65 予定外の事に魔族は嘆く、しかしそれは見当違いというもの
「どうなってる…………」
周辺の状況を魔力で感じ取っていた牛の角を持つ魔族は混乱していた。
大量の怪物。
大勢の魔族。
これらによる侵攻計画。
それはここにきて盛大に崩壊していってる。
そもそもとして、最初の段階でしくじっていた。
大量の怪物を人間の住む都市の周囲に配置する。
群馬を囲むように展開する。
ここが既に崩壊していた。
何者かが怪物を倒していった事で。
その時にもおかしいと思ったが。
計画を修正し、展開した怪物を一カ所に集める事で対処しようとした。
包囲殲滅ではなく、一カ所に兵力を集める一点突破に。
そのために一度東京の北、埼玉方面に怪物を集めた。
そして、募った魔族の仲間にこれらを配って指揮を執らせようとした。
なのにだ。
それすらも崩壊している。
大量に集めた怪物の軍団。
それを率いる魔族。
これらが次々に殲滅されていく。
「なぜ…………?」
さすがに疑問が出てくる。
なぜこんな簡単に失敗するのか?
答えはわかってる。
誰かが邪魔をしてるからだ。
(誰が?)
ここで牛の角を持つ魔族の思考が止まる。
普通に考えれば、敵対する誰かになる。
その中で最も対立してるのは人間だ。
だが、人間にそれだけの能力があるか?
即座に角を持つ魔族は否定する。
彼の知る限り、人間にそれだけの力はない。
最も強い人間たちですら、迷宮攻略に難儀している。
一つの迷宮を制圧するのに多大な時間と労力を用いてる。
そんな者達が怪物も迷宮も殲滅していけるわけがない。
だとすると、対立する魔族が暗躍してる事になる。
珍しい事ではない。
魔族でも利害や意見の対立で敵対する事はある。
妨害も珍しくない。
むしろ、常に妨害や牽制をしあってる。
殺し合いの戦争になる事もある。
そんな魔族の誰かが角持ちの魔族の邪魔をしてる可能性はある。
しかし、それは誰なのか?
ここでまた疑問が出てくる。
今のところ、目立って対立してる魔族はいない。
人間に仕掛ける一大攻勢のために、多くの魔族とは停戦状態だ。
手を取り合うわけではないが、手を出してこないという取り決めをつける事ができた。
なので、表だって邪魔をする者はいないはずだった。
もっとも約束ほどあてにならないものはない。
いつどこで誰が裏切るかわからない。
それが魔族である。
何かしらの暗躍はありえる。
それでもだ。
ここまで派手に妨害してくるとは考えにくい。
(誰が、なんで?)
ますますわからなくなる。
妨害するにしても誰がどんな形で動いてるのか?
また、こんな事をして得をするのは誰なのか?
残念ながら思い至る者はいない。
となると、もっと別の理由が考えられる。
利害など関係がなく動くもの。
他人の邪魔をするのが好きなもの。
これらが利益も何もかも無視して、己の好みを満たすために行動している。
あり得る話だ。
利害も関係なく、などという事はない。
楽しいから、ただこれだけ理由になる。
楽しみのために人をなぶり、殺す人間がいるのだ。
怪物などその際たるもの。
いわんや魔族においてをや。
やらない理由はなにもない。
となると候補はかなり多くなる。
ただ、それにしても異常である。
馬鹿が馬鹿をやってるにしても、損害が大きすぎる。
集めた怪物や魔族が殲滅されるなんて事はありえない。
そこまで出来る魔族など数えるほどしかいない。
その数少ない魔族が動いてる?
可能性は低いが、無いとは言い切れない。
だとすると、角持ちの魔族の企ては、遊びのために潰された事になる。
「なんで……」
自分が思い至ったもっとも高い可能性。
角持ちの魔族は頭に血を上らせていく。
「クソが!」
見当違いの可能性に角持ちの魔族はいらだちを起こしていく。
正しい答えが目の前にあらわれるまで、彼は己の思考と想像によってもだえ苦しんでいった。
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