68 都市の壊滅の危機を救った翌日、いつもと変わらぬお仕事に
人知れず集められた怪物の軍勢。
それらは、率いる魔族ごと殲滅された。
誰に知られる事もなく。
今の人類では対処出来ない規模が。
今の人類では対抗できないレベルの。
今の人類では、都市を一つ確実に失ったはずの敵。
それが多くの人の知らないところで消されていった。
それをなしたソウマ達は、軽ワゴンで何食わぬ顔で群馬に戻り。
遭遇した怪物を倒したといって、いくつかの霊気結晶を売り払い。
報酬を手にして寝床に入っていった。
いつものように。
明けて翌日。
これまたいつものように飯を食べて。
配達するための荷物を選んで出発する。
軽ワゴンで巡れる近隣へと。
「いつも通りですね」
後部座席に座る音が不思議そうにつぶやく。
魔族が率いた怪物の軍勢を倒す。
英雄といっても差し支えない事をなしとげた。
なのに、盛大に何かが変わるわけでもなく。
いつもの仕事に戻っていく。
昨日と今日との落差に戸惑ってしまう。
「こんなもんだよ」
聞こえてきた声にソウマは淡々と応じる。
「あんな事があったんなんて誰も知らないし。
知らないうちに全部片付けたし。
何かが変わる事なんてないよ」
「兄ちゃんはそれでいいの?」
「ああ、これがいい」
サユメの声にも淡々と応える。
ソウマにとって名声など邪魔でしかない。
うっとうしくつきまとってくる人間が増えるだけ。
有名の利益などなにもなく、損失だけが増えるだけだと考えてる。
そんなものを手に入れようとは思わなかった。
では、なぜ魔族と怪物の大群を潰したのかというと、これが理由になる。
「あんなのが来て町が壊れるのがこまる」
居場所を守る、町を確保する。
全ては生活空間を保つため。
これが魔族と怪物を倒した理由だ。
「俺はとてつもなく強いけど、飯も作れないし家も作れない。
誰かが作ってくれなきゃすぐ死んじゃう」
「だから兄ちゃんは、魔族とかを倒したわけ?」
「そういう事。
正確には、お前らがほとんどやってくれたけど」
「それは別にかまいませんけど」
どこか呆れるような、そして信じがたいような調子でサユメとオトハがつぶやく。
言いたいことはわかる。
だが、それで死ぬかもしれないほど危険な敵を戦ったのが納得出来なかった。
ソウマの力を知るから、負ける事はないとは思ったが。
それでも、大量の怪物を倒してそれを派手に言いふらすでもなく。
生きていく場所を保つ、このためだけに殲滅したというのは信じがたい。
欲がないのかと思ってしまう。
なお、ソウマが言うとおりに、主に怪物を倒したのはオトハとサユメだが。
これについては不問とする事にした。
実際にオトハもサユメも生きてるし。
危なくなればソウマが圧倒的な力でどうにかしてくれる。
この信頼や信用が2人から無駄な追及をする気分を喪失させた。
「まあ、大量の霊気結晶も手に入れたし」
「でも、それは経験値で使ってしまいましたが」
「なーに、蓄えた分を少しずつ売り出すだけで、食いつないでいけるさ」
「なーんか、しみったれてない?」
「まあまあ、いいからいいから」
年下の同行者からの声を、ソウマは適当にいなして黙殺した。
「それより、今日も頑張って配達にまわろう。
これでまた飯にありつける」
ソウマにとって重要なのはここだった。
今日も食い扶持にありつける。
おそらく明日も。
これが続く状態を保っていられる。
「こんなご時世じゃ、これよりありがたい事はないって」
ささやかな実体験からそう思うのだ。
心の底から。
「まあ、そうですけど」
「でもさあ、もう少し稼ぎを増やしてもいいと思うよ」
オトハとサユメは、同意しつつも賛同しきれないでいる。
ソウマの能力なら、もっとうまくやれるだろうにと。
本人のやる気次第だとも理解しつつ。
「でも兄ちゃんは大きな事をやりたいとかおもわないの?」
「ない。
まったく、これっぽっちも」
「それだけの力があるのにですか?」
「ああ、面倒はごめんだ」
即答で答えるソウマに迷いはない。
「ただ、もし大きな事をするなら。
お前らがもっと強くなってからだな」
そう付け加える、オトハとサユメは黙った。
「そうすりゃ、もっと大きな事が出来るからさ」
だから期待してるという調子に、2人は黙っていった。
そんな3人を乗せて、軽ワゴンを走っていく。
まだ舗装が残ってる道路の、小さな罅を踏みながら。
ここで一区切り。
一度また休む事になるかと。
書き溜めたらまた続きを出していく。
それまではお待ちを。
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おかげで書くことができている。




