6 収容空間を使った運送稼業
収容空間。
ソウマが手にした超能力の一つだ。
別空間に大量の荷物を貯える事で、運送の手間を大きく省く事ができる。
この為、運送や宅配で非常に重宝される。
探索者の旅団でも同じだ。
収容空間を使える者がいるだけで、運搬に使う人や車両を減らす事ができる。
仮に数百キロ程度を貯える能力があれば、軽トラック1台分を節約出来る。
この能力があるから、旅団はソウマを手放すのを惜しんだ。
知られてる割に使える者が少ないからだ。
なので、どこでも収容空間の使い手は求められる。
この能力を活かして、ソウマは運送業を営もうとしていた。
荷物を収容空間に入れておけば、荷物が破壊される可能性は下がる。
運搬する必要がなければ、身軽に動く事ができる。
そうであるなら、それなりにレベルの高いソウマならば対処のしようもある。
そこそこの強さの怪物ならば、ソウマ一人でも十分撃退出来る。
欠点もある。
ソウマ自身が死ねば、荷物も虚空に消える事になってしまう。
だが、怪物に襲われて荷物が散逸する事は珍しくもない。
そうなれば結局は荷物は失われる。
これを考えれば、収容空間を使った運送の損失は、一般的な荷運びと変わらない。
損失がないのが最善なのも含めて。
「だから、この能力を使って運送屋をやろうと思ってね」
その説明にオトハも納得する。
この能力なら油槽にかかる様々な経費や負担を軽減出来る。
安くても利益が出る。
小規模な注文でどうしても安い値段しか提示出来ない者達にも、必要なものを届けられる。
「そういう所も多いから」
事情を知るソウマは、だから自分の能力を活用する事にした。
「佐々波にも頑張ってもらうからな」
「──はい」
一拍遅れて頷いたオトハは、これから始まる仕事への覚悟を決めていく。
怪物のいる外への。
そして、ソウマがやろうとしてる仕事の意義を。
しっかりと胸に刻もうとした。
「でも、その前に」
「…………?」
「佐々波の能力を確認させてくれ。
これから時間、大丈夫か?」
こくり、とオトハは頷く。
どこかの時点で知ってもらわねばならない事だ。
ならば、早いほうが良い。
「それじゃ、訓練所の方に行こう」
「はい……」
幾分緊張した声でオトハは従った。
それから二人は、互いの能力を確認し合っていく。
何が出来て、どの程度の効果があるのか。
何が出来ないのか。
特にオトハの超能力である【音響】。
これの使い方については出来るだけの事を調べていった。
「なるほど」
あらかた調べ終わったところでソウマは満足気な表情を浮かべた。
「かなり使えるな」
「……え?」
思わぬ高評価にオトハは呆気にとられた。