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人ならざる力がバレて世界中に狙われた少年、人類の敵と認定されて大切な人を奪われたので復讐を決意します  作者: 寒い


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〈44話〉共に歩む

「あれは、どこの国のだ?」


 島に帰る途中で艦隊を見つけた。

 駆逐艦に巡洋艦、空母もいる。海の中には潜水艦もいるかもしれない。

 大規模だ。旗がついているが、どこの国か分からない。

 大国以外も参戦している。敵は多い。

 その艦隊は俺から見て右側数キロ先にいる。

 しかし進路は俺と同じだ。


「ここで潰しておくか?」


 そんな考えが思い浮かぶが、こちらが勝手に宣言しておきながら先に攻撃してはダメだろと吐き捨てる。


「とりあえず今は早く帰ろう」


 冷や汗が出る。

 自分で焦っているのが感じる。

 もしベルが、あの子達が殺されたら・・・・・・いや、そんなことは考えるな。

 最悪を想定するのはいいが、最良を手に取る動きをしろ。

 最低を考慮して奥手になるな。

 愚かな考えはするな。


「急げ・・・・・・急げ」


 艦隊を置き去りにするほどの速度海を突き進む。

 海面ギリギリを飛ぶ俺の後には風圧で海面が左右に分かれた。


 数時間ほど飛んで、幾つもの国の艦隊を見つけた。

 本来なら太平洋を横断しているはずのない国の旗もあった。

 そのどれもが、進行方向は同じだった。


「見えた!」


 島が見えた。

 まだ周りにはどこの国の艦隊もいない。

 島が攻撃された様子もない。

 周りは既に真っ暗だ。

 日を跨いだであろう時間だ。

 島には家のリビングの部分にだけ明かりだけがついている。


「ベル!」


 家に到着し、急いで扉を開けて中に入る。

 賑やかさは無いが、静かで落ち着いていて、安心する家だ。

 子供達は寝ているのか。


「憐様? 数日かかるのでは無かったのですか?」


 とうに0時を過ぎているというのにベルがリビングからひょこっと顔を出し、疑問の顔を浮かべる。


「すまない、急用ができた」

「急用ですか? 家に?」

「ああ、世界中の国がこの島を攻撃するために手を組んだみたいだ。ここに帰ってくる途中に沢山の国の艦隊を幾つもみた。すぐにここを離れるぞ」


 俺は久世さんから教えられたこととここに来るまでに見たものを口早にベルの伝え、すぐに逃げる準備始めようとする。

 するとベルは理解が追いつかないのか声を上げる。


「ちょ、ちょっと待ってください! 世界中の国ですか? どうしてそんな急に」

「説明は後にする、とりあえず島を移すぞ。ここは危険」

「島を移すって、どこにですか?」

「それは、とりあえずここから遠い何処かだ」

「世界中の国が敵に回った今、世界に安全な場所はあるのでしょうか? 大陸から遠く離れたこの地まで追ってくる者達ですよ? 落ち着てください、憐様」


 ベルにもっともなことを言われ、言葉に詰まる。


「ぁあ、すまなかった。焦りすぎていたな」

「はい」


 大丈夫だ、落ち着け。まだ時間はあるはずだ。

 状況を整理すれば、なにかいい案を出せるはずだ。


「憐様、私達があなたの足枷になっていることは承知しています。あなた1人なら、ここまで焦ることも無かったでしょう」

「そんなことはッ! ・・・・・・ない。

 お前らが足枷だと思ったことなんて、1度もない」

「やはり憐様は優しいですね・・・・・・私は貴方に拾われた時から、必ず貴方の進む道についていくと、自分に誓いました」


 ゆっくりと静かに、けれど確かな意思を持ってベルは話し出す。


「死にたくなるような人生の中で、それでも私は生き続けた。そんな中、貴方を初めて見た時、感動したんです。

 こんなにも美しい、大きくて力強い自由な翼を持った人がいるのだと。

 この人はどんな人生を歩んできて、これから何を成し遂げるんだろうと。

 気になってしまった。

 だから私はあの時、手を伸ばしたんです。共に、貴方の傍を共に歩み、出来ることなら貴方の力になりなたかったから」


 ベルは力強く、そう言った。

 これはベルの思いで、本心からの気持ち。


 生き地獄のような苦しい生活をしてきた彼女の、最後の希望。

 生きる意味だ。


「憐様、戦いましょう。私は例え地獄であろうと、貴方と共に歩めるのならどこまでも着いていきます」


 ベルはまっすぐ俺の目を見て、そう言った。

 彼女の目の奥には炎が宿っていた。

 人生をかける覚悟を決めた者の目だ。


「・・・・・・ああ、そうだな。ありがとう、ベル。」


 元より世界を滅ぼすつもりだったんだ。

 それが再開するだけだ。


 あの東京の時とは何もかもが違う。

 今度は俺1人では無く、ベルと一緒に。

 子供達を守りながら、やってやろう。


「手伝ってくれるか?」


 ベルに手を差し出す。

 それを見てベルは涙ぐみながら手を差し出す。


「はい!」


 瞬間、ドオオオオオンッ!!!っと家の外で轟音が一発鳴り響く。


「「!?」」


 何事かとベルと共に窓の外を覗く。

 家の窓から見える光景は数百mの緑とそこから先は海。

 だったはずなのに、もう目視で確認できる距離まで艦隊が来ていた。


 1隻の戦艦の主砲島よりもさらに高い上空を向いており、煙が出ている。


「もう来たか」

「ベル様、なにが、あれ、憐様? もう帰ってきていたんですか?」


 目を擦りながら眠たそうに奥の部屋から出てきたのは年長の子だ。

 思っていたよりも早い帰還の俺に驚いているようだ。


「ベル、家とこの子達を任せてもいいか。あいつらの相手は俺がする」

「はい。お任せ下さい」


 今までのベルならここで一緒に戦いたいと言っていただろう。

 けれど、今はもうそんなことを言わない。

 共に戦うことを誓ったから。

 彼女に必要だったのは安全な地域で見守らせることじゃなく、一緒に戦ってくれという言葉だった。


「憐様・・・・・・死なないでください」


 リビングに起きて来た年長の子が不安そうな表情を浮かべている。

 俺は安心させるためにニコッと笑い、頭に手を乗せて優しく撫でてあげる。


「すぐに帰ってくるよ。必ず。だから俺が帰るまでの他の子達の面倒を頼んでもいいか?」

「は、はい!」


 人の頭を撫でるのは数年ぶりだな。

 ベルが今よりも小さい頃に数回撫でたことがあったけど、最近は彼女も大きくなったし必要ないだろう。


「じゃあ、行ってくる」

「お気をつけて」

「ああ」


 家を出て、力を使い空を飛ぶ。

 ゆっくりと高度を上げながら島の周辺を観察する。


 海を埋め尽くす程の艦隊。

 広大な海の上に浮かぶ艦隊のさらに上、靡くは日の丸、靡くは星条旗、靡くは五星紅旗、海軍を持つ全ての国が集結したのではないかと錯覚するほどの量だ。


「悪魔共が・・・・・・俺が相手をしてやる」



 世界の命運をかけた戦いは、1つの小さな島を囲って始まろうとしていた。

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