3 拾った仕事と求められる要望
「さてと」
サユメを帰し、あらためてこれからに向き直る。
ついていきたいという思いはありがたい。
だが、ソウマにまだ余裕がない。
旅団から離れ、本当に大変になるのはこれからだ。
ソウマが持ってる能力を使っても、簡単にはいかない。
それでもこれからやろうとしてる事業に勝算はある。
宅配便、あるいは運送業。
ソウマがやろうとしてるこの仕事、今ではかなりの危険なものになってる。
大都市内ならともかく、少しでも野外に出るとなると、命の保証はない。
あふれる怪物が、そこかしこにいるからだ。
おおよそ10年前の大災害からこうなってる。
それから色々な事が変わった。
だからこそ、運び屋の必要性が高まってる。
ソウマはそこに注目して独立をもくろんだ。
必要不可欠だからという事情も考慮して。
危険も十分承知している。
だが、怪物相手に踏んできた場数がある。
これを信じて独立する事にした。
今の自分なら問題はないだろうと。
そう考えながら探索者組合に向かう。
旅団を辞めた直後であるが、遊んでる暇も休む時間もない。
これらが無駄とはいわないが、今は仕事を優先せねばならない。
まずは運ぶべき荷物があるかどうか。
これを確かめねばならない。
今回だけではない、これからずっとしなければならない作業になる。
独立して1人でやっていかねばならないのだから。
「貧乏暇なしだよなあ」
これから開業するのだから、当然ではあるが。
ならば、卸売屋や問屋などに直接出向いても良いのだが。
ここは敢えて探索者組合に向かった。
商品や製品を販売元から直接受け取れば、間に入る探索者組合を仲介する料金が消える。
しかし、直接販売元に関わるだけ人脈も伝手はほとんど無い。
確かに探索者として数年の活動実績はある。
だが、これが製品や商品を直接扱う信用につながってるわけではない。
なので、今はよく利用した探索者組合から仕事をもらうことにした。
ここならば探索者相手の仕事を一括して受ける事が出来るからだ。
その中には、危険な運送を含めた様々な仕事がある。
探索者のソウマならここから仕事を受けやすい。
いずれは業者との直接の接点をもっていくつもりでいる。
しかし、それはこれからの働き次第。
まずは信用作りをしていかねばならない。
実績のない人間に仕事をまわすほど、業者は暢気ではない。
そんなソウマの目論見通り、探索者組合には様々な運送・配達の依頼が存在している。
その中でも、特に放置されがちな依頼を拾っていく。
いずれも小規模な運送業務だ。
大手が扱うには小さすぎて利益にならないものだ。
これらをソウマはありがたく手に取っていく。
個人運営の宅配業者ならば、十分に稼げるからだ。
そして、そんなソウマにはもう一つの要望が告げられた。
他に頼めそうな人間がいないと言われて。
そうして引き合わされたのは、新人探索者だった。
それも、女子である。
「佐々波オトハです……」
硬い表情と声で頭を下げた少女を見て、ソウマは呆れるしかなかった。
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