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人ならざる力がバレて世界中に狙われた少年、人類の敵と認定されて大切な人を奪われたので復讐を決意します  作者: 寒い


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〈40話〉世界の転換点

「・・・・・・守れなくてすまなかった」


 1部だけ土が盛り上がっている場所に、石を積み立て手前の土に花を刺す。


 手を合わせ、目を瞑りお辞儀をする。


「仇は必ず・・・・・・さて」


 片付けは終わった。

 見つかったときには完全に死んでおり、助けられなかった。

 俺があの子の体を燃やし、土に埋め、部屋を片付けた。


 ベルに見せなくてよかった。

 それが正しい選択だ。

 心優しいあの子は、きっと立ち直れなくなる。

 あの子にまで復讐という泥沼に突っ込んで欲しくなかった。


 だから俺がやる。

 それでいい。

 そして仇は必ずとる。


 俺の手で。


「憐様! 子供達が目を覚ましました! ご飯にしましょう!」


 ベルは家の扉を開けて俺を呼び戻す。

 少し元気が戻ったようにも見えるが、多分子供達に心配かけないように振舞っているだけだ。

 あの子にも無理をさせてしまっている。


「ああ! すぐ行く!」


 だからと言って俺に何か出来るわけでも無かった。

 俺は無力だ。




「ご馳走様」


 食事も終わり、早速仕事に取り掛かる。

 今回の一件は完全俺の落ち度だ。

 こうなる可能性を考えておきながら、しっかりと対策をしていなかった。


「ベル、少し外に行く。お前には家を任せる。出来るか?」

「ぁ、はい。お任せ下さい!」


 一瞬不安そうな顔を見せるが、ベルはニコッと笑い了承する。


「それと、俺が帰ってくるまで家から出るな。家の周辺に罠みたいなもん仕掛けるから。子供達にも伝えておいてくれ」

「分かりました」


 罠と言っても落とし穴とかではない。

 そんなものではまともに守れないだろう。

 だから家の全方位に重力が強くなるようにしておいた。

 銃で撃たれても、侵入しようとしてきた者も、全てを地に伏させることが出来るくらい強くしておいた。


 あとは動けなくなったところをベルがやってくれるだろう。

 やれなくてもまぁ問題ないと思うが。


「よし、これでいいか」


 次はゴミ掃除だ。

 紙に残った微量な魔素を辿り、居場所を突き止める。


「いた」


 案外簡単に居場所突き止められた。

 これで場所は分かった。

 あとは殺すだけだ。


「・・・・・・」


 空を飛び、一直線にゴミのある場所へ向かう。

 その途中で、考えこんでしまった。


 これからどうするべきかを。

 今回のことがあって、出来る限り注意し、これからはやれることはやるつもりだ。

 ベルには窮屈な思いをさせるかもしれないが、俺が居ない間は常に彼女に子供達を守ってもらう。

 とかでもいいと思っていた。


 が、それで本当に大丈夫か?

 ベルは力は使えるが、俺には遠く及ばず、まだ殺しの経験がない。

 しかし相手は基本的に殺しに慣れているだろうし、完全武装だ。


 幾ら力が使えて俺の罠もあるとはいえ、心配だ。

 俺の知らない兵器もあるかもしれない。

 それは俺の罠を貫通するかもしれない。


 そうなればまた同じ悲劇だ。

 いや、次はもっと酷いかもしれない。

 また1人になるかもしれない。


「それは・・・・・・嫌だな」


 なんやかんや言って、俺も大切なんだ。

 あの子供達が、そしてベルが。

 俺が復讐をする度に、彼らに危険が迫る。


 俺はもう1人では無いのだ。

 守るべき存在がいる。

 俺が守らなければならない。


 だからもう、復讐はこれっきりにしよう。

 あの子の仇をとって、それで終わりだ。

 その後はどこか、遠い、人のいないところに移り住もう。

 ベルや子供達を連れて。


「見つけた」


 目的がいる建物を見つける。

 高層のビルのほぼ最上階のいるみたいなだな。


 目標の建物の前でゆっくりと降下していき、地面に降りる。

 周りの人間が俺を見て騒いでいるが、どうでもいい。無視だ。


「たまには正面から行ってやる」


 歩き出し、エントランスに入っていくと受付の奴に止められる。

 警備員も後ろから近づいてくる。


「1番偉いやつに会わせろ。話がある」

「面談予定はありますか? ないなら入場を許可は」

「会わせろ。お前に拒否権はない」

「むっ、警備員! この者を外に」

「ぐああッ!!」

「ッ!?」


 警備兵に邪魔される前に強制的に地面に伏せさせる。

 邪魔だ。

 地面でも眺めとけ。


「まだやるか?」

「ひッ!? も、もしかして・・・・・・」

「返事は?」

「す、すぐに案内致します!!」


 有名になったのがこんなところで役に立つとはな。

 良いイメージでは無いのが残念だ。

 まぁ悪魔に好かれても嫌だが。


 受付の女に着いていき、エレベーターに乗る。

 ゆっくりと上昇していき、最上階で止まり目の前の部屋で1度立ち止まる。

 紙に残った魔素と同じ魔素が漂う部屋に。


 受付の女が前に行き、ガチャッとゆっくりと扉を開けていく。


 扉の先のいたのは、2人の人物。

 1人は部屋の真ん中、社長机のような場所に座る男と、その手前の客席のようなソファに足を組み雑に座る男。


「ああ? おい、連絡もなしに勝手に入れるなっていってるだろ」

「まぁまぁ、落ち着いてください。君、要件はなんだね?」

「しゃ、社長に、お会いしたいと言っているひ、人がッ、わ、私はこれで!」

「あ、おいてめえクソ女! どこ行くんだよ!?」

「まぁまぁ落ち着いてください。後であれには罰を与えておきますので」

「はっ、そうかよ・・・・・・あ、なら俺にもちょっと貸してくれねえか? 最近溜まってんだよ」

「いいでしょう。ただ、程々にね」

「わぁってらあ」


「クソみたいな会話だな」


 客に目もくれず股間が脳についているかのような話を聞かせれるとは。

 俺がムカついているときに、まだゴミみたいな話をするか。


「ああ、すまないね。それで、君は・・・・・・もしかして、ッ!?」

「ああ? 何言って・・・・・・ん、だよ」


 2人は俺の顔を見た途端に青ざめる。

 俺の目的はソファに座っている方の男だ。

 もう1人は・・・・・・こっちが社長っぽいな。


「おっ!? お、おおお、お前、神崎憐か!?」

「ご名答、お前を殺しに来た」

「なッ、なんでだよ!? 俺を殺す理由がどこにある! なんもしてねえだろーーが!!」

「お前、俺の子達に手を出したな?」


 男の方に1歩、また1歩と近づいていく。

 あの子の仇であるこの男だけは、絶対に許さない。

 地獄を味わわせる。

 絶望の底に落としてやる。



「は・・・・・・ん、んなわけねえだろ!? どうして俺が」

「しらばっくれるなよ。今からでもお前を殺してやろうか?」

「カッ!? はッ!?」


 手を向け、男の首を掴み宙へと浮かせると、男は足をバタバタとしながら苦しそうな顔をする。

 これだけでは足りない。

 あの子がこれ以上に苦しんのだ。


「わ、分かった!! 悪かった! 俺がやった! けど俺だけじゃねえ!! 俺以外にも大勢いた!」


 その言葉を聞き、パッと力を消し男を解放する。

 男はそのまま床に尻もちをつきゴホゴホと咳き込む。


「そいつらの場所は?」

「ここから1番近い陸軍基地だッ!」


 男が叫ぶとほぼ同時に、外から複数人の声が聞こえる。


「いたぞ! 侵入者だ!!」

「捕らえろ!」


 部屋の外から見えたのはエントランスで倒した警備員と同じ服をした奴ら。


「おい貴様! 警備員を呼んだ! 痛い目に会いたくなければ大人しくしておけ!!」

「へ、へへ流石社長! おいてめえ! これでお前も」


「邪魔だ」


 後ろから来ていた警備員から視線を外し、再度男達に向き直りながらそう一言だけ言って、警備員達を全て肉塊に変えた。


 不愉快な音と共に廊下1面が血に染まり、最後にゴトッとついさっきまで生物だった肉の塊が落ちる。


「は? はあああ!!??

 ギャアアアアア!!!」

「な、何がッ、うっ、おうぇええええ!!!」


 2人の反応はバラバラだ。

 男は恐怖から叫び散らかし、社長は気持ち悪さからか吐き出す。


「おいおい酷いな。俺はお前の同族だぞ? 吐くなよ。飲み込め」

「え? ぐぐうううぅうぅぅ!!??

 ゲホッ! ゴホッ! う、ぅう」


 吐いた物を操り、強制的に口を開けさせ体内に戻すと社長は涙目になりまた吐き出した。


「な、なんなんだよてえめえはあああ!?」

「復讐者だよ。お前ら悪魔へのな」

「ガハッ!? ぎゃあああ!!!

  ひっ! や、やめろ!! やめてくれえええ!!! いてえ!! 痛ええよ!!!」


 男の首を手で直接掴み、ガラスへと押し出すとそのままガラスを突き破る。

 男の足は宙に浮き、背中や後頭部には割れたガラスが突き刺さり血が滴り落ちていく。


 今の男は高層ビルの最上階に浮いている状態だ。

 命綱は俺の手1本。


「ゆ、ゆるじで、ぐださい! お、ねがい、じまず!」

「お前はそう言われてやめるのか?」


 あの子が受けた苦しみは、辛さは、恐怖は、痛みは、こんなものでは無い!

 今まで地獄のような生活をしてきたあの子は、これから幸せに生きていく予定だった。

 それを全て、こいつが台無しにした。

 1人の人間の命を、悪魔が絶望の淵に堕とし奪ったのだ。


「お前には死ぬ方がマシだと思えるような地獄を味あわせてやる」


「あ、あぁぁぁ! ぁ、ぁ・・・・・・」


 男は口から泡を吹き出し、気絶する。

 ゴミのよく分からない泡など触れたくもない。


 手を離し、一瞬落ちるがそれを力で浮かし、そのまま後ろを振り返る。


「どこへ行くつもりだ?」

「ひっ!? ゆ、許してください!!」


 社長は俺が男の相手をしている間にこっそりとここから出ていこうとしていたようだ。

 まぁ見てなくても魔素の動きで分かっていたが。


「そうだな・・・・・・1つだけ俺の言うことを聞いてくれたら生かしてやってもいい」

「な、何なりとお申し上げください!」

「世界へ向けて、伝えたいことがある。用意を、頼まれてくれるな?」

「は、はいいぃぃ!!! もちろんでございます!!! すぐに用意致します!!!」


 社長は腰を抜かしているのか地面を這いながら必死に自身の元いた机へ戻り、パソコンを開く。


 俺が世界に向けて伝えたいこと。

 それは・・・・・・。


「よ、用意出来ました! これでLIVE撮影をしましょう! 生配信で世界へ発信できます!

 私のSNSのアカウントをお使いください!」

「ああ」


 パソコンの前に立ち、画面を眺めるともう1人自分が映っていた。

 それは俺がした動きと同じ動きをする。


「そ、それでは、始めます!」


 社長がそう言いパソコンをタップすると、配信がスタートする。

 見ている人数は、数人か。

 突拍子に始まった割には悪くないか?


「こんにちは、神崎憐。今日は世界に向けて、伝えたいことがあります。しかしまだ人が少ない。もしよければ拡散してほしいんですね。少し待ちましょうか」


 今回は俺からのお願いだ。

 相手が悪魔と言えど、お願いする側は丁寧でなくては。


 数分間無言で立ち続け、数秒経つごとに配信の人数が倍倍で増えていく。

 コメント欄が流れる速度はあまりに早く、1つも読み取れない。


「そろそろ人も増えてきたので言いましょうか」


 そう言って、1度目を瞑り、言葉を選び、最後に覚悟を決める。


「俺は明日から、あく、人を殺さないと誓いましょう。その代わり、あなた達も俺に干渉しないで頂きたい。誰もいない、迷惑をかけないように遠い場所で暮らすので、どうかお願いいたします」


 そう言って本当に軽くだけ頭を下げる。

 悪魔に頭を下げるなど、とんだ屈辱だ。

 今までの俺なら、絶対にしなかっただろう。


 しかし、これもベルや子供達の安全のため。

 そして彼ら彼女らを守りたいという俺のエゴのためだ。

 守るべき者側がやらなければならないことだ。

 無駄なプライドは捨てろ。

 家族を守るためだ。


 その為なら、頭も下げよう。


 数秒後、頭を上げもう一度画面を見る。

 配信を見ている人数は爆発的に増えており、既に百万人を突破していた。


「ああ、最後に一つだけ・・・・・・もしお前らから俺に絡んでくるのなら、慈悲は無い」


 最後に1度だけ、釘を刺しておこう。

 意味があるかは分からないが。


「さて、」


 パソコンを捻り潰し、割れた窓の外へ投げ捨てる。


 社長は既にこの部屋にはいない。

 今は、もうこの建物を出ているな。

 太っている割には動きが早いじゃないか。


「逃げれると思うなよ?」


 数分後、街は壊滅した。

 1人残らず焼け死ぬか建物の倒壊に巻き込まれて潰された。


 ん? 人はもう殺さないと誓ったんじゃないかって?

 それは明日からだって言っただろ。

 今日はセーフだよ。


 この日この時をもって、俺の人生に一区切りついたのだった。

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