12 配達終わって、日が暮れて
大都市周辺の村や町を巡る。
配達先で荷物と伝票を渡し、次の場所へ。
町や村は車を使えば1時間とかからず向かう事ができる。
その途中で怪物に襲われる事がなければ、さほど難しい仕事ではない。
そして、行く先々の村や町で、そこで得られる品を手に入れていく。
単に荷物を運ぶだけだと、帰りの道が無駄になる。
なので、そこで産出されたものをかわりに都市に持ち込む。
収納空間の容量という限界はあるが、これで更に収入が見込める。
荷物を届け、荷物を引き受けていく。
小さな軽ワゴンには見合わぬ量を抱えながら。
「大量、大漁」
伝票で示される仕事の成果にご満悦。
その分だけ金になる。
こうして車を走らせ、辺境といえるほど都市から離れた町に到着する。
都市に帰る事は無理なので、ここで一晩宿泊になる。
都市に戻るのは明日になる。
夜通し車を走らせるなんて事はしない。
怪物に襲われたら撃退が困難になるからだ。
「というわけで、おやすみ」
宿泊場所にオトハをつれていき、ソウマはそこで分かれる。
「一人分の寝泊まりしか用意してないからさ。
佐々波はこっちで寝て」
「でも……」
言われてオトハは恐縮する。
もともとソウマ一人で始めるつもりだった仕事だ。
当然、宿泊の手配も一人分しかしていない。
そこに突然オトハが加わったのだ。
もう一人分を用意する時間はなかった。
なので、ソウマは車で寝ることにした。
男女差別をするつもりはないが、まともな寝床は女子に提供しようという。
これにはオトハも申し訳ないと思ってしまう。
いきなり新人なのに仕事に加えてもらったのだ。
それなのに色々と気遣わせてしまってる。
さすがにこれで良いのかと考える。
しかしソウマは気にする風でもない。
「いいの、いいの」
そう言ってオトハを宿に押し込む。
「これからいっぱい働いてもらうから。
これくらいはサービスするって」
「でも……」
「はい、それじゃ、おやすみ。
また明日な」
何か言いつのろうとするオトハを遮る。
手を振りながらソウマは宿泊場所から歩いていった。
その背中を見つめ、オトハは頭を下げた。
「さてと」
車に戻ったソウマは椅子を倒す。
そのまま寝転がって超能力を発動する。
【時空】の能力を使った空間把握。
周囲にいる存在を探知していく。
レーダーのように周囲の様子を探ると、特定の反応を見つける事ができた。
近辺に潜んでる怪物だ。
それを見つけると、ソウマはすぐに行動を起こす。
「幸先がいい」
いろいろな意味でそう思う。
開始初日で敵を見つける事ができたこと。
一緒にいたオトハと、こうして離れる事ができた事。
日中はさすがに難しいが、夜ならば独自に行動が出来る。
「しょうがないか」
本当は行く先々で行動したかったのだが。
オトハがいるからしょうがない。
いずれは伝える事になるかもしれないが、今は様子を見る事にする。
その方が都合がよい。
それに、オトハはどうしてもつれていきたい存在だ。
引率を断るなんて事はしない。
となれば、色々と妥協も必要になる。
なので、夜だけでも別になれるのはありがたい。
そう考えながらソウマは更に【時空】の力を使う。
その瞬間、車の中からソウマの姿が消えた。