8 怪物への対処の仕方・植物編
「いいぞ。
上手く怪物を避ける事ができる」
「はい、ありがとうございます」
「ただまあ、ここから先はちょっと無理っぽいな」
「え?」
「あれだ」
そう言うソウマは、左側に見える植物を指した。
もともとは住宅だったのだろう一角。
それらは生い茂るツタが絡まり、いくつかの住宅を覆ってる。
この一つの巨大な緑の塊の至る所に巨大な花が咲いている。
いずれも直径1メートルを超える、白い花びらによって形作られてる。
「植物型の怪物だ」
驚くオトハにソウマが説明する。
怪物といっても様々な形がある。
大半は人の形をしたものだ。
しかし、中には獣のようなものもいる。
当然、植物の姿をしたものもいる。
ソウマとオトハが遭遇したのは、そんな植物型だ。
人型や動物型と違い、動かないので避ける事は簡単だ。
この為、目撃例は少ない。
だが、危険であるのは他と同じだ。
やっかいなのは、動きがない事。
例外もあるにはあるが、音をたてる事がほとんどない。
せいぜい、枝葉が風に揺れるくらい。
これらは他の植物と大きな違いはない。
なので、音による検知から逃れてしまったのだろう。
「すいません……」
自分のしくじりにオトハは青ざめる。
動いてる怪物だけに気を取られ、こういった問題があるのを忘れていた。
だが、ソウマは気にしない。
「なーに、こんなのよくある事だ」
そういって対処をはじめていく。
一度車を停めたソウマは、運転席から後ろの荷物の方へと向かう。
そこで防毒マスクと噴霧器を取り出す。
「この中に除草剤が入ってる」
言いながら背負い式の噴霧器を担ぎ、
「これ、つけておいて」
とオトハにも防毒マスクを渡す。
「外に出た瞬間、花粉が飛び込んでくるかもしれないから」
大丈夫だろうとは思いつつ、念のためにオトハにも対策をさせておく。
それが終わると外に出て、植物型の怪物へと向かっていく。
「聞こえる?」
車の中に待たせたオトハに尋ねる。
音の超能力を用いれば、無線機も使わずに会話も出来る。
「はい、大丈夫です」
ソウマの耳に、オトハの返事が届く。
「なら、説明するから見ておいてね」
言い終えるとソウマは植物型の怪物へと近付いていく。
「この手の怪物は、ツタや根を絡みつかせてくる事がある。
それか、花粉を飛ばしてくる」
これが一般的な植物型の怪物の攻撃手段になる。
「他にも、毒のはいった実を食わせたり、実を通して人間の体内に入って、種を発芽させるとか。
まあ、色々あるけど。
直接的な攻撃手段はあまりない」
これが他の怪物よりは楽なところである。
だが、危険が全くないわけではない。
「とはいえ、花粉を飛ばしてくるとやっかいだ。
これが毒の場合もあるから、注意はしておいた方が良い」
害になるという一点では、他の種類の怪物と何も変わらない。
だから対処は慎重に行うべきとなる。
「まあ、植物だから、弱点も似たようなものだけど」
言いながら噴霧器に入った除草剤を振りかけていく。
その途端に商物型の怪物に変化があらわれた。
吹きかけられたところから枯れていき、茶色に変色していく。
花もしおれてしなだれ、枯れて地面に落ちてくる。
「こいつら、除草剤とか使えば割と簡単に処分出来るんだ。
専用のを使わないと駄目だけど」
だが、使えば効果てきめん。
すぐに枯れていく。
「ただ、対処方法を持ってないと面倒だけどな」
その場合、地道に根っこから引き抜くしかない。
それか燃やしてしまうか。
しかし、火事の延焼を考えるとそうそう使える手段でもない。
「だから、念のために用意はしておいた方がいい」
備えあれば憂いなし。
使う機会があるかどうかはさておき。
万が一、そんな状況に遭遇した事を考える。
この用心深さがないと、怪物に殺される。
「植物型はだいたいこんなもんだ」
その準備を発揮して、ソウマは複数の住宅を覆ってた怪物を枯らしていった。
聞いてるオトハは車の中でウンウンと肯いてる。
「それで、次は一般的な怪物の場合だ」
「え?」
「周りの音を拾ってみろ」
言われてオトハは周囲の状況を聞いていく。
その顔が青ざめていく。
「あの、周りに怪物が……」
「ああ、囲まれてる」
植物型を処分してる間に、ソウマ達の周りに怪物が集まってきていた。