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崩壊世界で独立開業 ~怪物あふれる地球になったけど、個人事業主として地道に稼ぎます…………なお、かわいい女の子がついてきたのは予定外~  作者: よぎそーと
2章 業務拡大中

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27 他より余裕があっても、就職難を避ける事は出来なかったよ

「それで、そっちはどうなの?」

 自分の話を終えたサユメは尋ねる。

 オトハはどうだったのかと。

「私は……」

 これまでを思い出しながらオトハも語っていく。



 オトハも襲撃を受けたが、比較的安定はしていた。

 避難所生活は同じだが、生き残りは少なかった。

 その分、備蓄だけでかなりの期間を食いつなぐ事ができた。

 もっとも、それは被害者が大勢いたという事でもあるが。



 生き残る事ができたオトハは、比較的安定した生活を送る事ができた。

 早いうちに都市に入り、周りの大人が仕事を見つける事ができたのが大きかった。

 その分、余裕も出てくる。

 その余裕でオトハ達子供は学校などに通う機会を得る事ができた。



 恵まれてるといえばその通りだろう。

 だが、オトハにも不安はあった。

 己の持つ超能力である。



【音響】という能力は、便利であるが必須という程ではない。

 声を伝えるという意味では、通信に使えそうではある。

 電話などの機器の生産が難しくなってるので、代わりとなるものがあるのはありがたい。

 しかし、それとても必要かというとそうでもない。



 全てはオトハを経由する必要がある。

 何かを伝えたいならオトハの所にいかねばならない。

 そこで用件を伝えて、相手に送ってもらう。

 この手間がかかる。

 しかも、送れる距離は、数百メートルくらい。

 レベルが上がればもっと広がるだろうが、それまではこの距離が限界となる。

 これだと長距離通信には使えない。



 となると、就職就業には超能力以外の部分が求められる。

 本人がどれだけの知識や技術を持ってるのか。

 性格や人格に問題はないのか。

 働き先に伝手や人脈はあるのか。

 こういった事が求められる。



 残念ながらこれらでオトハは不利だった。

 能力や性格に難があるわけではない。

 むしろ一般的な水準よりは高い。

 なのだが、就職したいところへの伝手がない。



 オトハの周りの人間も働いてはいるが、ほとんどが下っ端だ。

 一般的な従業員である。

 その上の管理職などと特別な縁故があるわけではない。

 この点で不利になってしまった。



 同じ水準の人間を雇うなら、なじみの人間を優先する。

 採用する側としては、そうした人間が数多くいる。



 能力や人格の面でもだ。

 オトハが飛び抜けて優秀だったら違うのだろうが、同じ水準の人間もそれなりにいる。

 ならば、あとは縁のある人間を選んでいく。

 それだけで企業の採用枠は満たされてしまう。



「どうにかしてあげたいけど……」

 採用する側も無念には思ってる。

 出来るなら多くの人間を雇い入れたい。

 事業の強化のためにも。

 また、誰もが食い扶持を求めてるのは分かってる。

 そうした者達に機会だけでもふりわけたい。

 だが、その枠や余力が企業側にもないのだ。



 となれば残るのは探索者となってしまう。

 その他大勢と同じように。



 ただ、そうなるとオトハの超能力が問題になる。

 あれば便利だろうが、使い勝手が悪い。

 殺傷能力がないのは仕方ないとしてもだ。

 それ以外の能力なども、普通よりは優れてるという程度。

 これだとさすがに採用するのも難しい。



 もっとも、探索者の旅団もこのあたりはわきまえてる。

 誰もが便利な超能力を持ってるわけではない。

 平均に満たない能力を持ってる者だっている。

 そういった者も抱えていくしかないのは分かってる。



 ただ、大手の優れた旅団は、便利な超能力の持ち主を優先する。

 そこに入れなかった者を、大手に満たない旅団が受け入れていく。

 当然、そういった所の質や規模は劣る。

 探索効率が悪いところが多い。



 オトハにはそういった大手ではない旅団しかなかった。

 これは仕方ないと受け入れてはいたが。

 ただ、探索者としてやっていくにしもて厳しいものになると覚悟はしてた。



 ただ、運が良かったのだろう。

 探索者として登録し、入れる旅団を探していた時だった。

「それなら」と組合の職員がソウマを紹介してくれた。

「あいつなら、あんたの能力も活かしてくれるだろうさ」

 こうしてソウマに引き合わされる事となる。



「なるほどねー」

 話を聞いたサユメは、腕を組んでうんうんと肯いてる。

「みんな大変だったんだね」

「そうでも……」

 サユメの言葉に首を横に振る。



 子供の頃から働かねばならなかったサユメである。

 それに比べれば、オトハはまだ恵まれていた。

 形骸化した義務教育期間の間は勉学などに励めていたのだから。

 今のご時世だと、こういう者の方が少数派だ。

 なので、大変かというとそうとは言えない。



「でも、兄ちゃんに会えたのは運がいいよ。

 あれでお人好しだから」

「ですね」

「渋ってても、最後は『しょうがねえ』で受け入れちゃうし」

「確かに」

 初めて会った時のソウマの様子は、サユメの言った通りだった。



 そういう人に巡り会えたのは運が良いのだろう。

 おかげでオトハは自分の持ってる【音響】の使い方を工夫する事が出来た。

 戦闘でも用いる事が出来る。

 これはオトハにはありがたい事だった。



 おまけに、手に入れた霊気結晶をレベル上げに使わせてくれる。

 おかげでサユメのレベルはかなり早く上がってる。

 ここまで気を回してもらえるのは本当にありがたい。

 それが怪物退治に必要だからであってもだ。

 売れば銭になるのにだ。



 儲けを後回しにして、経験値として霊気結晶をくれる。

 そこまで気を回してくれるのには助かっている。

 自然と頑張らないとと思えてくる。



「じゃあ、これから頑張っていこう。

 一緒に」

「はい、お願いします」

 申し出をありがたく受け取り、オトハも頭を下げる。

 これから命を預け合うのだ。



 身の上話だけではない。

 自分たちのレベルも伝えていく。



 サユメはレベル42。

 オトハはレベル12

 一般的に、レベル5が成人の中央値。

 仕事の熟練者でレベル10と言われる。

 レベル20ともなれば達人や名人とされる。

 となれば、サユメは達人を超えた領域。

 オトハも既に熟練者の水準にある。



「すごい、もうこんなにレベルを上げたんだ」

「渡澄さんのおかげです。

 でも、祝館さんだって、こんな高レベル」

「しごかれたからねー、兄ちゃんには」

 ナハハと笑ってサユメは振り返る。



「ところで」

「はい」

「もう一つ聞いておきたいんだけど」

「はい」

「兄ちゃんをどう思う?」

「…………」

 目を見開いたオトハは一瞬思考が停止して。

 それから答えを求めて自問自答を始めた。



 無言で考え込むオトハ。

 そんな彼女を、サユメはニヤニヤと底意地の悪い笑みを浮かべて見つめていった。


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