プロローグ「焼身」
この物語には残酷な描写、または憂鬱になるような表現が含まれております。
この作品の登場人物、または地名や設定は全て架空の産物でありフィクションです。
またこの作品は自殺を推進するものではございません。
それらを了承した上で読み進めてください。
皆は未来や周りの環境に対する理想を持っているだろうか。
俺は理想を望み願うことすら許されなかった。だから何もかも接触することを避け。ただ淡々と生きてきた。毎日は少しずつ違う。だからこそそんな日常の変化の境目に私たちは違和感と好奇心を覚える。そんな感情が理想を形成するのではないかと思ったからだ。
寂しさは日々付き纏ってきた。気がつくと妄想癖がついていた。よくある物語のシナリオに沿って、ただ皆んなに慕われる理想的な主人公が人々を救うというものだった。あれだけ理想を願わないようにしていたが、やはり限界というのはあるようだった。だがしかし何もなくても形さえ作らなければ現実は変わらず過ぎていく。だからこそ、一つの時間を潰す手段とかしていた。
そんな主人公にはヒロインがつきものだ。どんな時でも主人公を常に支えてくれるような存在。普通現実にはいないような完璧な存在。だが、常に支えようなど自身の身が持つはずがない。少なくとも自分にはモチベーションが足りない。ではモチベーションはどこから来るのだろうか。それが愛なのだろうか。そんなものが続くのだろうか。少なくとも愛は消耗品なのだ。愛とはなんなのか。今までの自分の人生観では全く理解ができないのだ。逆に考えるだけで頭が痛くなってきた。やはり物語は不完全なままだった。
そんな日常の末に私は一つ、理想を思い描けた。
俺は今火の檻に閉じ込められている。いや、閉じ込められているというのは少し違う、自分は進んでこのボヤ騒ぎをこの廃ビルで起こしたんだ。最初で最後の理想の実現だった。
ビルの周りに、冬に使うからと倉庫に取っておいた灯油をビル全体、各フロアに撒き散らし、ビルの屋上で火をつけた。今は暑い、蝉のうるさい夏だから、灯油は持ち腐れているほど余っていた。
火をつける刹那、頭の上で、「廃ビルで灰になるってか」。とかゆうクソつまらないギャグを思いついた。まぁ、今までのことに比べたら、十分に面白い。
あの日、俺の心は完膚なきまでに壊された。どうせなら、最後ぐらい、自分を派手な火葬で現世から送り出して欲しかった。そして、最後に爪痕を残したかった。大きくても小さくても、はたまた、自分しか知らなくたってよかった。まあ、世間に存在と示すにしても、こんなへんぴな田舎の道路の道途中に佇むビルを燃やしても、誰も見ない可能性の方が多いかもしれない。それでも俺は。
炎の煙がやがて俺の頭を蝕み、静かに、確実に息の根を止めようとしてくる。ついには立てなくなり、膝をついたと思えばバランと顔面からコンクリートにダイビングキスをする。痛みを感じないかった。だが、感覚神経を叩き起こしたのか、息苦しさを感じる。だが、これで終わるなら、俺は永遠に夢の世界に入ってもいい。俺は静かに目を閉じた。