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人ならざる力がバレて世界中に狙われた少年、何故か人類の敵と認定されて大切な人を奪われたので復讐を決意します  作者: 寒い


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9/21

山暮らし

 山の中での生活が始まって数日が経過した。

 まず、パスワードを覚えていたおかげで鬼塚から盗ったスマホはしっかり使えた。

 しかし充電が残り少なく、充電器は持っていない。そもそも山ではネット? が上手く繋がらないけど。

 これはどうにかしなければならない。


 食べ物に関してはチンピラから盗ったお金で何とか食い繋いでいる。

 街へ降りて食べ物を買い、すぐに山へと戻る。

 あいつらの仲間が探しているかもしれないから、出来る限り街へは降りないようにしている。

 今回はたまたま逃げられたけど、次は分からない。


 今はまだ秋だからマシだけど、これから一気に寒くなるだろう。

 半袖半パンしかない今、山の中で確実に冬を越せない。

 でも防寒具を買おうにも金がない。

 バイトも出来ない。

 正直、出来る事は限られていた。


「やるしかないか・・・覚悟決めないとな」


 そう言って街へ繰り出す。

 答えは簡単で、金が無くて稼ぐ事も出来ないなら盗むしか無い。

 リスクは高いが1番手取り早い。

 どうせ山で暮らしてるんだ、逃げ切れさせすれば見つかる事はない、はずだ。


「ここにするか」


 目標の店の前へと到着する。

 今からする事は犯罪だ。

 しかし、生きるためにはやらないといけない。

 綺麗事は自分を救ってはくれない。

 段々心臓の鼓動が早くなっていく、足も震える。

 本当に、出来るのだろうか。


「やるしかない・・・・・・」


 小声でそう呟き、自分に言い聞かせる。

 覚悟を決めて店の中へ入ろうとした

 ーーー瞬間、肩を掴まれる。


「ねぇねぇ君!」


 ビクッと体が飛び跳ねる!

 見つかってしまった!?

 振り返ると、そこにいたのは制服姿の明るい茶髪をした女の子だった。

 とはいえ、多分高校生だから年上だと思うけど。


「?」

「君もしかしてさ、ヤクザから逃げ切った子?」

「えっ? な、なんでそれをっ」


 肯定しかけて、口を手で塞ぐ。

 何で!? どこでバレた!? なんでこの人はそれを知って・・・・・・


「えっ? 知らないの? ほらこれ、今君めっちゃ有名だよ! ヤクザから逃げた最強の少年! ってね!」


 そう言って高校生は自分のスマホを見せてくる。

 そこに映っていたのは鬼塚達の車から出てきて走って逃げる自分の姿だった。


「え、な、なんでこれ、誰が撮って・・・・・・」

「これ、家の防犯カメラらしいよ。撮ってたのをアップして、一気に拡散されたの! 君凄いね! ヤクザから逃げきれるなんて! ねぇねぇこの車の扉が外れたのってどうやってやったの!? 蹴ったの!? 殴ったの!?」


 大きな声でしつこく迫る高校生に、周りの人間も徐々にこちらに興味を向け始める。


「え、あの子って・・・・・・」

「SNSでバズってた子だよな?」

「えーすげーマジでいたんだ」


 まずい。

 このまま騒ぎになるのだけは勘弁してくれ。

 すぐにここから離れないと。


「私インフルエンサーなんだけど、君の写真撮ってアップしてもいい? お願い!? 一枚だけでいいから!」


 訳の分からないことを言う高校生を無視し、歩みだす。

 周りの人達は関心を向けてくるが絡んでは来ない。


「ねぇアップしていいよね!? しちゃうよ?」

「しつこいですよ」

「いいじゃん一枚くらい! 私フォロワー二千人もいるんだよ? だからいいでしょ? はいピースして!」

「いや、フォロワーってな」

「うわっ! 見て見てすっごい! すぐにいいねついた! ねね、もう一枚だけ! お願い!」

「いい加減にっ」


 その場から離れてもずっとついてくる高校生を巻くために力を使おうと思ったが、咄嗟に止めてしまった。

 このまま力を使えば、またこの街のどこかにあるカメラに映って、それを拡散? されて、今度は麻里亜だけじゃなく多くの人に嫌われるかもしれない。

 そうなれば、生きていくのは困難だ。


「・・・・・・」

「えっちょっと待ってよ! 置いてかないで!」


 力を使うのを辞めて、走ってインフルエンサーとかいう高校生を巻くことにした。

 幸い走るのが遅いのか、一度も追い付かれることなく巻けた。

 最初から走って逃げればよかった。

 山へ戻って、スマホで動画について調べると、2日前くらいに投稿された様で、今では海外からのコメントも付くほど多くの見ているらしい。

 多くの人間が自分の居場所を探っているような言葉も見かけられた。

 暫く長時間街へ降りるのは辞めた方が良いかもしれない。



 冬が来た。

 まだ防寒具がない。

 半袖半パンに少し大きめの薄い毛布、スーパーで貰ってきたダンボールで周りを囲い今は凌いでいるが、正直言って耐えられない。

 まだ冬が来て最初の方だが、もう暫く経てばこのままでは簡単に凍え死ぬ。

 どうにか暖を取りたいが、金も底が見えてきた。

 残り数百円しかない。


 どうすれば暖を取れるだろうか。

 石橋の家にいた時を思い出せ、あの時はどうしていただろうか。

 家で料理をしていた時は、夏は暑かったし、冬は暖かかった。

 そう、火だ。

 火があれば、暖まれる。


 とはいえマッチなどの着火剤は無い。

 スマホで調べて自力で火起こしに挑戦するが、いつまで経っても火がつく事は無かった。


「ふぅふぅ、ぁぁ、こんなところで・・・」


 体を震わせ、手を擦りながら目を瞑って横になる。

 料理をしていた頃を思い出し、火をイメージする。

 せめて想像の中だけは暖かくいたかった。

 その方が気持ちが楽だったから。

 その状態で暫くいると、突然目の前から


 パチパチっと何かが燃える音が聞こえた。


 パッと目を開くと、火起こしをしようと思った、いつのまにか木の枝に火がつき、燃え盛っていた。

 その炎は、今まで感じた事が無いくらい暖かさを感じた。

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