72 新人最初の仕事はレベル上げです
「それじゃ行こうか」
組合で仕事を請け負ってから出発する。
いつも通りの配達と、今日から始める仕事の分を手に取って。
配達先で出ている機械修理が今日から仕事になっている。
【制作】の能力をもってるカナヤは、機械などの修理が出来る。
その他、木工から金属加工まで幅広く対応できる。
超能力としての【制作】の司る範囲は広い。
レベルが上がれば。
まだレベル1桁のカナヤにそこまでの汎用性はない。
日曜大工よりはマシという程度だ。
なので、仕事として請け負うのは不可能。
普通ならば。
「それじゃ、レベルを上げようか」
運転しながらそう言うと、ソウマは霊気結晶を取り出していく。
収容空間に蓄えてある大量の霊気結晶。
それを後部座席に座るカナヤに渡していった。
「あの、これって……」
驚くカナヤは自分の前に現れた霊気結晶とソウマを交互に見る。
それを見てオトハとサユメが前後から声をかける。
「気にしない方がいいですよ。
ソウマさんは色々と普通じゃないですから」
「うん、気にせず今はレベルを上げちゃおう」
言葉に妙な重みのある2人の声を聞き、カナヤは呆然としていく。
隣に座るシラベも共に。
ただ、断る理由もない。
レベルを上げられるならその方が良い。
ならばとカナヤはレベルを上げていく。
一気にレベル10を超えて20まで進んでいく。
これだけあれば、たいていの物は治せる。
「そのレベルでどんどん修理していってくれ」
「はい……がんばります……」
呆気にとられたままカナヤが応える。
表示させたステータス画面のレベルを見つめながら。
「それと」
カナヤだけではない。
シラベの膝の上にも霊気結晶を出していく。
「料理の方もレベルを上げておいてくれ。
どこで出番があるかわからないから」
「…………」
シラベの方も呆然となっていく。
まさか自分も霊気結晶を渡されるとは……そんな思いを抱きながら。
レベルを強制的に上げる経験値稼ぎ。
それは車内で簡単に行われた。
レベル20の探索者が一気にあらわれる。
「でも、いいんですか、こんな風にレベルを上げて」
「別にかまわんよ」
遠慮しがちに尋ねるカナヤ。
しかしソウマは全く気にしない。
「仕事をするにはレベルがないとどうしようもないないんだから。
使える人間が増えるのはありがたい」
「なるほど……」
そんなもんなのか?
今ひとつ釈然としない思いを抱きながらも、カナヤは納得する事にした。
隣に座るシラベも。
「それでどうだ。
超能力は今までより使えそうか?」
「ええっと、ちょっと待ってください」
「とりあえずこの車の調子を見て試してくれ」
「あ、はい」
言われるがままにカナヤは【制作】の能力を発揮していく。
自分が乗ってる軽ワゴンの状態を確かめるために。
車の構造がカナヤの頭に入ってくる。
どこが良くて、何が悪くなってるのか。
これらがすぐにわかっていく。
何をすれば良いのかも。
「車体全体に歪みがある。
小さいけど、放っておいたら問題になる。
それと、タイヤとブレーキがすり減ってる」
「なるほどね」
カナヤの能力は確かなようだ。
車の状態をしっかりと確認できている。
「それを治せるか?」
「道具と部品があればどうにかなりそうだけど。
手元の工具だけだと無理かな」
「わかった」
それで十分だった。
修理は道具がなければどうにもならない。
高レベルならいざしらず、今の段階ではこれだけ出来れば十分だ。
「あとは料理の方だけど」
「はい──── !」
声をかけられたシラベが緊張してか大きな返事をする。
「昼とか泊まり先で頼むよ。
台所を借りるから」
「はい、がんばります!」
うわずりそうな、宣誓をするようなシラベの声があがった。




