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02 紅之蘭 著 『天才紅教授の魔法講義 其の十八』

梗概/ナイスバディな紅教授とロリッコ助教の縫目ちゃん。アホダラ学生三人組みと登山する。学生が禁呪トラップに引っ掛かり、騒ぎに。

『天才紅教授の魔法講義 其の十八』

 

   18 リーダーシップ


 八月十三日から始まるお盆休み返上で、黄戸島村立大学に残って、夏季補修に参加する連中といったら、メガネ、カブ、コゾウの三人組みだ。

 渾名の由来はメガネがそのまんま。カブについては、肥っているうえにボサボサの髪なので頭がカブのように見えるため。コゾウは小柄な体躯で、中学生くらいに見えるためだ。

 七月に前期試験があり、三人の成績が悪かった。学校側は温情というより、アホ学生をとっとと卒業させたい思惑があり、夏季補修を行うことにしたのだ。


 魔法科教室の紅教授はセクシー・ポーズをとった。

「諸君らのペパーテストは惨憺たる結果だった。ゆえに本日の試験を実技に変えたい。さて、八月十二日と言ったら山の日だ。おあつらえむきに黄戸島には、標高八百メートルの黄戸小冨士がある。外輪山を越え、中央火口丘である、かの山を制覇するのだ! セクシーお姉さんな私・紅教授様と、キュートなロリッコ・縫目ちゃんが引率してやるんだ。ありがたき幸せと思いやがれ!」

 三人組はリュックを背負って運動帽、シャツ、短パン、スニーカー姿。紅教授と私もリュックを背負ってはいるのだが、ダサい三人よりはもうちょっとマシな服装。深縁帽にワイシャツとジーンズ、登山靴姿だ。


 キャンパスから外輪山の峠にさしかかったところで、私達は休憩をとる。

「教授と縫目ちゃん、体力ありすぎだよ」

 メガネが悲鳴をあげるようにそう言って、仲間二人とともに、アスファルト道路にへたりこんだ。三人とも汗だくで、持参した水筒の水をガブガブ飲んだ。

 実をいうと紅教授と助教の私・縫目フラ子は、三人に内緒で、強化魔法と冷却魔法をかけているので、炎天下における過酷な運動でも、快適に移動できるというわけだ。


 教授と私はアホダラ学生三人を引率し、外輪山からカルデラ盆地の底に下り、さらに中央火口丘〝黄戸小冨士〟の頂きにたどり着いた。

 黄戸小冨士はその名のとおり、富士山のミニチュアのような姿で、山頂の真ん中にはやはり噴火口があり、我々は現在、火口縁に立っている。そこから太平洋に浮かぶ黄戸島全域を見渡すことができた。

「いい風が吹いている。涼しい」

 三人組の一人、コゾウが倒れるように足を投げ出して言うと、それに続くカブが、「ウンウン」とうなずいた。

 問題を起こしたのはメガネだった。

 紅教授が拡声魔法で怒声を発した。

「メガネ、てめえ、何勝手なことを――」

 噴火口は数百年前に噴火し、以降は休止状態にある。ゆえに底は椀状になっており、メガネはそこへ向かって下って行った。

「教授、縫目ちゃーん、こんなところに祠がありましたあ~」

「祠だと? そんなものはないはず。誰が建てたんだ」紅教授がなどと呟き、「もしかすると――」

 メガネが柏手を打って拝んだあと、祠を触った。途端、ギャーッと悲鳴をあげた。

「どうした!」

 紅教授、私、カブとコゾウの二人が続き、噴火口の斜面を駆け下る。

 祠は火山岩をくり抜いた素朴なもので、屋根と堂からなっており、真新しい白の幣束が納められていた。メガネは祠の背後で蹲踞そんきょの姿勢で、うずくまっていた。その背後には特殊魔法陣が描かれている。

 私が横の教授を見ると、彼女は、

「禁呪魔法陣!――まさか、流れ黒魔魔道士サブが仕掛けたトラップか?」

「サブ?」

「世界をさすらう異端の術士だ。呪詛魔法陣を仕掛けた祠を建てたのは奴の仕業に違いない」

「いったい、何のために?」

「サブは愉快犯なんだよ」

 教授は下を向いて座っているメガネに、「大丈夫か?」と訊くと、立ち上がってこっちを向く。その姿はなんと――

「メガネ、おまえ、女になったのか!」

 カブとコゾウが素っ頓狂な声を上げる。

「ぐわーっはっはっ、これで堂々と村の共同浴場温泉女湯に入れる。常連の紅教授や縫目ちゃんのヌードも見放題。百合百合しちゃうぞ!」

 メガネはもともと美形ではない。だから女になったら自然、おブスになっていた。自分のオッパイを両手で揉んでいるのがヤラシイ。仲間二人は羨ましがっていた。

 ――きもすぎ。

「解呪。断固、解呪だ!」教授がヒステリックに吠える。

 賛成だ。教授がもし解呪できなかったら、射殺してやる。


 了




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