9 怪物への対処の仕方・人型編
「丁度良いから、こいつらの倒し方も練習しようか」
「え、あの、本気ですか?」
「もちろん」
肯くソウマ。
その声にオトハは更に青くなる。
「大丈夫、昨日言った通りにやれば」
「でも、そんな上手くいくとは──」
いかないんじゃ?
そう聞こうとしたところで、
「上手くいく、大丈夫」
ソウマが遮るように太鼓判を押す。
「まずは一番近い所から片付けよう。
あ、車の中にいていいから。
そこからでも超能力は使えるでしょ?」
「ええ、まあ」
音そのものは離れた場所でも発生させられる。
なので車の中にいても問題は無い。
昨日、ソウマに提案された事をやるだけなら。
「じゃあ、そのままでやってみてくれ。
出来るだけ引きつけて」
「はい。
でも、上手くいくか分かりませんよ」
「ない、少しくらいなら俺がどうにかするよ」
そう言ってソウマは安心させる。
「これでもそれなりにレベルは高いからな」
「分かりました……」
それでも不安はある。
だが、オトハはその言葉を信じる事にした。
迫ってくるのは人型の怪物。
犬のように口が突き出た異形。
背丈はおおよそ120センチくらいで、小学生の子供とほぼ同じ。
だが、人を見るや襲いかかってくる好戦的な部分は怪物らしい。
標的を死ぬまで甚振る残虐性と相まって、嫌悪と恐怖の対象となってる。
これがあわせて10体ほどやってくる。
そんな人型の怪物が、廃墟の間を走る道をたどってくる。
そこに向かってオトハは、音をぶつける。
その場だけに響く、轟音を。
それが響いた瞬間、
「──── !」
「──── !」
「──── !」
怪物はビクリ、とのけぞり、耳を押さえてその場にうずくまる。
「よし、いいぞ」
それを見てソウマは満足していく。
「な、大きな音を叩きつける。
これだけで普通の生き物はああなるんだ」
「……ええ、はい」
ソウマの勝算に、オトハはただただ驚くだけだった。
ソウマが目をつけたのはここだった。
音を拾い上げる探知能力。
音を使った通信。
これだけでも十分に役立つ能力である。
だが、これを攻撃的に使えば、その効果は絶大なものになる。
耳の近くで大声を放つ。
これだけでも人は身をすくませてしまう。
ならば、それ以上の轟音を怪物に叩きつけたらどうなるか?
耳を持つ生物ならひとたまりもないだろう。
ようは、耳の近くで拍手をしたようなものだ。
短いが大きな破裂音を叩きつける。
なんの予兆もなくこんなものを受ければひとたまりもない。
オトハがやったのはこれだ。
怪物の周囲にだけ轟音を発生させる。
それだけで怪物は鼓膜を叩かれ、脳を揺さぶられた。
耳を押さえ、地面にごろごろと転がり、身をよじってしまう。
それだけの衝撃を直接頭に叩きつけられていた。
「いいぞ。
倒れたあいつらは始末してくる。
佐々波は近付いてくる他の人型を処分していってくれ」
「はい、やってみます」
「頼んだ。
近付かれるとやっかいだからな」
「はい!」
返事をしながらオトハは周囲の音を拾っていく。
ソウマの言うとおり、怪物は周囲から迫ってくる。
先ほど振り切ったはずのものが、いくつか追いかけてきてるのだろう。
それらの位置を把握し、車の近くに来たところで轟音を叩きつける。
右からの怪物共に。
後ろからやってきた怪物に。
音を叩きつけられた怪物は、全てその場に崩れ落ちてのたうち回る事となる。
そんな怪物に、ソウマは手槍でとどめを指していく。
150センチ程度の棒の先端に、ナイフのような刃をつけたものだ。
これを使ってかがむことなく人型の怪物の急所を刺していく。
普通なら少しは手間取る怪物退治をあっさりと済ませていく。
こうしてオトハの【音響】によって怪物は次々に倒れていった。
即死はしなくても、まともに動ける状態ではなくなる。
そんな怪物はソウマによってあっさりととどめを刺されていった。
「お疲れさん」
全てが終わって車内に戻ったソウマ。
ねぎらいの声をオトハにかけて、車を動かしていく。
「じゃあ、さっさと行こう。
周囲の確認は頼むよ」
「はい、まかせてください」
能力を使ってオトハは返事をする。
再び助手席で周囲の音を拾うオトハ。
超能力の及ぶ範囲で発生する音を拾い、怪物らしきものを探してく。
幸い、しばらくは危険な気配のする音は無く。
安心して車を走らせる事が出来た
(でも……)
周りを探りながら思う。
(なんで渡澄さんはまわりに怪物がいるのが分かったんだろう?)
オトハが気づく前に植物型の怪物を見つけていた。
それは音では探知しづらい存在だ。
なのにソウマは先に見つけた。
(これも渡澄さんの超能力?)
少しだけ疑問を抱きがらも、オトハは周りの探知につとめていった。
知りたい事はあるが、今は安全が最優先だ。
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続きは明日の20:00に。
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