきた!!

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第17話 もう一人の転生者――蔡琰の恐るべき目的とは――!?

 さて、馬車を走らせてもらい、今は私こと甄嘉しんかの私兵である二千に守られ、数日かけてえん城に辿り着いた。……お尻痛い(素直な感想)。


 とにかく城門をくぐり、既に城内にまで踏み込んでいる訳だけど、ここまでは意外なほどすんなりと通り抜けられている。もしかしたら、何らかの妨害、あるいは奇襲を受ける可能性も考えていたけれど、今のところは杞憂だ。


 ……そう、今のところは、である。正直、この城の様子を見ていて、私の中の不安感や嫌疑は、どんどん膨らむばかりだ。


 何しろ城中の雰囲気は、明らかに異様――曹操幕下の臣下たちが、揃いも揃って様子がおかしい。いきなり戦いにはならないだろう、と私兵を城外に待機させてきたのは、失敗だったかと後悔するほどだ。


『ブツブツ……ブツブツ……』

『嗚呼……蔡琰さいえん殿、今頃、何をしておいでか……』

『おのれ……あやつらめ、おのれ……!』


「……っ」


 何やら夢想の中にいるような者、目が血走っている者、不満を呟く者――今にも爆発寸前で、荀彧じゅんいく殿が言っていた〝反乱〟の恐れを明確に感じる。


 そして、これほど異様な雰囲気なのに――〝神算〟で確認する限り、伏兵はもちろん、落とし穴などの罠も一切仕掛けられていない。これが逆に、恐らく〝転生者〟と思しき蔡琰の企みを不明瞭にさせ、私の不安を煽る。


 ……そう、主君たる曹操でもないのに、周囲へこれほどの影響を与えられるのは、プレイヤーとして選んだ〝女性キャラ〟……つまりは、えっとその、ヒロインのみ、でして(自分のことでもあるから、ヒロインとか言うの恥ずかしいなコレ……)


 ま、まあとにかく! だからこそ私は、〝蔡琰も転生者だろう〟と当たりを付けた。そして問題は、〝目的は何なのか?〟だ。


 城内の臣下たちの異様な雰囲気、罠の仕掛けられていない状態、それらを鑑みて――私自身のゲーム知識に照らし合わせて、〝蔡琰の()()()()()()()〟を推察する。

 恐らく……いや、この状況なら……これしかないだろう。



 ――〝女君主〟として、独立すること――!



 この宛城にいる人物達の、今にも暴発してしまいそうな異様な雰囲気は、恐らく蔡琰が何かを吹き込んでいるのだろう。当人の名前を呼んでいる者さえいた。

 独立後は拠点となる城を、罠だらけにしないのは、単純に……〝自分の仕掛けた罠に味方が引っかかる〟なんて事態を防ぐため。そりゃ生活しにくいもんね……。


 でも、だとすれば反乱まで、もはや秒読み段階かもしれない。急いでここへ来たのは、正解だった。


「……甄嘉しんか様。蔡琰様のお部屋は、こちらでございます」


「……はい。ご案内、ありがとうございました」


「いえ、勿体ない御言葉です。……それでは、ごゆるりと……」


 侍女の人に案内してもらい、今回の事件の張本人である、蔡琰の部屋の前に到着する。まだ自勢力のおかげか、ここまで辿り着くのは簡単だった。


 ……ただ、やはり城内の雰囲気は、異様だ。どこもかしこも薄暗く、いっそ禍々しい雰囲気さえ感じてしまう。

 いや、ここが宛城というのも、曹操勢力の人間としては、不安の募る理由かもしれない。



 ――――――★女軍師・甄嘉のやわらか歴史イベント解説★――――――


『曹操と宛城の因縁』

 曹操はかつて宛城において、一度はくだった張繍ちょうしゅう賈詡かくの謀反の計を受け、死の瀬戸際に立たされた。

 結果的には生き延びたものの、この件で豪勇の臣下〝典韋てんい〟を失ってしまうなど手痛い敗北を喫する。


 ……ちなみに鄒氏すうしっていう超絶美女の未亡人に曹操が誘惑される、なんて出来事もあったんだけど……乙女ゲームである〝ロード・オブ・三国志〟シリーズではさすがにヤバイと思ったのか、誘惑を退けるイベントに変更されているわ。

 プレイヤーが早い年表で始めていたら、ヒロインのおかげで誘惑を跳ね除け、宛城を脱出するなんて熱いイベントもアリ!


 まあシリーズ初期の方ではそんな配慮が一切なく、曹操が色に溺れて、まあまあ炎上してたこともありますけど……★


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――



 ……という勢力的にも乙女的にも苦い歴史がある分、ここを反逆と独立の地に選んだのだとしたら、なかなかに皮肉も利いていると思う訳だ。


 行動の怪しさといい、まずプレイヤーだろう蔡琰は、かなり狡猾のはず。だけど、もし彼女にとって誤算があるとすれば、それは私の存在だ。

 恐らくまだ、私という〝転生者〟の存在は、彼女に知られていないのだろう。私が〝転生者〟なのだと知られていれば、迂闊にも反乱を知られるようなヘマはしていないはずだから。


 だからこそ、彼女の企みを妨害するなら、今が最大の好機チャンス――彼女の部屋の前で、ごくり、私は唾を呑み込み、足を踏み入れた。


「……失礼します、蔡琰殿。私は貴女と同じく曹操様の臣下である……甄嘉、と申します」


『…………』


 返事は、ない。代わりに、天蓋付きの華美な寝台を覆い隠す薄絹の向こうから、身動みじろぎする音がしただけだ。


 起きていて、話は聞いている。周囲に伏兵などの小細工はない。やはり、私が()()だとは、知らないのだろう。


 だからこそ、まずは蔡琰の話を聞くために、私の方から胸襟きょうきんを開くべきだ。



「蔡琰殿、驚かれるかもしれませんが、どうかお聞きください。私は、貴女と同じ境遇の者。お分かりになりますか。私、甄嘉も――〝転生者〟です――」


『…………!!』



 薄絹の向こうで、強く身動ぎする、大きな反応が見て取れた。

 暫し返事を待っていると、薄絹越しに映る、しなやかなシルエットが微かに揺れた――


『……ふ、ふふっ……ふ、ふ、ふ……』


「……! 蔡琰殿、何がおかしいのです……やはり、何か良からぬ企みを? っ、話を聞いてください、反乱なんてお止めに――!」


『ふ、ふふふ、ふふっ―――ふっ、ふふふふふ!!』


 私の話など聞かず、含み笑いが抑えきれぬように、異様な雰囲気を増していく。

 恐れていたことだけど、こういう時の定番というべきか、別の〝転生者〟である彼女は……つまり、そう。



〝悪女〟――そういうことなのか――!



 やはり一人で来たのは失敗だったか、護衛くらいはつけておけば――だが、もはや正体を隠す気も無いらしい。


 含み笑いを漏らし続ける、蔡琰は――〝転生者〟は、薄絹を勢いよく開き、凄まじい勢いで迫ってきた――!


「っ、仕方ない――かかってきなさい、蔡琰! 貴女の野望、三国志モノを読みまくって磨いた私の〝机上のゆとり武力〟(※ほぼゼロです)で叩き潰して――!」


「ふ、ふ――ふええええええええんっ!! ホントですか、ホントにわたしと同じ、〝転生者〟さんなんですかあぁぁぁぁ!?」


「…………んっ?」


「う、うう、ぶええんっ……わたし、わたし、いきなりこんな世界に転生して、ワケわかんなぐっでえぇぇぇ……ずっど心細がっだんでず……」


「んん~……ん、んんん~~~?」



 さて、()()()()()()()()

 私の杞憂だとか、嫌疑だとか、そういうの諸々全部、()()()の気配がムンムンとしてきた――そんな中。



「う、うう……う……うおぉ~~~~~~んん~~~~~~っ……♪」



 蔡琰は、私に縋りついて涙しつつ――妙に堂に入ったロングトーンの美声をご披露してくれるのだった。……でも何かこの声、聴いたことあるんだよなぁ……。


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