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01 奄美剣星 著 『エルフ文明の暗号文 23』

【梗概】 新大陸副王府シルハを舞台にしたレディー・シナモン少佐と相棒のブレイヤー博士の事件捜査。スタンピードついに始まる。

    23 撤退街道(探索)


 フランクリン将軍は、レディー・シナモン少佐と面識があった。最初に出会ったのはヒスカラ本国で、文武百官が建ち並ぶ王宮、オフィーリア女王の御前にあって、その人のすぐ横に並ぶ側近中の側近だ。


 ――コンウォールの才媛。


 連合種族帝国によって滅ぼされたコンウォール王国の伯爵公女で、ヒスカラ王国に逃れるも、その聡明さは女王の耳に届いており、露頭に迷うことなくすぐさま拾われ、考古学者から少佐に抜擢された才媛だ。彼女の最大の武器は地図を誰よりも的確に読むという点にある。作業員に指示をだす都合上、地元住民の言葉を堪能に操れる上に、現地の地理に明るい。


 ヒスカラ大陸からシルハ大陸遷都のための事前調査として、王国特命遺跡調査官を拝命したレディー・シナモン少佐。その副官が私・ドロシー博士だ。


 フランクリン将軍の司令部は、マタドールの砲兵トラクターにある。

 シルハ大陸北西辺境部に、駐留軍四十五万が貼りつき、南北縦長・I字状に二百四十キロの戦線をなしていた。それを大海嘯スタンピードで生じた甲殻虫八十万がU字状に包囲している。――シナモン中尉は、渡された資料に目を通し地図を見ると、瞬時に状況を理解した。


 ――こ、これは、包囲殲滅陣形そのもの。甲殻虫は明らかに、指揮官によって統率されている。そして我々はその術中にはまっている。


 フランクリン司令が、考古学者上がりの女性少佐に訊いた。

「レディー・シナモン少佐、君ならどうする?」

「港湾都市ダンケルクには運河がありますので、それを活かして要塞化し、立て籠もるのです。そしてありったけの艦船をかき集め、対岸の島々に避難させます」

「判った。総督府に掛け合って、ありったけの官民艦船をかき集めるとしよう。

一般道は避難民で溢れ、遅々として進まぬ。沿線の町の市街地に入ったらアウトだ。出られなくなる。なるべく市街地を迂回して進む。――それが〈撤退街道〉になる」


 将軍は、最南端にいる各軍のための〈撤退街道〉を整備しつつ、伸びきった戦線二百四十キロを縮小すべく、北を目指して撤退させようとしていた。


 考古学者であることからシルハ大陸の地形を熟知していた、レディー・シナモン少佐は、各師団の現在地から最新情報に鑑みて、地図上に撤退路を線引きつつ、危険と判断される箇所をマーキングした。彼女が複数路線からなる〈撤退街道〉線引き作業を終えると、将軍が話しかけた。


「近く、副王府から殿下の乗った飛行機が来る。ダンケルク港内の波止場は、飛行型甲殻虫の空襲でだいぶやられているらしい。殿下は、大型船の効率的な運用方法を思案なされている様子だ。君は、先に行って、まだ使えそうな波止場を探してくれたまえ」


 本来はリムージンであるシルバーゴーストを改装した装甲車には、下士官の運転手がついていた。レディー・シナモン少佐は、立石メンフィル遺跡から、ダンケルクに至る〈撤退街道〉を通り、ダンケルクに入る。


 他方、〈撤退街道〉では――。

 フランクリン将軍は、先遣隊を送って途中の要所要所に防御陣地を構築させつつ、本隊を撤収させていた。


 大海嘯スタンピードの甲殻虫に、横腹を衝かれないための備えだ。この作業には、工兵ばかりではなく一般兵士たちが、スコップで土を掘り土嚢袋に収めて積み上げるという所作を随所でやっていた。そこを通って、続々と本隊が撤退して来る。

 路肩には、放棄された軍用車が縦列駐車して、道幅を狭くしていた。そこに難民が割り込み、前線から引き上げて来た各部隊の移動を遅らせていた。

 途中、業を煮やしたフランクリン将軍が指揮戦車を降り、自ら交通整理をする一幕もあった。


     *


 シルハ大陸の北側にドーバー島があり、そこの同名港とシルハ大陸にあるダンケルク港との間で、フェリーが往来していた。

 ドーバー港を臨む白亜の断崖。そこを抉っていくつもの砲台が設けられている。砲台の背後には坑道が縦横に巡らされ、防空司令部と病院、自家発電機〈ダイナモ〉を備えた要塞になっている。

 発電室〝ダイナモ・ルーム〟は地下とは言っても明り取りのバルコニーがあって案外明るい。海軍指揮所であるこの一室が司令部となって、ダンケルク撤退戦に使われる全艦船が、海峡一帯の地形を熟知する、要塞司令官はラムゼイ中将によって手配されていた。


 スタッフの将軍や補佐官たちが、海図を広げ、飛翔型甲殻虫による妨害を予想しつつ、三つの航路を設定した。


 すでに駆逐艦、輸送船数十隻がダンケルクに入港しているのだが、

「まだまだ足りん。港に停泊している、ありったけの艦船、――巡洋艦、駆逐艦、砲艦、兵員輸送船、貨物船、病院船、漁船、タグボート、ヨット、遊覧船……、全部かき集めろ」ラムゼイ提督が、補佐の提督達、参謀達に指示を出した。そして、「あとは、副王殿下次第だ」とつぶやいた。


 続く

【登場人物】


01 レディー・シナモン少佐:王国特命遺跡調査官

02 ドロシー・ブレイヤー博士:同補佐官

03 グラシア・ホルム警視:新大陸シルハ警視庁から派遣された捜査班長

04 バティスト大尉:依頼者

05 オスカー青年:容疑者。シルハ大学の学生。美術評論家。

06 アベラール:被害者。ジャーナリスト。洗濯船の貸し部屋に住む。

07 エロイーズ:被害者。アラスの寄宿学校教師。アベラールの妹。

08 シャルゴ大佐:シルハ副王領の有能な軍人。

09 フルミ大尉:ヒスカラ王国本国から派遣された連絡武官。

10 トージ画伯夫妻:急行列車ラ・リゾンで同乗した有名人。

11 サルドとナバル:雑誌社〈ラ・レヴュ〉報道特派員。記者とカメラマン。

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