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人ならざる力がバレて世界中に狙われた少年、人類の敵と認定されて大切な人を奪われたので復讐を決意します  作者: 寒い


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〈37話〉世界は巡る

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「・・・・・・中々数が多い。海から遠いと面倒くさいな」


 遥か上空、宙に浮かんでいるのは黒色のロングコートを纏い、風に靡かせている1人の男。

 まだ若いが、幼さが抜け切った端正な顔つきをしている男。

 彼は満足げに下を眺める。


 眼下に広がるは崩壊しかけている都市。

 いや、もう既に崩壊していると言っても過言では無かった。

 街を象徴する高層ビル群は跡形もなく崩れ落ち、延焼が延焼を呼び、大規模な火災が広がっている。

 戦闘機や戦闘ヘリ、戦車などの残骸が見られ、ここでどれだけ過酷な戦闘があったかを物語っている。


 残った人々は叫び、嘆き、逃げ惑う。


「さて、次へ行くか」


 男は眼下の街には既に興味が失せたのか、すぐに踵を返し、また新たな街を探す。


 全ては復讐のために。

 大切な者が殺された彼の心には、ぽっかりと大きな穴が開いていた。


 自分自身が彼を苦しめたあの男と変わらないこ

 とを、彼は気づいていない。

 いや、あるいは気づいておきながらも、心に従っているのかもしれない。


 それは誰にも分からない。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 〜とある国の少女視点〜


 そこは彼女にとって地獄だった。


 家は貧しく、少女は痩せ細り、病弱で常に体調も優れない。

 周りに助けてくれる人はいなかった。


 親は金のために自分を売った。

 よく分からない、大きなおじさんの家に連れていかれて、着替えさせられて、襲われた。

 とても痛くて、苦しくて、気持ち悪くて、泣き喚いてしまった。


 そんな日が暫く続いた。

 それでもご飯にはありつけて、ボロボロだけど普段着も着れて、安心して眠れる場所もあった。


 けど数週間経った頃、おじさんの家を追い出された。

 理由は分からない。

 多分何かの病気にかかったせい。

 そのせいで捨てられた。


 自分と入れ替わるように誰かがまたあの家に連れてこられていた。

 その子も自分と似たような目をしていた。

 何の為に生きているのか分からず、未来を見失った目。

 けれど家に居れるあの子が、今は少し羨ましかった。


 どれだけ苦しくても、辛くても、そこにさえいれば生きてはいけるから。


 生きる希望を失っても、死にたくはなかった。

 怖いから。

 死ぬのが怖い。

 いっそ死んでしまえば楽になれるだろう。

 きっとそうだ。


 ・・・・・・もう今日までに、何度も試した。

 机に登って首におじさんのベルトを括ったり、包丁を首元まで持ってきたり、よく分からない大量の薬を飲んだり、しようと思ってどれも出来なかった。

 直前になって、立ちすくんでしまった。


 足腰から力が抜けて、ベルトや包丁、薬を持っている手は震えて落としてしまった。


「・・・・・・これからどうすればいいんだろ」


 おじさんの家を出てから数日、まだ何も食べてない。

 泥水を啜り、なんとか耐えているけど、空腹は限界だ。

 私のような病弱でまともに走れない様なやつじゃ食料を盗むことも出来ない。


「・・・・・・ここで、死んじゃうのかな」


 何も出来ず、空を見上げて手をあげる。

 私は晴れている日の空を見るのが好きだ。

 だってこんなところと違ってどこまでも広いから。

 こんな狭い空間の私でも、夢を見させてくれる。


 今日は晴れているけど大きな雲も浮かんでいる。

 それも好きだ。

 あの雲に乗って、どこでもぷかぷかと浮いていたい。

 あの鳥達のように、どこにだって羽ばたける翼が欲しい。

 そしたら、こんな所から抜け出せるのに。


「・・・・・・わぁ、大きな鳥だ」


 よく見るカラスとかじゃない。

 そんなものよりも更に高いところ、雲よりも高い場所を、とても大きな鳥が飛んでいた。


 とても逞しいその大きな翼は少し紫がかっていて、力強く、1回羽ばたくだけで簡単に悩みなんbて吹き飛ばしそうだった。


「ぁ、見えなくなちゃった」


 雲に隠れてしまい、その大きな鳥の姿を見失ってしまう。


 あんなに大きいのは初めて見たなぁ、なんだかかっこよかった。


 大きな鳥が見えなくなったあとも、ボッーと空を眺め続ける。

 今のこの時間は最近の癒しだ。

 お腹は空いてるし常に体はだるくしんどい。

 けど、青空を見ていると、少し心が晴れる。


「〜! ・・・・たぞ! 〜〜ってやろうぜ!」

「ぉ! ・・・く!」


 遠くの方からまだ少し高い複数人の男の子の声が聞こえた。

 段々とその声は近づいてくる。


 ああ、嫌だな。

 またこの時間だ。


「おっ! いた! おい! 見つけたぞ!」

「ははは! 早すぎだろ!」

「くっせ〜! こいつまだ水浴びもしてねえだろ!」

「おらっ!」


「ぃたっ!?」


 腕に痛みが走り、体を起き上がらせると、コロコロっと石が転がっていた。

 また新しい痣が1つ増えた。


 石が飛んできた方に視線を向けると、いるのは男の子4人。

 自分よりも少し歳上で、体も大きい。


 あの家を出てから、人が少ないゴミ溜まりの近くで寝ていた。

 そしたらあの人達が来て、石や泥を投げつけられた。それも楽しそうに。


 最初は私がここに来たから、やられたのだと思った。

 たまたま会った感じだったし、あの人達の遊び場所だったのかもしれない。

 だから邪魔した私が悪いと思って、また場所を変えた。


 けれど、またあの子達は来た。

 今度は私を探しに来ていたようだった。

 見つけられて、石を投げられて、笑われて、悪口を言われて。

 多分、私はあの人達にとって丁度よいおもちゃだったんだろう。


 あの人達は私よりちょっとだけ良い服を着ていて、ちょっとだけ背が高くて、ちょっとだけ肉付きも良かった。

 けれど、私と同じ貧困なことは変わらない。


 違うのは、親がいるかいないか。

 自分を守ってくれる親が、育ててくれる、面倒を見てくれる親が。

 そして安心して帰れる場所があるか。

 そこも違った。


 弱い者は群れ、さらに弱い個人を標的にする。

 そうすることで、日頃の鬱憤やストレス、さらに上の存在からの抑圧から気を紛らわせる。

 自分よりも下がいると認識することで・・・・・・。


「先に多く当てた方が勝ちな!!!」

「おっしゃあ! 任せろ!!」

「ぜってー勝ってやるよ!」

「動くなよ!!」


「ぁ、うぅ、ぅ」


 あの人達は私を使って勝負事をすることが多い。

 その時はいつもよりも多く石を投げられる。

 私はただ縮こまって、痛みに耐えながら終わるのを待つことしか出来なかった。


「ははは!! おらおら! 俺が今1番当てて・・・・・・」


 そう聞こえて、そこから音が止まった。

 いや、何も聞こえなくなり、暴風が体を押そうとする。

 そして数秒後、耳がキーンと鳴り出す。


 幸い縮こまっていたおかげで飛ばされることはなく、痛みが止み、あの人達の声も聞こえなくなって、顔を上げた。


 居なくなっていた。

 2人ほど。

 いや、それどころか、街の半分ごと。

 まるで隕石でも降ってきたのかように、私のすぐ手前まで地面に大きな穴が空いていた。


 大量にあった木でできたボロボロの家達も、石? で作られた大きな立派な家も、池も、ゴミも、人間も。


 残った2人の男の子達は私と同じように口を開けて呆然としている。


 直後、空から赤い何かが、いや、あれは火か。

 空を埋め尽くすほどの火の雨が、残った半分の街を燃やし尽くす。

 辺りは黒い煙に包まれ、大人も子供関係なく逃げ惑う。


「ぎゃああああああ!!!」


 直接火が当たったのか、燃え上がっている人もいた。

 それも結構な数だ。

 必死に地面を悶え周り、火を消そうとするが、火は弱まるどころか強くなった。


「な、なんだよこれ!?」

「お、おい! あいつらはどこ行ったんだよ!?」

「そんなんもういいだろ!! 早く逃げるぞ!」

「あ、ああ!」


 2人は逃げようと、私の後ろの方向へと向かって走り出した。


 熱い。

 体が痛い。

 走れない。

 立つことさえままならない。

 死にたくない。

 まだ、死にたくない!


「ま、待っ」

「どけ!!! 邪魔だ!!」

「ぁッ・・・・・・うッ!?」


 手を伸ばし、2人について行こうとするけど、簡単に押し飛ばされて倒れる。

 痛い。全身が痛い。

 ああ、待って。

 置いていかないで。

 私もまだ死にたくない。



 そう思い、走り去っていく2人の背中に手を伸ばす。

 しかし、その背中は遠ざかるばかりで届くことは無い。

 火の手が段々と近づいてくる。

 熱い。熱い熱い痛い熱い。


 直後、2人の真上から火が落ちてくる。

 直撃し、2人は日に包まれ、悲鳴を上げながらのたうち回っていたが、動かなくなった。


「ぁぁ・・・・・・」


 私も、もう無理だ。


 そう思ったとき、2人が死んださらにその奥から、誰かが歩いてきた。


 その人は黒く長いコートを着ており、身長は高い。

 そして火の回っている道の真ん中を、恐れることなく堂々と歩いている。

 その炎達は自分のための道を作っているのだと言わんばかりに。


 その姿が、私にはあまりにも美しく、神々しくも見えた。


「!?」


 段々その人物が近づいてきて、ここでようやく気づいた。

 あの人・・・・・・羽が、翼がある。


 それもとても大きな、紫がかったとても大きくて綺麗な翼。


 ああ、あの翼は、さっき空で見た。

 何者にも囚われることなどない、このどこまでも続く空を飛ぶための自由の翼。


「ぁ、ああ!」


 声にならない声を出す。

 あの人に手を伸ばし、翼触らして欲しかった。

 1度でいい、軽く触れるだけでいい。

 もう死ぬのなら、1回だけ、最後に1回だけ、あの翼を。


「‘’死に損ねたか。俺が楽にしてやる‘’」


 気がついたらその人は目の前にいて、自分では理解出来ない言葉を発していた。

 顔をよく見ると、アジア系の顔立ちだった。

 どこの、人だろうか。


「翼を・・・・・・触らしてください」


 相手はここの国の人じゃない。

 伝わることは無い。

 けれど、それでも、


「何を言っている? 俺に翼などない」

「!? わか、るの?」


 驚いたことに、その人は私に分かる言葉を喋った。

 この国の言葉を。


「ああ、少しな。それで、翼とはなんだ? お前には何が見えている?」


 この人は軽く肯定し、質問をしてくる。

 言葉には全く違和感もなく、少しだけは嘘だろうと思ったが、そこには触れなかった。


「あなたの、背中に、翼が、ありませんか?」

「はぁ、‘’まぁ幻覚でも見てい‘’」

「少し紫がかった、大きな、翼」


 ため息をつき、私の分からない言葉で何かを言っていたのを遮って、言葉を紡ぐ。

 私が今見ている。

 目の前のありのままの光景を。


「!?」


 その私の言葉を聞いて、その人は一瞬驚いた顔をした。

 けれど、すぐに表情は冷たい元の顔に戻った。

 私の目を真っ直ぐ見て、目を逸らさない。

 その人の目は少し紫が混じった黒色で、綺麗で不思議な瞳。

 まるで自分の全てを見透かされているかのような、そんな感覚に陥る。


 数秒のあと、その人は言った。


「お前、まだ生きたいか?」


 その言葉に、私は考える暇もなしにすぐさま返事をした。


「はい」

「俺についてくるか?」


 返事は変わらない。

 変えるわけがない。

 私は今、この時のために生きていたのかもしれない。

 そう考えれば、今までの苦痛など屁でもない。


「はい」


 こうして私は生き残った。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜


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