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74 胃袋をつかむ者は全てをつかむ、たぶん、おそらく

 シラベも活躍をしていく。

 こちらは主にソウマ達に向けてだが。

 それでもソウマ達はシラベからの恩恵をありがたく受け取る事になる。

 それだけでは終わらなかったが。



「それじゃ、頼む」

「はい!」

 配達が終わって宿泊所に入ってから。

 シラベの仕事はここからになる。

 台所で今夜の食事を作っていく。



 シラベの能力である【調理】

 食事を作るこの能力がまさにふるわれようとしている。

 包丁とお玉を手にして。

 台所を舞台として。

 あるいは戦場として。




 探索者や様々な業者が寝泊まりする宿泊所。

 ここの台所は共有空間になっていて、自炊をしたい者が使っている。

 外食作業が壊滅的な世界の事、まともな料理を外で食べる事など期待出来ない。

 それなりの規模の都市でなければ、



 小さな村や町だと、まず外食産業が成り立たない。

 客が来ないからだ。

 平和だった頃ならば、立ち寄る者もいた。

 しかし、そこらを闊歩してるのは怪物だ。

 荷運びの業者すらほぼ壊滅してる。 

 そんなところで、近所の者達相手の商売など成り立たなくなってる。



 探索者が立ち寄る宿泊所は数少ない例外だ。

 ここでは朝から夕方まで食堂が開かれてる。

 しかし、味の方は大雑把なものでおいしいとまではいかない。

 そこまで気を回してる余裕がないのだ。

 味よりもまずは栄養補給。

 腹が満たされて栄養がとれる事が優先されている。



 この為、少しでも美味いものを食いたいなら自炊するしかない。

 しかし、それだけの能力を持つ者はそう多くはない。



 なので、料理が出来るものは重宝される。

 仲間にいれば、それだけで美味いものにありつけるのだから。

 この系統の超能力を持つ者ならばなおさらだ。

 しかし、確保するのは簡単ではない。



 まず、技術としての料理を身につけてる者がすくない。

 学習の機会が失われてるため、普通に料理が出来る者が大幅に減っている。

 食堂などで食べられるものを出す者はなおさらだ。

 人材を確保しようとしたら、一から育てるしかない。

 しかし、そこまで手間をかける者はすくない。



 まずは生きることが最優先である。

 知識や技術は、まず生存にかかわるものが優先される。

 おいしいご飯という、ある意味贅沢な事は二の次三の次と後回しにされてしまう。



 たとえば探索者ならば、まずは戦闘能力を優先して育てる。

 その次は武器や防具、装備品を作ったりなおす事を。

 料理などはこの次になっていく。



 探索者だけでなく、人類社会全体がこうした傾向に陥ってる。

 宿泊所などで出される飯は美味いものではない。 まずいというわけではない。

 味がないのだ。

 これを回避するには自分で味をつけた料理を作るしかない。



 だから商売になりうる。

 シラベのレベルを上げて、料理を作らせる。

【調理】という能力を使わせていく。

 自炊のための台所においしそうな香りが漂っていく。

 それに引き寄せられるように周りの者達が台所に目を向けていく。



 待つこと数十分。

 ご飯を作り終えたシラベは出来たものを食堂に持っていく。

 並べられたテーブルの一つ、ソウマ達が座ってるところに。

 出てきたのは炊きたての白米に味噌汁、煮物に炒め物。

 豪華というわけではない、ありきたりの定食といえるものだ。

 しかし、怪物によって破壊された世界では、なかなかお目にかかれない食事である。



「いただきまーす」

 そう言って頬張るソウマ達は、出来映えを舌で確かめる事になった。

「────美味い」

 短く率直な評価がソウマの口から漏れた。

 久しく食べた事の無かった味が口の中にひろがる。

 あとはもう何も言わない。

 無言で目の前にある料理をたいらげていく。



 ソウマだけではない。

 オトハもサユメも。

 カナヤですら夢中になっていく。



「おいしい、本当においしい」

「うまっ、美味っ、なにこれナニコレ」

 オトハとサユメは料理向けの超能力がもたらす味に驚きながら賞賛していく。

 悔しいけど自分たちにはここまでの味を出せないと言いながら。

 とはいえ2人の作る飯がまずいわけではない。

 シラベの作るものが圧倒的過ぎるだけだ。



「すげっ、すげっ、なんだこれ、すげえ!」

 カナヤですら同じだ。

 以前からシラベの作るものを食べていたにも関わらず、箸が止まらない。

 前より更に美味くなってるのがわかるからだ。

「レベルが、上がるって、こういう、事か!」

 食べながら感動を口にしていく。

 思いを胸にとどめてなどいられないと。



 これには作った本人も驚く。

 うれしくありがたいと思いつつもだ。

 あまりの反応の大きさに恐れおののいてしまう。

「あの、そこまででも……」

『何をいう!』

 恐縮するシラベに、ソウマ達は声を重ねて反論する。

「こんな美味い飯、めったにない!」

 代表するようなソウマの声に、他3人がうんうんと頷く。



 それを見ていた周りの者達も羨望のまなざしを向けていく。

 そんなに美味いなら俺も・私も食べてみたいと。

 その視線と気持ちをくみ取ったソウマは、周りの者達に告げる。



「彼女はうちの人間だ」

 まずは所属をはっきりさせる。

 そして、シラベにやってもらう業務内容も伝えていく。

「今後はこうして料理を作って売り出そうと思ってる。

 食材は持ち込みで、手間賃はもらうけど」

 周りがざわついていく。

「マジか」

「なんだと……」

「本当か?!」

 期待と願望がたちのぼる。



「注文に応じる事は出来ないだろうけど。

 それでもいいなら彼女に作ってもらう」

 そして、と続ける。

「食材があって、時間があるなら、翌日の弁当を作るのもやぶさかではない」

『……うおおおおおおおおお!』

 宿泊所をゆるがすように多くの声が重なっていった。



 こうしてソウマは新規開拓を成功させていった。

 その日、初めての注文を受け付け。

 シラベはこの場にいた探索者達から感謝と手間賃を受け取っていった。

 また、無理のない範囲で翌日の弁当も用意していった。

 これらを受け取った探索者達は「ありがとう、ありがとう!」と何度も繰り返した。



 ついでと言っては何だが。

 手軽にそれなりに味のついた料理を作る方法をシラベは残していった。

 これによりソウマ達が行く先々の宿泊所では、出てくる食甚がいくらか改善されるようになる。 少なくともご飯にそれなりの味がつくようになった。



 かくてソウマは、配達だけでなく。

 行く先々で生活基盤になる機械や道具をなおし。

 食べる事の楽しみを回復させていくようになった。



 やがて評判は広がり、ソウマ達を求める声は高まっていく。

 しかしソウマは、これらをあえて無視。

 配達の傍ら、立ち寄ったところで活動していく事を伝えていった。



「誰かと専属契約とかしたら、誰にも届けられなくなる」

 特定の誰かではなく、あちこちにいる大勢というたくさんを優先する。

 そもそも一カ所に、一つの勢力に肩入れするつもりなら、独立開業などしない。

 古巣となった探索者旅団に所属してづけていた。



 だから、特定の誰かと付き合うつもりはなかった。

 足蹴にするつもりはないが、積極的に付き合うつもりもない。

「一期一会だよ」

 出会えた幸運を大事にしよう。

 そんな思いもあった。



 なにより。

 自由にあちこち出向ける立場。

 これを捨てるわけにはいかない。

 怪物を、魔族を倒すためにも。

 そのためにも自由気ままな独立零細業者でいる必要がある。



 自分の好きに動ける立場を確かなものとし続ける。

 この思いを口にする事はない。

 ただ態度と行動で示していく。

 その為にソウマは、様々な申し出を頭を下げて断り続けた。

「すいません、ごめんなさい」

 この言葉に多くの探索者達が残念そうに、ため息を吐いていった。

 ならば仕方ないと。



 こうして行く先々で宣伝をかねた営業をしていく。

 カナヤとシラベによってソウマの零細旅団は少しずつ知れ渡っていく。

 次も是非来てくれと声がかかる。

「これで食い扶持を確保出来る」

 お得意様を手に入れて、ソウマの懐具合も潤っていった。

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