04 紅之蘭 著 『天才紅教授の魔法講義 其の二十一』
梗概/黄戸島村立大学魔法科講師・紅教授と助手・フラ子の日常。
21 探索
政府からの各種学校交付金の一部を証券会社に運用させたところ、株価が爆上がりして大儲けした。それで我らが黄戸島村立大学は、一階入口に二頭の獅子の置物を置いた、ダンジョン・タワーを建設した次第である。
学科長の島村教授が魔法科生徒に訓示した。
「ダンジョン・タワーは地上二十階、地下二階からなる学棟の一つであるのだが、内部の迷路は日々、オートマチック移動方式による障壁でルートが変更される仕様だ。各フロアには、教授陣が召喚した階層守護者、領域守護者が待ち構えている。――死ぬようなことはないが、防護服・ヘルメットにセットされたヒット・ダメージが、許容値を超えたらゲームオーバー。そのまま退場になる」
紅教授と私・縫目フラ子が、過疎・嫁不足な当島では希少な女性ということで、学長、学科長、村の有力者への花束贈呈役を務めた。
学生をのぞいた出席者は、アカデミー賞受賞式で俳優が着るような黒または白のタキシードを殿方が、紅教授と私は赤と白のドレスと長手袋を身に着けての、セレモニーだ。
大会は実技試験で、大きな卒業単位になる。筆記試験が不得手な学生にとっては、一発逆転のチャンスだった。
私の横にいた紅教授が、
「最終フロアに達した冒険者学生諸君には、過疎・嫁不足が深刻な黄戸島にあっては貴重な、見かけはロリロリ、実は適齢期バリバリな縫目ちゃんとのデート券を発行する。この紅教授が約束しよう」
――おおっ!
なにを勝手に!
どさくさに紛れて彼女は私のスカートを男子学生のほうに向けて、バッとめくった。
――ぎゃっ。
ある者は鼻血を噴き、ある者は目を血走らせ、またある者はハアハア息を荒くして、ダンジョン・タワーへ突入して行った。
学科長が私の肩に手を置き、
「モチベーション・マックスだね」
「学科長、学生優勝者とのデートが終わったら、私と旅行に誘ってくださいね」
「判った。前向きに検討しておくよ」
私たちは、四角い五階建ての回廊状になった、大学本棟にあるモニター・ルームで学生達の探索状況をチェックしていた。
ダンジョン・タワーの一階から五階までは、スライムやゴブリンといった、雑魚系モンスターが出没する。
これまで紅教授と助手の私に鍛えられたメガネ一味の連携は、敵ながらあっぱれ。破竹の勢いで、オークやハイ・ウルフ、吸血コウモリ蠢く九層までのフロアを制圧。難関である十階のサイクロプス、十五階のダークエルフ、そして連中は十九階のミノタウロスを撃破した。
そして二十階のラスボスに対峙することになる。
私は姿見鏡に施した転移魔法陣に足を進める。
「縫目ちゃん、手加減は無用よ」
――もちろんですとも、確実に息の根を止め、そして私はイケオジな島村学科長と東京名所デートを満喫するのだ!
タワー最上階フロアは、天蓋付ベッドが置かれた寝室で、天井には月と星が描かれている。
花嫁のような白いドレスを着た私は、ベッド横の椅子にもたれた格好で転移していた。
そこへ、
ハア、ハア。
「縫目姫。どうか憐れなメガネめに、盗まれてやってください」
メガネ君と行動をともにしていたお仲間達は途中で、脱落した様子だ。
宮崎アニメ『カリオストロの城』のルパンを気取ったメガネ君が、つかつかと私のところに進み出て片膝をつき、私の指にリングを嵌めようとする。
パン……。
床が開き、勇者メガネは縦坑を急速落下してゆく。私は下を覗き込む。ネズミめは途中で、首吊りロープにつかまって踏ん張っているようだ。
さればドバッと――水洗タンク弁、解放。
「ぎゃあああ……」
メガネ君が落ちた地下二階から一階には、スケルトンやゾンビといったアンデットがいる。フロント脱出までもうちょっと、楽しんでね。
了




