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人ならざる力がバレて世界中に狙われた少年、何故か人類の敵と認定されて大切な人を奪われたので復讐を決意します  作者: 寒い


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3/19

嫌悪され拒絶され

 憐が5歳に上がって小学校に入学した頃、麻里亜達の貯金は底が見えて来ていた。

 誠司から奪った金は全て使い果たしていて、憐の学校に必要な用具を買う金もまともに残っていなかったが、近隣住民からおさがりなどを貰って最低限揃えるのが限界だった。


「隼人君も憐の入学式来てよ・・・・・・」

「あ? 行くわけねーだろめんどくせー。あー、それよりパチンコ行ってくるから。帰るまでに飯作っといて」

「・・・・・・うん。分かった」

「ごめんな。けど数倍にして帰ってくるから任せとけ!」

「・・・うん。信じてるよ」

「おう!」


 誠司の家を出てからは、金髪男ーーー石橋隼人のアパートで同居を始めた麻里亜だったが、隼人は仕事をしていない事が判明した。

 しかし麻里亜は隼人の「すぐにどっか就職するから」「俺が麻里亜を幸せにするから」という甘い言葉に縋ってしまった。

 麻里亜は愛を欲して他の事に目を向けられず、瞑ってしまった。

 隼人は麻里亜が誠司から奪った貯金を使い、パチンコや競馬などを毎日するようになってしまい、瞬く間に貯金は減り底が見えて来た。


 文句を言いたかったが、命令に逆らえば暴力を振るわれ、優しい言葉で慰められた。

 その事もあって麻里亜は完全に隼人の言いなりになっていた。

 隼人は完全に憐に興味がなく、それどころか事ある毎に面倒を見れないから施設に連れて行けと言っていた。


 麻里亜は憂鬱な気分で憐の入学式に出席し帰って来てご飯を作り、隼人の帰りを待つ。


「隼人君、まだかな・・・・・・」


 麻里亜は能面のような生気の感じられない顔で小さく呟く。

 言葉では隼人の帰りを楽しみに待っているように聞こえるが、その表情は若干曇り掛かっている。


「ままぁ、大丈夫?」


 憐が前に来て心配そうな表情で麻里亜の顔を覗く。

 憐と話している時だけは、わずかだが自身に活力と自我が戻る気がしていた。


「うん。大丈夫だよ。憐は良い子ね」


 麻里亜が憐に向けて優しく微笑む。

 憐にはそれが嬉しくて、自分が話しかけると麻里亜は笑ってくれる、元気を出してくれる。

 元気のない麻里亜を見ると悲しい気持ちになるから、もっと麻里亜を喜ばせたかった。


「まま、見てて!」

「なぁに?」


 そう言って憐は手を前に突き出し、目を瞑って唸る。


「むうぅぅ・・・」

「? ・・・・・・!?」


 憐が手を突き出した方向に置いてあったテレビのリモコンがふわりと宙に浮かんだ。

 それを見た瞬間、麻里亜は過去のトラウマが蘇ると同時に、酷い嫌悪感と恐怖心が体を襲い、汗が止まらなかった。


「ねぇまま見て、すごいで」

「ぁ、ぁぁぁ、ぁ・・・・・・!!!」


 先程までの笑顔は消え失せ、何かに怯えているように後退りし、目は焦点が合わなくなっている。

 その変わりようはまだ幼い憐ですら異常だと理解出来るほどに。


「ま、まま? だいじょうぶ?」

「ひっ・・・こ、来ないでっ!」

「えっ・・・・・・」


 憐が心配して麻里亜の元に寄ろうと近づくと、麻里亜は憐に恐怖を感じ、咄嗟に憐を遠ざける言葉を放つ。


「な、何でそんな事言うの・・・・・・?」

「いやぁあ! 辞めて! 違うっ! 私のせいじゃないっ! あの人が帰ってこないから! 私を置いていくから、ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」

「ま、まま・・・」

「っ!! 私はあなたのママじゃない! あなたみたいなバケモノ産んでない! 気持ち悪いっ! これ以上近寄らないで!」


 先程まで怯えていたのが嘘のように、虚空を見つめて誰かに謝り出したかと思うと、憐に暴言を吐き出す。

 明らか情緒がおかしくなっており、憐にはそれが怖かくて、泣き出してしまった。


「帰ったぜ麻里亜! 今日は絶好調だっ・・・たけど、なに? どう言う事?」

「うっう、えぐっ、えっぐ、ぅああああん!」

「あ、ぁぁ、なんでこんなっ・・・」

「麻里亜!? 大丈夫か!?」


 家の中がカオスと化したタイミングでホクホク顔の隼人帰ってくるが、現場を見た途端すぐに麻里亜に元へ駆け寄り抱きしめ宥める。


「麻里亜! 落ち着け! 俺が帰ってきたぞ!」

「は、隼人君・・・・・・」

「ああ、俺だ! 落ち着け!」


 麻里亜は隼人の腕の中で徐々に落ち着きを取り戻したことで、憐も少しずつ泣き止み始める。


「麻里亜、何があったんだ?」

「・・・・・・」


 隼人が麻里亜に優しく問いかけるが麻里亜は震えたまま下を向き返事をしない。


「っち、何があったんだよ! おい憐! お前が麻里亜をこんなんにしたのかっ!?」


 一緒にいて、怯えた麻里亜の前にいた事情を知ってるはずの憐に少し苛立ちながら声を掛けるが、憐は一生懸命横に首を振る。

 憐自身にも何が起きたのかよく分からない上に、その現場であったことを言葉で伝えられなかった。


「親子揃ってだんまりかよ・・・はぁ、麻里亜動けるか? ベットで休め。安心しろ、俺がお前を守ってやるから」


 結局隼人は事情を聞き出すことも出来ずに、いつのまにか日常に戻った。

 いや、1つ変わったことがあるとすれば麻里亜が憐と接する時に目を合わせなくなっていた。

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