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崩壊世界で独立開業 ~怪物あふれる地球になったけど、個人事業主として地道に稼ぎます…………なお、かわいい女の子がついてきたのは予定外~  作者: よぎそーと
2章 業務拡大中

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26 女の子同士の秘密のお話というには世知辛くあります

 ソウマが夜中に怪物退治にいそしんでる頃。

 食事と風呂を終えたサユメとオトハは、自己紹介がてらにこれまでの事を話していた。

 初対面同士、まだまだ知らない事の方が多い。

 まずはその穴を埋めていこうとしていた。



「兄ちゃんとは5年くらいかな?

 知り合ったのは」

 話しを切り出したのはサユメの方だった。

 彼女がどうして探索者になったのか。

 ソウマとどのように付き合ってきたのかを語っていく。



「ボクの居たところはさ、怪物の被害はあんまり無かったんだ。

 でも、だから避難所の備蓄とかがカツカツでさ」

 明るい調子でサユメはこれまでを語っていく。

 なのだが、口調とは裏腹に、内容はこの時代の厳しさに彩られていた。



「人が多いから、どうしても食料とかが減るのが早くてね。

 それでも、田んぼや畑が回復してからは少しは持ち直したんだ。

 けど、それでもやっぱり足りなくて」

 その頃はどこもこのような状況だった。



 怪物の攻撃をしのぎつつ、食料や工業品などの生産を行わねばならない。

 当然、栽培も生産もおちおち出来やしない。

 当然ながら、収穫も完成品も十分な数にはならない。



 それでも生きていくには怪物と戦わねばならない。

 安全を確保し、様々な産物を作らねばならない。

 失敗すれば、食い物も生活物資も手に入らない。

 軍や警察、自警団に探索者が常にどこかで戦っていた。



「だから、ボクも探索者になって頑張るかって思ってたんだ」

 他に道がない時期である。

 安全な仕事はよほど優秀か、コネや人脈や伝手がなければ就業出来ない。

 残るのは危険な仕事か、厳しい労働条件のものになる。



 平凡な避難民だったサユメにこういう有利な点は何もない。

 食い扶持を稼ぐとしたら探索者しか道がなかった。

 それでも戦闘力のある超能力が使えれば良かったのだが。

 残念ながら幻を操るだけ。

 それも最初は、空中に白黒の丸や四角を描く程度でしかなかった。



 こんな超能力だから探索者の旅団も拾ってくれない。

 まして女子だから体力でも不利。

 どうしても肉体労働が主になる探索者では敬遠される。

 おまけに当時はまだ10歳にもならない子供だったのだ。

 下働きの雑用であっても採用を考えてしまうのが普通だ。



「でも、兄ちゃんが拾ってくれてね。

 しかも戦い方とかも考えてくれて」

 僥倖というしかなかった。

 ろくに戦闘力もない、そもそも労働力としてもあやしい。

 そんな子供をソウマが所属していた旅団は採用した。

 それもソウマの進言だったという。



 採用されたのはサユメだけではない。

 同じ避難所にいた他の者達も一緒だった。

 仕事にありつけなかった大人も、まだ幼い子供も。

 働く意欲がある者をソウマは採用するよう旅団に訴えていた。



 その甲斐あってか、サユメを含めた大勢が採用された。

 まだ発足したばかりだった旅団にとって大きな負担になっただろう。

 それでもソウマは人を入れる事を強く迫った。



「それからは大変だったけどね」

 採用されても楽になるわけではない。

 怪物との戦いが待っている。

 男女の別なく、戦える者は戦場に立つ事になった。

 サユメも例外ではない。



【幻影】という殺傷力の無い能力。

 だが、目くらましには十分。

 この能力を使い、サユメは戦闘補助として前線に立つ事になった。

 不安はあったが、選択肢があるわけもない。

 ただ、ソウマが提案したやり方を使い、戦闘に臨む事になった。



 結果は上々だった。

 一瞬でも視界が遮られれば、動きが止まる。

 怪物でもこれは同じ。

 他の感覚器官が発達してればともかく、多くの怪物は人間と同じように目を使う。

 幻影が視線を遮れば、動きも止まる。

 隙が出来る。



 この僅かな瞬間が生死を分ける。

 戦いの勝敗を決める。

 サユメはそんなきっかけを作る貴重な人材となっていった。



 レベルが上がるごとにこの効果は大きくなっていった。

 作り出す事ができる幻影の大きさや形を自由に変化させられる。

 怪物の顔にくっつけて、視界を遮り続ける事ができる。

 更には光を放って目をくらませるようになり。

 闇をまとわりつかせ、前後左右の感覚を無くす事も。



 いずれも殺傷力は無い。

 しかし、使えば戦闘を一方的なものにしてしまう。

 そんな能力をサユメは繰り出すようになった。



 極めつけは、自分の姿を隠せるようになった事。

 レベルの上昇による身体能力の向上も加えると、サユメは姿無き襲撃者となった。

 誰にも見つからずに接近し、不意打ちで相手の急所を突き刺す。

 こんな事ができるようになった。



 姿を隠すだけなので、足音などはどうしても残る。

 また、嗅覚の鋭いものや、コウモリのように超音波で位置を把握するものには効果が薄い。

 それでも、姿を消せるという圧倒的な優位性でサユメは強力な戦闘員となった。



「これも【幻影】の使い方を考えてくれた兄ちゃんのおかげなんだ」

 サユメを拾って、サユメの能力を開花させた。

 そう考えると確かにソウマは功労者である。



「だから旅団を辞めるって聞いた時にはすごかったよ。

 みんなで引き留めたから」

 それはそうだろう。

 使い勝手の悪い能力の特性を見抜き、適切な使い方を提案していったのだ。

 そんな才能のある人間を手放せるわけがない。



「結局駄目だったけど」

 この声には嘘も冗談も見当たらない。

 心の底から残念がってるのがうかがえる。

「だから、無理矢理ついてきたってわけ」

 これがサユメがソウマを追いかけた理由。

 かつての恩と、それ故の思慕。

 この気持ちがサユメを動かした。

「まさかこんな美人さんを連れてるとは思わなかったけど」

 そう言って、ニヤニヤとオトハを見つめる。

 言われてオトハはうつむいてしまった。



 だが、オトハの存在もサユメを突き動かした原動力である。

 隣に既に別の誰かがいた。

 このままでは自分の居場所がなくなる。

 そんな気がしたサユメは、旅団を無理矢理抜け出し、ソウマの所に押しかけた。



(旅団長には申し訳ないけど)

 でも、ソウマの隣を失いたくなかった。

 かつて自分をすくい上げてくれた。

 能力を開花させてくれた。

 そんな彼の隣にずっといたい。



 なんだかんだで居心地のいい位置を。

 これからも確保しておきたい。



(からかうと面白いし)

 そう胸の中でうそぶきながら。

 なお、その直後にくらうソウマからの制裁については考えないようにしている。

(兄ちゃん、割と本気でやってくるからなあ)

 死なない程度に容赦なく。

 それでいてもたらされる確かな激痛。

 その絶妙な塩梅には舌を巻く。



「それで」

 話しを終えたサユメは尋ねる。

「そっちはどうだったの?

 なんでまた探索者に?」

 この問いかけに、オトハは自分のこれまでを思い出してから口を開いていった。


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