66 傲慢さはあるが、誇りはない、だからこうなる
「あと少しだ」
空間を見通して残りの魔族と怪物を探す。
ソウマが空間に表示する地図には、敵を示す印があらわれ、どこにいるかを示す。
それらは最初に比べれば大きく減っていた。
「あと少しですね」
「きつかったー」
オトハとサユメも表示される敵の位置を見て安心していく。
とはいえ、まだ数は多い。
あくまで最初に比べれば少ないというだけだ。
数だけでいえばまだ大量だ。
1万はいるだろう。
それを少ないと思えるほど、2人の感覚は麻痺していた。
今の2人なら簡単に倒せる数ではあるが。
「次で最後だ。
頑張ってくれ」
ねぎらい、いたわりながらソウマは最後の戦いを促す。
本来なら休ませるべきだろう。
連戦によって必ず疲れるからだ。
しかし、2人には必要ない。
霊気結晶を使うことで、霊気を回復出来る。
疲労がたまる事は無い。
オトハとサユメも止まろうとは思ってない。
どうせ戦う事になるなら、今すぐにでも始めたいと思っていた。
時間をかけずに終わらせるために。
今すぐに取りかかれば、今日中に敵を倒せる。
ならばさっさとやってしまおう、そう2人は考えていた。
「じゃ、いくぞ」
「はい」
「うん」
返事を聞くと同時にソウマは転移した。
怪物どもの中心に。
そんなソウマ達の目標となった魔族と怪物どもは悲惨な状態になっていた。
残り1万あまりの軍勢は、うんざりした気持ちと、見えない何かへの恐れを抱いていた。
やる気などかけらも無い。
それでも緩やかに進んでいた。
同時に進軍していた味方はおらず、率いる魔族すらも倒された。
このまま進んでも勝てる見込みはない。
それを察して怪物どもの気持ちはしぼんでいた。
それでも彼らはただただ前に向かっていく。
勝算はない。
不退転の勇気もない。
ただひたすらに惰性と慣性によって怪物は進んでいた。
率いる魔族もだ。
「どうする」
隣にいる三つ目の魔族の声に、牛の角をもつ魔族は何も応えられなかった。
進むか、退くか。
進むにしても何か策はあるのか。
三つ目の魔族が知りたいのはこれらだろう。
しかし角持ちの魔族に策はない。
まさか味方が短時間で壊滅させられるとは思ってもいなかった。
想定もしていない事態である。
対策を考える事も出来なかった。
唯一正解があるとすれば一つ。
逃げる、ただこれだけだ。
しかし角持ちにこれを選ぶ事は出来なかった。
せっかく集めた怪物を使った大規模な侵攻。
これが失敗したとなれば、魔族の中で嘲笑にさらされる。
それを受け入れる事は出来なかった。
これが同じ魔族による妨害ならまだよい。
力のある何者かの妨害によって計画を潰されたなら面目もたつ。
悪いのは邪魔をした者なのだから。
とはいえ、妨害を察知できず、はねのける事が出来なかった事をからかわれるだろうが。
それでもまだ魔族が相手ならば角持ちの魔族はたえられた。
しかし、相手が人間だったら話は別だ。
魔族より圧倒的におとる人間。
それらによって軍勢を壊滅させられたなら。
もしそうなら、角持ちの魔族はこらえる事は出来ない。
彼の傲慢さがゆるさない。
これが誇りや意地であるなら他の道を選べただろう。
つまらぬこだわりなど持たずに、最善を考えていけた。
目の前にいるのは予想外の強敵だと素直に考え、それに合わせた対応を考えていった。
そして、迷わず実行が出来た。
しかし、角持ちの魔族に誇りはない。
この誇りを、責任と言い換えてもよい。
勝利への責任、戦う事の責任。
軍勢への責任。
これらを担っているならば、無駄な損害や損失など避けようとする。
もし多大な損失を受けたなら、残った軍勢の安全のために退く事を選ぶ。
そこにある命への責任があるからだ。
だが角持ちの魔族は違う。
彼がもってるのは傲慢さだ。
わがままと言ってよい。
自分がよければ、自分のためならば動く。
それ以外に何も考えてない。
自分の栄耀栄華だけを考えてる。
だからどれほどの損失が出ようとも、己のなしたいことを成し遂げようとする。
損害や損失など考えずに。
だから角持ちは引き下がらない。
損失を受けても、せめて何かしらの成果を出そうとする。
何でもいいから手に入れてからでないと引き下がれない。
その為に他の誰かが死のうともだ。
そもそも角持ちの魔族は、怪物の命になど頓着してない。
死んでも何も感じない。
駒が減って戦力が減る事を残念に思うだけだ。
そんな角持ちだから無理を通そうとする。
そんな無茶を通すから、最悪の事態に陥る。
進める軍勢の中心にあらわれたソウマ達によって。
「いいぞ、やっちまえ」
「はい!」
「うん!」
怪物の軍勢の上空、そこにとどまったまま、ソウマは指示を出す。
応えたオトハとサユメが攻撃をしかける。
怪物の群れの中心に、大きな穴が生まれた。
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