36 門をくぐるとそこは迷宮だった
「あれだ」
山の中を歩き、1泊して。
2日目の昼、それが見えた。
「迷宮だ」
迷宮。
怪物の住処である。
悪意が溜まって出来た異空間。
その入り口がそこにある。
形は様々だ。
文字通りに迷宮、迷路状になってる構造物の時もある。
だが、大半はそうではない造りをしている。
石造りの神殿だとか、巨大な都市といった人工物だったり。
あるいは広大な草原だとか、草木生い茂る森林だとか。
水が流れる渓谷といった自然環境だったりもする。
とにかく姿形は様々だ。
ただ、共通してるのは、悪意によって生まれた場所である事。
現実とは別の異空間が作られる事。
ソウマの使う収容空間が近いのかもしれない。
こことは別の場所が存在している。
そんな場所を迷宮と呼ぶのは、神話や伝承、ゲームなどの創作物の影響だ。
怪物の蔓延る場所をダンジョンと呼ぶ。
日本では迷宮と呼ばれる事が多いだろう。
そんなこれまでの言葉を使ってるだけだ。
実態を正確にあらわしてるわけではない。
そんな迷宮に入り口も様々。
今回は岩を積み上げた門となっている。
一見すると、くぐり抜ける部分があるだけの、ただの巨大な積み木だ。
しかし、そこをくぐれば怪物蔓延る異空間となる。
「じゃあ、いくぞ」
そんな門をソウマはくぐり抜けていく。
サユメも特に気にする事もなく続く。
これが初めてのオトハはさすがに緊張しているが。
その場に残ってるわけにもいかないので、2人の後を追った。
くぐった先は、平野だった。
そこを囲む山の連なりが遠くに見える。
ところどころに生い茂った木々が視界を遮るが、基本的に見晴らしは良い。
そこに怪物がたむろしている。
大半が小鬼だ。
そこに少数の鬼が混じっていて。
更に獣頭の鬼である獣人も混じってる。
それらが侵入してきたソウマ達に気づき、一斉に襲ってくる。
「──── !」
とっさにオトハは轟音を放っていく。
最も大勢いる小鬼の大群の耳に、強烈な音が突き刺さる。
これで先頭を走っていた大半が倒れていった。
そして、後ろから来る仲間に踏み潰されていく。
仲間であっても思いやったりはしない怪物仕草である。
サユメも負けてはいない。
倒れてない敵の中に閃光を発生させる。
瞬間的にあらわれたいくつもの光が、怪物の目を焼いていく。
一瞬だけではあるが、視力を失った怪物が右往左往していく。
更にそこに図形を発生させる。
黒い四角形の幻があらわれ、衝立のように怪物の視界を塞いでいく。
これが幾つもあらわれる。
視界を遮られた怪物は、進むべき方向が分からなくなる。
2人とも、自分の超能力で出来る最低限の事しかしていない。
音を放つのも、光や図形をあらわすのもだ。
それだけで敵の動きを止めた。
違いがあるとすれば、その規模や範囲だろう。
オトハは比較的近くの敵にしか轟音をぶつけられない。
しかし、サユメは目の前の多くの敵を幻影にとらえてる。
レベルの差があらわれてくる。
それでも、2人はよく動くことが出来ている。
「いいぞ、2人とも」
瞬時に行動をした2人に、そして敵を止めた事を素直に賞賛していく。
あとはとどめを刺すだけだ。
ここでソウマは己の力を見せる事にした。
「あとは俺がやる」
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