2 後輩男子系な女子をひきはなし
「あのな、サユメ」
後をついてきた女子に、ソウマはお小言をくれていく。
「もう辞めた人間についてきてどうすんだ。
お前も仕事があるだろ」
「そりゃそうだけどさ」
生意気にも反発する小娘に、ソウマは呆れる。
祝館サユメというこの女子は、ソウマと同じ旅団にいた娘だ。
元は大災害による孤児で、ソウマ達が引き取った大勢の子供達の一人である。
なのでソウマとも顔なじみ。
なんなら、サユメの指導を行ったのもソウマだ。
このため、妙にソウマになついてる節がある。
今年で14歳になる女子だというのに。
もっとも、しゃべり方も行動も男子っぽいサユメである。
格好も素っ気ない短パンやTシャツという、動きやすさを重視したものがほとんど。
背丈の低さもあいまって、わんぱく小僧という言葉がふさわしい。
女子というよりは、年下男子の後輩といった調子である。
とはいえ。
盛り上がってきた胸や、童顔系ながらかわいらしい顔立ち。
意識してるのか、長くのばしてポニーテールにしてる髪。
これらが男子と見誤るのを妨げてもいる。
(懐いてるんだろうなあ……)
それがこういう女の子というのは悪い気はしない。
何かと面倒を見てきたかいがあるというもの。
サユメを育成してきたソウマとしては感慨深いものがある。
それも、生き残るために、戦力を確保するためにではあるが。
それでもソウマとて愛着はあり、別れがたいとは思ってる。
サユメからすればなおのこと。
故に、ソウマの退社に反対した一人であり。
それがかなわぬと、
「なら、ボクもついてく!」
と宣言してつきまといもした。
それすらソウマになだめられて、渋々諦めたが。
それで完全に諦めるわけもなく、旅団を辞めたソウマをこうして尾行してきた。
そんな生意気な弟分を再びさとしていく。
「いや、お前がついてきてどうすんだよ。
こっちは自分の食い扶持を確保できるかどうかもあやしいんだぞ」
「でも、ソウマ兄ちゃんならどうにかするでしょ」
心配などこれっぽっちもする様子もないサユメ。
「兄ちゃんがやるの、宅配なんでしょ。
だったら食いっぱぐれないって」
「まあな」
それについてはソウマも勝算を考えてる。
だからこそ独立を選んだのだから。
「けど、必ず上手くいくってわけじゃないんだ。
そんな事に、他の奴をまきこめねえよ」
「相変わらず心配性で慎重だな」
「おかげで生き残ってこれたんだ」
それはソウマの自負である。
勇気や根性は示さない。
だけど、慎重で無理をしない姿勢。
これを貫く事で生き残ってきた。
それを崩すつもりはなかった。
「だから、お前をつれていけない。
実際、どれくらいやれるか分からないからな」
「そっか。
じゃあ、上手くいったらボクもつれてってくれるよね?」
「まあ、そうなったらな」
当てにならない空手形をきる。
それでサユメが諦めて旅団に戻ってくれるならと思いつつ。
嘘というわけではない。
稼ぎが安定してきたら仲間を募るつもりでいる。
出来るだけ気心の知れた相手を。
サユメがその一人になってくれたらとは思う。
なので候補の一人には入れている。
口に出して伝えたりはしてないが。
「だから、旅団に帰れ。
生き残っていたら、俺と組もう」
「うーん、分かったよ」
不承不承ながらもサユメは肯いた。
「それからな、姿を消してついてきてもすぐに分かるからな」
念のために釘を刺す。
幻影を操るサユメは透明になって姿を隠す事ができる。
旅団事務所からこの能力を使ってソウマを尾行していた。
「だいたい、ついてきてどうするつもりだったんだ?」
「弱みを握って言うことをきかそうと────」
「さっさと帰れ」
少しばかり語気を強めて言い聞かせた。
「むー」
不機嫌そうな顔をしながらも、サユメは言われた通りに旅団へと帰っていった。
強引についていっても無駄なのはサユメ自身もわかってる。
「まあ、また会えるさ」
小さくその背中に声をかける。
伝わる事はなかったが。
気に入ってくれたら、ブックマークと、「いいね」を




