18 たまたま再会したかつての同僚にからかわれるというお約束展開であります、分かれてまだ2日ですが
「いきなり何を言い出すんだ、サユメ?」
販売所を巡ってる途中で再会した弟分かつ妹分であるサユメ。
彼女はソウマに駆け寄るなりとんでもない事を言い出した。
「だって、女っ気のない兄ちゃんが女を連れてんだぞ。
これは事件だよ」
確信を込めた言葉に、ソウマは頭が重くなる。
「いやー、でも、そっかー。
兄ちゃんが女を連れ回すようになったのかー」
うんうん、と頷きながら、サユメは感動と関心をしたように呟く。
「いったいどうやって騙したんだ?
兄ちゃんに女を口説くナンパな能力なんてないはずなのに」
「あのな」
「しかも──── !」
オトハを向いて更に続ける。
「うーん」
人差し指と親指をL字にしてあてながらサユメは観察する。
オトハの頭からつま先まで。
それはもう、なめるよう に、ねぶるように。
「顔、きれい」
顔面偏差値の高さを確認。
「背、まあまあ」
150センチもないサユメよりは明らかに高い。
「体型、すらっと」
服装と、半袖と膝丈の短パンからのびる手足を観察。
「肌、白い」
同じく、服に隠れてない顔や首筋、手足を目視。
「でも、胸もある。
ボクより……?」
服の上からの目測で大きさを推測。
次いで、自分の胸を見下ろす。
少しばかり眉根を寄せて悲しげな顔になる。
そんなサユメに言いたいことも出て来るというもの。
「お前は何をしてる」
ソウマの言葉に呆れがにじみ、続いてため息が漏れた。
「なんでお前は、心にエロガキを飼ってるんだよ」
「ドスケベなヒヒ爺イかもしれないよ」
「なんでそんな言葉知ってんだ、お前は」
「愛する我が旅団の、むさ苦しい仲間から」
「……お前の教育環境を用意できなかったのは、俺の最大のミスだな」
かつての自分のうっかり具合をソウマは嘆いた。
「いや、でもさ」
渋い顔をするソウマと対照的に、こちらは明るく楽しげな顔をするサユメ。
彼女は嬉しそうに感想を告げる。
「良かったじゃん、こんな美人さんをつれて。
もしかしなくて、デートの途中だった?」
「そんなわけないだろ」
そんな良い物ならどれだけ良いか、そう思いつつもソウマは否定する。
「彼女は新人だ。
一緒に仕事をして、それからここの案内をしてたんだ」
「なんだ、デートじゃん」
「あのな」
「…………」
呆れるソウマの隣で、オトハがうつむき、顔を赤くしていった。
「でも、そうかー。
兄ちゃんにもついに春が。
長かったよねー」
「何がだ?」
「でも、とうとう兄ちゃんも男になるのかー」
「おい」
「良かったな兄ちゃん。
とうとうドーテー卒業だよ」
「いいから、黙れ」
言いながらソウマはサユメの顔面をわしづかみにした。
アイアンクロー。
握力が試される必殺技である。
「痛い痛い痛い痛い痛いいいいいい!」
「痛くしてやってんだよ」
「やめて、本当に痛いいいいいい!」
「そうか、それは良かった」
「良くない、何も良くないいいいい!」
「遠慮するな。
ほら、高い他界」
「やめて、持ち上げないで!
足が、足が地面から離れてるうううううう!」
霊気により強化された身体能力で、ソウマはサユメを掴み上げる。
ジタバタともがくサユメの体は床上30センチで固定。
てるてる坊主よろしく体が揺れる。
更にソウマは持ち上げた頭を中心にしてサユメの体を揺らす。
その振動が更にソウマの指を頭蓋骨に食い込ませていった。
「ごめんなさいいいいいい!
悪かったです、ボクが悪かったです!
だから!
お願い!
放してえええええ!」
わびを入れるサユメも霊気を放って防御はしている。
しかし、ソウマの手から放たれる霊気で打ち消され、完璧な防御とはなり得ない。
そんな状態でしばらくサユメは宙づりにされていった。
「痛ひい……」
「自業自得だ」
ようやく許されたサユメは、残る痛みに顔をしかめる。
それも霊気を用いればすぐに治る。
しかし、拭いがたい恐怖はくすぶって残り、サユメをまだ打ちのめしてる。
「酷いよ、兄ちゃんの卒業式を祝ってやったの…………はい、すいません、ごめんなさい」
懲りずに言いつのろうとするサユメは、鬼の形相を見て言葉を引っ込めた。
「でも、旅団を辞めてすぐにこんなキレーなコをつれてるなんてね。
やるじゃん」
「たまたまいた新人の面倒を見る事になっただけだ」
「でも、襲うんでしょ?」
「するか!」
「またまたー」
事実であるが、サユメには信じがたい事のようだった。
「なんでお前は心がおっさんなんだよ」
そんな弟であり妹なクソガキに、ソウマは嘆くしかない。
旅団時代からこんな調子だった事も思い出しながら。
「嫌だなあ、エロガキと言ってよ」
「大して変わらん。
それに、さっきと言ってることが違うだろ」
「細かい事を気にしてるとハゲるよ。
それにほら、さっきも言ったけど、生活環境があんなだったじゃん。
兄ちゃんと一緒だったわけだし」
言葉尻を捉えて言い返してくるあたりも残念なところだ。
「出会った時には既にそうなってただろ」
ソウマも事実を用いて反論する。
「強くたくましく生きてくためさ」
「口のへらねえガキだ」
事実、そうだったのは確かだが、それでもいいわけを重ねるメスガキには手を焼く。
「でも、ちゃんと成長してるよ。
心も体も。
ほら、胸もこんなに」
言いながら少しだけ前屈みになって、襟を引っ張る。
確かにそこそこ成長してきた膨らみが見えた。
年齢を考えればかなりのものである。
「だから、ボクがドーテーを卒業させる事になると思ってたんだけど」
見せつけ終わると、今度は腕を組んでウンウンと肯く。
「いやー、先を越されるとは」
「何をだ、誰にだ」
「兄ちゃんにこんな甲斐性があるとはねえ」
と甲斐性を眺める。
先ほどから馬鹿な話しを聞かされていたオトハは、呆れている。
同時に、話しの内容が内容だけに、恥ずかしさもおぼえてしまう。
こんな事を人のいるところで話すのはいかがなものかと思って。
周りはさほど気にしてないが。
「筆おろしはボクがしなくちゃならないかなー、って思ってたんだけど」
「ナニを言ってんだ、本当に」
「あ、もしこのコと駄目だったら、ボクが筆おろしさせてあげるから」
ここでサユメ、胸をドンと叩く。
「駄目になっても大丈夫。
その場合は、責任をもってお相手するから。
安心安全の責任保証ってやつっすよ」
ニカッと歯を見せて笑顔を浮かべる。
その表情は、立派な悪ガキであった。
「ボクも初めてだから上手くは出来ないけど、そこは初めて同士、気楽にやろう」
「だから、なんでそんな話になる?」
「そりゃまあ、兄ちゃんがこんな綺麗なコをつれてるから」
「だから新人だって言ってるだろ」
「その新人をたぶらかして、手籠めにして、言うことを聞かせるんでしょ?」
「するか。
お前は俺をなんだと思ってる」
「とっても便利な荷物持ち」
「…………」
もう一度アイアンクローをくらわせようと、ソウマは手を広げた。
それを見て、さすがにサユメも口をつぐむ。
「でも、新人を押しつけられるのもどうなの?
だったらボクがついていっても良かったんじゃ?」
これ以上はさすがにまずいと思い、真面目な話しを始める。
話題そらしであるのは明白だ。
「話をそらすな」
ソウマは追求をとめない。
しかしサユメは気にせず進める。
強引に突き進むのが、誤魔化すために一番よいと分かってるからだ。
「だって、そうでしょ。
商売になるか分からないからボクをつれていかなかったんだから。
なのに新人ちゃんをつれてるってなるとね。
さすがに納得いかないよ。
おまけに美人さんだし」
「新人を放り出すのも気が引けたんだよ。
どこかの旅団に紹介するにしても、時間もなかったしな」
「ふーん」
納得いかないというような半目がソウマに向けられた。
「でも、それならさ。
ボクも一緒でもいいでしょ」
「そうだなあ……」
確かに一理ある。
新人のオトハをつれているのだ。
経験者でレベルもそれなりに高いサユメをつれていかない理由はない。
だが、だからといってすぐに承諾出来ない理由もある。
「一応利益は出るけど、それもいつまで続くか分からないんだよ」
今回の宅配は上手くいった。
利益を出す事ができた。
しかし、継続的に仕事があるかは分からない。
なにせ小規模運送だ。
一度終わらせれば、次まで間が開いてしまう。
村や町への配達など、そうそう多いものではない。
近隣にはそれなりの小規模集落があるのは確かだが。
それでも、定期的な稼ぎが出来るかどうかはあやしい。
だから最初は一人でやろうとした。
それが初日から頓挫するとは思わなかったが。
「人を増やすにしても、もう少し様子見をしないと」
実際に働いてみて、どれだけ利益が出るのか?
これを確認しない事には人手を増やせない。
もちろん、頭数が増えれば出来る事も多くなるのだが。
今のところ、そこまで踏ん切る自信は無い。
「というわけだ。
お前がいればありがたいけど、今はまだ人を増やせる状況じゃない」
「このコは一緒なのに?」
「だから、適当な旅団をそのうち紹介するつもりだ」
嘘ではない。
レベルがある程度上がれば、そういう道も出て来る。
どの旅団も、ある程度のレベルになってる経験者は欲しいのだから。
「ただ、レベルが上がれば残ってくれるとありがたい。
やりたい事も出来るようになるんで」
「なにを?」
「怪物退治だよ」
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