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崩壊世界で独立開業 ~怪物あふれる地球になったけど、個人事業主として地道に稼ぎます…………なお、かわいい女の子がついてきたのは予定外~  作者: よぎそーと
1章 独立開業、怪物業者

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4 一人でやっていこうと思ったら新人をおしつけられるのは熟練者の義務なのだろうか

「…………」

 オトハと名乗った少女を見て無言になる。

 彼女に思うところがあるわけではない。

 組合からの要望で引き合わされた新人なだけだから。

 それに、見た目だけならお仲間にしたいと思わせるものがある。



 ととのった綺麗系の顔立ち。

 細身で整った体型。

 長い黒髪と相まって、全体の印象は人形のようだった。

 表情が乏しいように見えるが、初対面の人間を前に緊張してるならばこれは当然で仕方ない。

 そんな15歳の美少女がやってきたのだ。

 諸手をあげて迎え入れたいという気持ちはある。



(ただなあ……)

 ソウマが欲しいのは外見ではない。

 才能や能力だ。

 探索者という、怪物と戦い迷宮に挑む危険な仕事をこなせる力があるのかどうか。

 重要なのはここである。

 それで言うと、佐々ささなみオトハは少々厳しいものがある。



【音響】

 オトハの能力である

 その名の通り音を操る能力だ。

 便利ではあるのだが殺傷力は無い。

 探索者としてやっていくには心許ない。



 大災害以来、こういった超能力に目覚める者は多い。

 しかし、出来ることは様々で、中にはこういった使い勝手の悪いものもある。

 探索者達も好んでこういった超能力の持ち主を抱えようとはしない。

 戦闘に向かない超能力だと、どうしても足手まといになりがちだからだ。



 なので、探索者に向かない能力の場合、一般的な仕事に従事する方が向いている。

 なのだが、昨今の世相を考えるとそれも難しい。

 比較的安全な仕事にはそれこそ人が殺到する。

 あぶれる者が当然出てくる。

 そういった者は探索者になるしかない。

 それはソウマもわかってるのだが……。



「なんで俺のところに?」

 ソウマだって今日独立したばかりで余裕はない。

 それなのにわざわざオトハのような新人を連れてくる理由が分からない。

 引き合わせてきた組合職員に尋ねると、

「いやあ…………渡澄さんならなんとかしてくれるんじゃないかと」

 申し訳なさそうに言う職員に、ソウマはため息を吐いた。



 確かにソウマは、使い勝手の悪そうな能力を上手く使う道を探してきた。

 ソウマ自身の超能力が使い勝手の悪いものだった為である。

 仕方ないので、己の能力で何が出来るのかをとにかく考えた。

 少しでも上手くやっていくために。

 おかげで、旅団ではそれなりに重宝された。



 これを応用して他の者達の能力の使い道も考えてやっていた。

 この指導のおかげで超能力を効果的に使って活躍する者もいた。

 サユメもその一人だった。



【幻影】という、幻を出現させるだけの能力を持っていたのが弟分の女子である。

 これもまた殺傷能力に乏しい超能力だ。

 しかしこれを駆使して、今では一級品の戦闘力を発揮してる。

 ソウマを尾行する時に使った幻で己を覆って姿を隠すというのもその一つだ。



「そんな渡澄さんなら彼女も何とか出来るんじゃないかと」

「だったら旅団に頼めよ……」

 言いたいことはわかるが、それはどうなのかと思ってしまう。



 これが旅団という大所帯にいた時ならまだ何とかなる。

 他の者達の協力を仰げるからだ。

 その中で、オトハの能力の使い道を探せばいい。

 しかし、今は独立して単独で仕事をしようとしてるのだ。

 他人の面倒を見てる余裕はない。

 無いのだが。



「……まあ、いいか」

 放っておく事も出来ず、オトハを預かる事にする。

 ここで放り出すのも気が引ける。

 それに、どんな能力でも使い方次第なのは、これまでの経験からわかってる。



 懐具合や財政事情も考えると、ここで引き受けるのも考え物なのだが。

 行き場のない人間を見捨てるわけにもいかない。

 先々の事を考えるとなおさらだ。

 第一、この手の無茶ぶりは今に始まった事でもない。



(サユメには申し訳ないけど……)

 ソウマについていこうとした弟分を旅団に帰したというのに。

 その直後に別の新人を引き受けるのはどうなのかと思った。

 しかし、放り出すわけにもいかない。



「男と一緒でもかまわないっていう覚悟があるならだけど」

「はい、かまいません」

 肯くオトハに躊躇いはなかった。

「よろしくお願いします」

「おう」

 これで話は決まった。


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