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ナポリタンでは終われない  作者: yuuma
第十ニ章:灯火をわかつとき

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46話-旅立ちの日

挿絵(By みてみん)


朝の空港ロビーって、なんでこんなにテンション上がるんだろ?

ガラス張りの天井から差し込む光がピカピカ眩しくて、外は超寒いのにここは暖房ガンガンで暖かい。


キャリーケースがガラガラ言って、スピーカーからアナウンスが流れて、急いでるサラリーマンがカツカツ歩き回ってる。


なんか全部が「新しい物語のスタートだぞ〜」って言ってるみたいで、俺はちょっとワクワクしてた。


出発ロビーの柱の前で荷物を下ろす。

手荷物の中には例の帳面が入ってる。

二年前に倉庫で見つけて以来、ずーっと大事にしまってたやつ。




あの帳面、革表紙で重厚感あるくせに、中身は真っ白のページばっかりだった。

「俺を書いてくれ〜」って言ってるみたいに、棚の奥でお留守番してたんだ。


でも表紙の裏だけは特別で、ばあちゃんの達筆でこう書いてある。


**《これから、あなたが書くこと。》**


当時の俺には全然意味分かんなかった。

過去のこと話すの超怖いし、未来とか考える余裕ゼロだったから、

とりあえず棚に戻しちゃったんだよね。


---でも今は違う。全っ然違う!




「……こっち向いて」


後ろから声がして振り返ると、咲良が毛糸のスヌードを両手で持って立ってた。

白い糸がキラキラ光ってて、めっちゃ可愛い。


「これで向こうでも風邪ひかないでよ」


咲良がちょっと背伸びして俺の首に巻いてくれる。

毛糸のふわふわ感が首に当たって、心の中までポカポカになった。


「……ありがとう。俺、ちゃんと旅立つ人に見える?」


「うん!ちょっとだけ"語りに行く人"って感じ」


二人でクスッと笑う。もう不安とか寂しさとか、そういうネガティブな感情は吹っ飛んでた。


「……ナポリタンのレシピ、絶対守れよ?」


「うん!でも"語り手の席"はちゃんと空けとくからね」


「じゃあまた、新しい話を届けに帰ってくる」


自然にそう言えてる自分にびっくり。過去を隠してコソコソ生きてた俺は、もうどこにもいない。




搭乗口に向かう前に、ベンチに座り込んだ。膝に帳面を置いて表紙を開くと、

真っ白なページが朝日でピカーッと光る。


指でばあちゃんの文字をそっとなぞった。


**《これから、あなたが書くこと。》**


---ばあちゃん、やっと分かった!これ、俺の人生を語り直す専用帳面だったんだ。


ペンを取って、記念すべき一行目を書く。


**「これは、僕が語り直す物語だ」**


インクがジュワーッと紙に染み込む瞬間、胸の奥でずっと閉まってた扉がパカッと開いた感じ。

ばあちゃんがくれた真っ白なページは、もう真っ白じゃない。

咲良が支えてくれて、ばあちゃんが背中押してくれて、

俺の言葉で人生を書き直すスタートラインが、今ここに引かれた。




「ご搭乗の準備が整いました〜」ってアナウンスが響く。


帳面をそっと閉じて咲良の方を見ると、ガラス越しの朝日をバックに小さく手を振ってる彼女がいた。


その笑顔には「置いてかれちゃう子」の影なんて全然ない。

むしろ「行ってらっしゃい!」って送り出してくれる人の、キラキラした誇りと希望が詰まってた。


俺は思いっきり息を吸い込んで、ゲートに向かって歩き出す。


胸の中で、ばあちゃんと咲良と俺の物語が一本の糸でしっかり繋がってる。

その感覚が、静かに、でも確実に俺の中で生きてた。



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