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15 今できる事をまずはやろう、出来ないことまでとはいわないから、伝えられる事をこのように伝えていく

 翌朝。

 車の中で起きたソウマは時計を確認。

 日の出前という今では当たり前になった起床時刻を確認。

 少し早いと思いながらも、宿へと向かう。

 朝食をとるために。

 オトハが起きるのを待ちながら。



「おはようございます……」

 程なくあらわれたオトハは、【音響】を使わずに地声で挨拶をしてきた。

 聞こえるかどうかという小さな声は、気をつけてないと聞き逃しそうになる。



「おはよう。

 でもどうした?

 超能力は使わないのか?」

「最初の挨拶くらいは、ちゃんと声に出さないと失礼かと思って」

 今度は超能力で音を操って伝えてくる。

 その声を聞いて、なるほどとソウマは納得する。

「うん、いい心がけだと思う」

 なんにしろ誠意を示そうというのは良いことだ。



 朝食を取った二人は、夜明けと共に出発。

 次の配達先へと向かった。

 やる事は前日と同じ。

 荷物を届け、荷物を回収し、途中で出てくる怪物を倒す。

 ほぼルーチンワークとなっている。



 怪物の数は多く、移動中はほぼ確実に襲われる。

 オトハの能力で敵の位置を確認しながら進んでいても、完全には回避出来ない。

 四方八方からよってきたら避けようがない。

 そういう時は、覚悟を決めて戦うしかない。



 それでもさして苦戦する事もない。

 轟音をぶつけることでたいていの怪物は行動不能になる。

 昨日と同じく、それだけで怪物は動けなくなる。

 かろうじて動けても、本来の動作は難しくなっている。

 音の威力というは、思った以上に大きいものだ。



 そんな怪物をソウマは次々に仕留めていく。

 戦闘らしい戦闘にもならずに。

 怪物は塵となって消えて、霊気結晶だけを残していく。



「ほい、今回の収穫」

 回収した結晶をソウマはオトハに渡していく。

「ありがとうございます。

 でも、すいません」

「いいからいいから。

 使ってレベルをあげてくれ」

 結晶の全てをオトハに渡して経験値にしていく。

 これは昨日からそうしてる。



 霊気結晶をつかえば、レベルを上げるのが早くなる。

 その分戦力になる。

 売ればそれなりの金になるし、自分でエネルギーにしてもよい。

 だがそれよりもレベルを上げるのに使った方が効果的だ。

 強さはいくらあっても良いのだから。



 強くなれば出来ることが増える。

 身体能力や超能力も強くなる。

 そうなれば出来ることが増える。

 この為の投資と考えれば安いものだ。



 今でも戦闘は楽に進められている。

 しかし、ここで満足する必要もない。

 もっと強くなって、もっと楽が出来るならその方がよい。



 戦闘は楽な方がよい。

 劇的でなくていい。

 危機に直面などしなくていいし、してはならない。

 これがソウマの考えだ。



 常に命がけなど、戦い方が間違ってる証拠だ。

 死ぬ可能性が高いのは、損害や消耗が大きいだけ。

 そうならないように手を打つべきである。

 頭を使うべきである。

 淡々と、単純なまでに簡単にこなす。

 生き残りたいならこうなるようにしていくべきだ。



 その為にも、最低限の強さは欲しい。

 戦い方を考え、適切な道具を用意するのはもちろんだが。

 地力があるかどうかも生存率や生還率に関わってくる。

 だからオトハにはレベルを上げてもらう。

 必要になる最低限の強さを手にれてもらうために。



 霊気結晶を与えるだけではない

 気づいた【音響】の使い方も提案していく。

 もしかしら、こういう事ができるんじゃないか?

 こういった事は出来ないか?

 本人も気づかない超能力の使い方を、ソウマの視点から尋ねていく。



 言われてオトハも気づく事がある。

 試しにやってみれば、確かに上手くいく事もあった。

 出来ない事ももちろんあるのだが。

 それでも気づくきっかけになり、考えるきっかけになる。

 どんな小さな事でもいいから、ソウマはそれを伝えていく事を心がけた。



 オトハも自分の超能力がどう使えるかを試していく。

 今やってる事の中にそのきっかけがあったり。

 あるいは何の脈絡もなく思いついたり。

 それらを試していく。

 忘れないように書き留めていく。



「今は出来なくても、レベルが上がれば出来るようになる事もある」

 単に力が弱くて出来ない事もある。

 ならばレベルを上げて能力を高めればよい。

 そうなれば出来るようになる事もある。



 こんな事を、都市に戻る途中で行っていく。

 さすがに一日で全部をおぼえる事は出来ない。

 試せる事も少ない。

 それは今後にまわす事にする。

 全てを今やる必要はないのだから。

 出来るだけ早くやっていく方が良いにしてもだ。



 時間も出来ることにも限りがある。

 その中で上手くやりくりするしかない。

 なのでソウマは焦らなかった。



「少しずつやっていけばいいさ」

 今は銃の撃ち方を教えながら心得や心構えを伝えていく。

「無理をしなくていい。

 怠け者になっちゃいけないけど、無茶は駄目だ。

 必ず体を壊す、心を壊す」



 目標は近付いてくる怪物。

 道路の上を進んでくるので狙いやすい。

 そんな怪物の位置を音の響きや反響で確かめ、オトハは狙いをつけていく。

 姿を見せてるのでやりやすい。



 たとえ隠れていても、オトハにはあまり通じない。

 息づかいや足音、なんらかの物音からどこにいるのかを割り出せるからだ。

 そんな怪物の位置を確認しながら、物陰から出て来るのを待って狙い撃つ。

 廃墟によって視界が妨げられる元住宅地であるが、音を拾えばこのように有利に動ける。



 自分から隠れてる敵の所へ向かい、不意打ちをかける事も出来る。

 その際には、自分の足音などを消すという隠密方法を使いもする。



 今はそうする必要もなく、迫る怪物を待つ。

 6・5ミリ改良有坂弾を使うブルパップ式ライフルを構え。

 装着したドットサイトと折りたたみ狙撃鏡で迫る怪物を狙いながら。



 やってくるのは、いずれも小鬼。

 怪物の中でも最弱で最も数が多いもの。

 それらに銃口を向けて引き金を引いていく。

 胸や腹を撃ち抜かれた怪物は、次々に倒れていった。



「そう、その調子だ」

 見事に撃ち抜いたオトハを褒めていく。

「当たれば怪物は死ぬ。

 無理に急所だけを狙う必要は無い」

「はい」

 今の段階ではこれだけ出来れば十分である。



 他にも、クロスボウを使った射撃をさせたり。

 ナイフや刀で接近戦をしたり。

 出来るだけの戦い方を教えていく。

 探索者としてやっていくなら身につけねばならない事だ。

「まずは一つだけでもおぼえてくれ。

 そうすりゃ、少しだけ生き残りやすくなる」

 やる事が多くて大変そうなオトハへの気遣いもしていく。



「どうだ、上手くやっていけそうか?」

「はい、まだ駄目な所もあると思いますが。

 がんばります」

「その意気だ」

 その気持ちがあればよい。

 ならば未来も開けていく。



 そんな帰り道の途中。

 怪物を倒し、村や町を巡りながら考える。

(結晶、どうやって渡そうかな)

 昨晩、近くにいた怪物を倒して得た結晶。

 これをどう渡していくか。

 切り出し方が難しい。



 渡すとなると、ソウマの能力について伝えねばならない。

 隠しおおせるものではないので、いつかは説明はする事にはなるだろう。

 そもそも黙っているのも面倒である。

 伝えるべき事はなるべく早く教えた方がよい。



 だが言い方一つでこの先が変わる。

 なのでどうしても慎重になってしまう。

(悩んでもしょうがないけど)

 考えるだけ無駄ではあるので、さっさとやってしまえば良いとは思うのだが。

 それでも、躊躇いは生まれてしまう。

 最善最良最高を求めて。



(馬鹿だよなあ)

 自嘲をおぼえてしまう

 ハンドルを握りながらそんな悩みを抱えて。

 結局、もうしばらく後にしようという結論におちついた

(まあ、今はこれでいいか)

 無理する必要も無い、試すならいつでもいくらでも出来る。

 今回はとりあえず見送る事にして。

 でも、これが今後どう影響するのか。

 それを確かめていく事にした。



 それでも帰路はさほど問題もなく進み。

 荷物と伝票の受け渡しと回収をして都市へと戻ってきた。

 運送業としての最初の仕事はこうして終わった。



【というわけで】


 ここで第一章が終了。

 一応一区切り。


 誤字脱字報告、ありがとう。


 気に入ってくれたら、ブックマークに入れて追いかけてくれるとありがたい。


 面白かったら「いいね」を入れてくれると助かる。

 どこの場面が良かったのかの参考になるので。



_______________________



支援サイトのファンティアもやってる。



【よぎそーとのネグラ 】

https://fantia.jp/posts/2691457



 支援、ありがとう。

 おかげで書くことができている。


 なお、本文中に出てきた、折り畳み狙撃鏡についての妄想はこちら

 https://fantia.jp/posts/3705083

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