43 主の攻略、迷宮の崩壊
ボスが倒された事で迷宮も消滅していく。
悪意を吸収し、悪意を生産していた中心。
その意思によって作られていた迷宮も、主の消滅と共に消えていく。
人面樹が倒された事で、草原の姿をした迷宮も消える。
迷宮の形を作っていた悪意が消散していく。
その悪意は始まりの起点である人面樹へと向かっていく。
迷宮もいってみれば主という怪物の体の一部だ。
巨大な空間は、いうなれば怪物の体内といえようか。
中心となる怪物が死ねば、そんな体を作ってる悪意も大本に戻っていく。
その悪意の流れを、ソウマとオトハとサユメは感じていく。
ソウマとサユメにとっては既に経験してきた事だ。
しかし、オトハは初めてになる。
「すごい……」
端的な言葉がこぼれる。
そうとしか言えなかった。
目に見えないはずの悪意の流れ。
それを肌で感じる。
流れる勢いを心のどこかで感じる。
それと同時に迷宮の姿が薄くなっていく。
草原が、生い茂っていた木々が、遠くに見えた山脈が。
これらが透明になっていく。
迷宮が消えてるのだ。
そして全てが消えた時。
ソウマ達は迷宮の入り口があった場所に立っていた。
迷宮は現実とは別の空間にあるもの。
だからなのか、その中は現実を無視した広大な空間となっている。
同時に、現実での居場所や位置は変わらない。
迷宮の中をどれだけ移動をしようとも。
そんな迷宮が消えれば、中にいた者は元の場所に戻る。
現実において迷宮があった場所に。
その入り口に。
崩壊に巻きこまれて迷宮とともに消滅するなんて事はない。
その中でしか存在できないものを除いて。
こうしてソウマ達は迷宮の消滅と共に元の世界に戻ってきた。
その足下に、莫大な霊気を貯えた霊気結晶がおかれている。
それが迷宮の主を倒した証だ。
強力な迷宮の主と、迷宮を形作っていた霊気が凝縮されている。
「じゃあ、これを使ってレベルを上げてくれ」
当たり前のようにソウマは告げる。
その言葉に、
「ああ、うん……って、えええええ!」
「──── !!!!」
サユメもオトハも驚く。
「いや、だって、これ迷宮の結晶だよ?!
売ればすんごい金になるよ!」
「いや、持ち帰れないだろ」
もっともなサユメの言葉に、ソウマは冷静に返す。
「これを持って行ってみろ。
俺たちが迷宮を攻略したってバレるぞ。
そうなったら色々面倒だ」
「いやまあ、それは……確かにそうかも……だけど」
「だから、これはここで使っちまうしかないんだよ」
ソウマとしては、大騒ぎが起こる事を避けたい。
ならば、この場で強力な霊気結晶を使いきる。
その方がマシというもの。
「それに、金なら、ここで倒した怪物のがあるし。
これを、野良の怪物を倒して手に入れたって事にすればいいからさ」
金銭の確保も忘れてはいない。
オトハとサユメに渡さなかった分もある。
その結晶を売り払えば、何万円かにはなる。
「だから、気にせず経験値にしちまえ。
お前らが強くなった方が、俺が得をする」
「そういう事なら……でも、いいのかなあ……」
「…………」
釈然としないながらも、サユメとオトハ提案を受け入れる。
レベルが上がる事は悪いものではない。
ただ、霊気結晶は1つだけ。
どちらが使うかが悩ましい。
普通ならそうなる。
しかし、ソウマはこの問題も解決する。
「どっちが使ってもいいよ。
まだこれから取りに行くんだから」
「……え?」
「…………?」
サユメとオトハが目を見開く。
「あの、これからって?」
「だから、迷宮に行くんだよ、他の所にも」
「…………?!」
言われて仰天する2人。
そんな彼女らをつれて、ソウマは転移を使った。
次の迷宮のある場所へ。
「さ、やるぞ」
あらたまてやってきた迷宮。
今度は、倒れた木々を集めて泥で固めた建物の形をしていた。
動物の巣なのかもしれない。
そんな迷宮の入り口へとソウマは2人を促す。
そんなソウマを呆然と、そしてあきれ顔になって見つめるオトハとサユメ。
「…………いきましょう」
「うん、そうだね」
珍しくオトハの方から促して、2人はソウマの後に続いた。
3章はここで終わり
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