第一章「死に損ない」
二章中盤以降読みやすい形に変わっております
第一幕『死に損ない』2020 7月31日11時
一定のテンポを刻む音。少し不快感を覚えるような、無機質な音が瞼の裏で、空気を伝って耳に届く。
頭がクラクラする。
そして体の倦怠感が体で居候しているようだ。刺してくるような光が鬱陶しい。
少し目を開ける。勿論知らない天井だ。
???「目が覚めたようだね~」
甘ったるい女の子の声が耳を撫でる。なんとなくぼんやりしている声だ。
首を少し左に傾けると、そこにはピンク髪で後ろ髪はロングで、先の方はクルっと内側に少し丸まっている。
前髪は目の少し上でとまっている。全体的少し猫背で、ぼんやりとした目をしている。まるで猫のようだと、第一印象を持った。そして女の子だ。
???「ちょっと脳みそ君がついてきててないかなぁ~、じゃあ無理やり叩き起こそうか」。
イタズラっぽく笑ったのち、俺の状態を起こし、俺の右の手首あたりに、四角いタッチパネルのついた腕時計らしきものをつけてきた。
腕時計の前方には、長方系の隙間があり、まるでカードホルダーのような構造をしていた。
そして彼女は俺の思考を見抜いたように、一枚のカードを取り出して中に入れた。
その瞬間、装置から青い光が漏れ出し、大きく輝いてみせた。さらに装置の中から突然、いくつかの蒼い人魂が、俺の目の前で首輪のように円形を描いて止まった。
そして、彼女は俺の右手を持ち上げ、その人魂を俺の手で触れさせた。
俺の手の中に大きな力が宿るのを感じる。
腕はダンベルのように重くなる。
彼女はその腕を力強く、声を出しながら持ち上げた。
???「っっいっよい、、しょっと!」。
俺の腕が頂点までに達すると、腕を伝ってエネルギーが俺の身体を駆け巡った。身体の疲労や、痛みという痛みが身体から抜けていく。同時に、俺は周囲に大きな水玉をまとい、なぜだが涙が溢れてきた。
???「よし、正常に機能してるね」。
彼女はガッツポーズをした。泣いてるとこを見て喜ぶ。精神科って入ってますかこの病院。
だが、だいぶ思考が回るようになってきた。そして体も不思議と軽い。上体をばっと起こし、浮かんできた疑問を連発して彼女に問いかける。彼女は突然の反応に驚き身を怯ませた。
俺「今俺の体に何をしたんだ。というかあんたは誰なん
だ。ここはどこだ。」
何故か泣いてるせいで声が出しづらい。何で泣いてるんだよ。
???「待って待ってひとつづつ答えるから。そんなよくある問いかけ三段活用はやめてくれ。というか起きたばっかなのに元気だね。いいことだよ。質問のアンサーは時間ないから端折るよ。まずここは病院、病室の一角にいるよ。君はあの火事現場から生き残ったんだよ、最後は僕が運んだけどね。」
俺「え?冗談ならやめてくれ、あの状況から救出なんて無理だ」。
???「それが可能なの、特殊な力でね。というか君が生き残ったんのもそのおかげで...あっ、今のは忘れて」。
俺「いや気になるだろそれおしえ、、、」
その時だった。俺の言葉を完全に遮って突然爆発音が病室の外から聞こえた
俺「なんだ今の音は!?」
爆発音を気にしていないかのように彼女は、
「それは本当にしかるべき時に教えるから」。
と言った。
俺「しかるべき時も訪れなさそうな音だったけどな」
???「ほら立って、今から戦うよ」。
俺は戦うという言葉にポカンとした。簡単な言葉なのに。
そんな俺を無理やり引っ張る。そして俺を立たせ病室を駆け出す。
―――
廊下を抜けて、ナースステーションの方向に進む。少し感覚になれたのか、涙が引っ込んでいく。
直感で、火事が起きているとわかる。
徐々に空気の温度が上がっていくのを感じる。
そして、焦げ臭い匂いがする。
俺は何かと戦うらしいが、嫌な予感しかしない。
さっきまで己を火で焼き尽くそうとしていたのに、この火は嫌いだ。
あれ、というかなんで俺焼身なんてしようと思ったんだっけ。思えば、その出来事が起きる前の記憶がない。
そんなことを考え走っていた間、横を通り過ぎる物体があった。
紛れもない死体だ。俺は思わずブレーキをかけ、まじまじと観察してしまった。
全身は焼け爛れ、どこが的確に燃やされたかがわかるような黒い焦げ跡が、俺の眼球に焼印をつけまいと現実がそれを押し付けてくる。死体はもう火がついていないのだが。
俺「どうしてこんなことに、それに周りにも同じような死体が」
???「元凶見たら、はいはいなるほどってなるから。それより長居して、その装置を見られると面倒くさくなるんだから。ぱぱっと倒すよ。」
なんでそう無関心なのか。だが明らかに仕事をしているという感覚なのだろうとその雰囲気で読めた。彼女が何者であるかまだ把握はできていない。だが余裕のある話し方であった。やはりこのような状況になれている、軍人のようま職業の人なのであろうか。それでも少しぐらいハイになって生きていかないと、精神がやられてしまうのだろう。
進んでいるうちに、なんだかさらに体が熱くなってきた。火の近くにいるにだから当たり前なのだが、それでも異常なほどだった。だが、その謎はすぐに解けた。なるほどとなると同時に声が漏れた。
俺「なんだ、、あれ、」。
???「さあお出ましだよ。事前情報がほぼなかったからちょっと不安だったけど」。
そう、全身火をまとった人形の化け物がこっちに近づいて来たのだ。というか、あれは火そのものだと言っても過言でもなかった。だが確かに人の形をしていて、少なくとも四肢があるのが見てわかる
俺、今からあれと戦わされるというのか、もう帰りたい。
あっ、でも家の場所が思い出せない。
???「炎か、今回の『パーソナル』選択は当たりだったか。全く、僕ってば本当にセンスある~」。
俺「なに自惚れてるんだ説明をしてくれ!なんであいつ燃えてるんだよ。」
???「はいはい簡単に説明するね」
炎の敵が待ちきれんとばかりに何かを溜め始めた。
勿論反応しないわけもなく、
「なんだよあれ、明らかにやばいのため始めただろ!」
と言ったのちに空いた口が塞がらなくなった。
???「いまあいつの中に怒りのパワーがあって、その力でファイアーしてるの。君のその右手に付けてある装置も似たようなもので、感情を引き出して力を与えてくれる。その名もカードローラー。あっ、装置本体のことでカードの方はパーソナルって言うからね」
炎の敵はどうやら巨大な火の玉を溜めているようだ。
俺「あのお前がさっき俺にセットしたやつか。というかしゃべるスピードを上げてくれ!見えてるだろ、あのやばい魔弾が!」
???「んで、その装置は自分の中にある人格を引き出して、それぞれに合わせた能力へと変換して、力を覚醒させるものなの!」
俺「よし、全然頭に入ってこなかったが、最終的に、どうやって使えばいいんだよ」。
???「自分で考えて、君がセットしたパーソナルは悲しみ
。ブルーな気分でしょ。文字通りブルーにちなんだ能力が使えるよ。つまり今は水!そして能力の属性に適したことを思い描いて念じればそれが出るから」。
俺「水の能力が使えるのはわかったけど。はい??」。
疑問を提示すると同時に悍ましい轟音が奴から聞こえた。
一度雄叫びを上げたと思ったらあの熱々はチャージが完了したのかついに炎を放って来やがった!
俺(どうすりゃいい、念じろって何だよ、想像してそれを出すのはわかっている。いやもう考えてる時間はない。とりあえず自分を守らなければ。)
俺は両手を前に突き出した。
炎が寸前まで迫る。
俺はこう念じる。
厚い水の障壁よ!
俺の前に水の壁ができた、そして火の玉を受け止めた。
だが、それだけでは足りないのかじわじわ押されている。
???「あぁ、やばいね、もっと強く想像して出す!出す!ってしないと」
俺「お前はもっと語彙力を上げてくれ!」。
まぁつまりもっと集中して、頭の中に水をを思い浮かべろってことだろ!?。水、水といえば滝、滝といえば激流それだ、もっと、もっと。
そう考えると、水はシューっと音を立てながらさらに激しく波を立て出した。そして俺は力みながら手に力を込め、大きく叫びながら思いっきり火の玉を押し返してやった。
熱々野郎にとって流石に予想外であったのか、反応できずもろに火の玉を喰らった。得意属性なようだが流石に大ダメージなようで、大きく吹っ飛んで壁に大きなへこみをつけて地面にへばりこんだ。
その隙を見逃さない。
子供の頃誰しもが考えたことのある光線系の技、あれを出す!
今考えたネーミングセンス皆無な技だが、俺は響きが気に入った。
いくぞ!!
俺「ウォーターサイクロン!!」。
右手を前に突き出し、右手から大量の水を出す。高速で周期を描きながら大きな渦潮を形成し、勢いは止まることを知らない。それを思い切り前に突き出し、水で円柱を作る。そのまま熱々野郎に飛んでいく。熱々野郎はこっちにてをのばし、命乞いをしているようだった。
知らん!遅い!ついに熱々は、渦潮の中に飲み込まれていった。高速で回転する渦の中、何も抵抗できず水圧を体に背負い、関節をぐちゃぐちゃにされている頃だろう。
だが、彼女は俺を制止した。
???「あっ、ストップストップ!」
俺「え?」
とりあえず俺は手を止めた。正直いいところだったのに。
???「パーソナルで回収しないと」
そういうとパーソナルを手に持ち、熱々の前に駆け寄った。そして、パーソナルナルをそいつに頭上にかざす。驚くことに、パーソナルはそいつから吸収を開始した。そして、しばらくしないうちに、そいつは完全にかたちがなくなりパーソナルの中に入ってしまった。
???「はい、おしまい。君の勝ち!」。
彼女は笑った。屈託のない笑顔だった。こんなに周りに死体がぶち転がっているのにも関わらず。冷静に物事を片付けた。
俺は思わずため息をついた、安心したのだろう。そして何だかまた泣きたくなって来た。というか泣いた。
おもわずもう一度ため息がでる
???「君にはその感覚に早く慣れてもらうからね。」
本当の敵はここにいるのかもしれない。
???「さて早く此処を脱出しようか」。
俺「とっとと俺もこんなところからずらかりたい」
だが思うように足があがらない。あれ、意識が何だが薄れて来た。おかしい、泣いているせいで体力を余計に消耗している。
そしてさっきのことのせいでもう限界なのだろう。
そして俺は突然ばたりと地面に倒れた。力が入らないそして俺は泣きながら気絶した。何て不様なのだろう。周りから見たらシュールの他極まりないだろう。泣けるぜ
ーーー
地面がふかふかしていて、心地よい。ベットの上だ。
そして、ハッと目を開き上体を起こす。
知っている天井、知っている景色。実家だ
酷い夢だったのだろうか。ふと自分の右腕に視線を逸らすと、そこには腕は型の装置が。
驚た、そして気がついた時には俺は玄関に立ち、靴を履き、大急ぎで昨日の廃ビルへと走っていた。なぜか、廃ビルの位置だけ覚えていた
本当に昨日起こった出来事なら、昨日の続きなら、廃ビルは燃えて、倒壊してたり、焦げ跡がついているはず。
ある程度思考を回すと、気だるい暑さに襲われた。
外気温に意識を回したせいだ。
田舎道の途中にあるとはいえ、家からさほど遠くはなかったため熱中症にならぬ間に目的地へとついた。
だがしかし。
「廃ビルが、原型のままだと、、、」
心の声が漏れたしまった。
ビルは変わらず、サンサンとギラつく太陽の日に照らされながら、当たり前のようにそびえ立っていた。
とりあえず、俺は階段を登ることにしてみた。俺は最上階で焼身をしていた。彼女だってきっと最上階にいる。その上俺がくるのを見越しているだろう。一段づつ足を上げていった。
登っている途中こんなことを考えた。昨日のことは本当に起こったことだったのだろうか。自分はなぜ戦う羽目になったのか、他の人でもいいのではないか。そして何より、自分はなぜ焼身をしようとしたのか。記憶を探りたい。でもこうも考えた、そんなことなくて単に寝ぼけているだけであり、思考の全てが無駄になるだろうと。
足も悲鳴を上げ始めた頃、ついに最上階へと到達した。
この問いの投げかけが必要になるか廃棄になるか。
少し中に入って周りを見渡すと、よく日の入る東側の窓にもたれかかり、ピンクの髪を風でなびかせ、ただ窓の外を黄昏ながら眺めている。
あぁ、よかった、どうやら無駄にならなかったようだ。
さて知ってること、全部吐いてもらおう。
彼女は俺に気付き振り向いて、こう言った
「おはよう、死に損ない君」。2020年8月1日9時