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9-4.過去編。ルイドはフレッドを配下にする

 凱皇騎士隊の人員増強の任を帯びたルイドは、古巣の騎士学校を訪れた。


 見慣れぬ形状の精霊武具を手にし、小さなレバーを引く――。ただそれだけの単純な行為で、その者が精霊武具に適合するか判断できる。適正のある者が銃のトリガーを引けば、魔力の弾丸が射出されるのだ。銃型精霊武具使いの資質は魔力弾の威力と弾数で明確に評価が可能だ。金属製の甲冑を貫通する魔力弾を十発撃てること、それがルイドが設けた最低条件。


 平民クラス六百人の生徒から三十人が精霊武具に適合し、その内十名がルイドの設けた基準を超えた。


「ちっ。十匹も豚を飼わないといけないのか。貴様等の能力を知りたい。全力で俺を攻撃しろ」


 騎士叙任式の後、屋外訓練場でルイドは新人精霊武具使いを蔑む。


「どうした。これは訓練だ。遠慮するな。貴様等如き下等な存在の攻撃が俺を傷つけることなどありえん。全員でかかってこい」


 ルイドの挑発に応じる者は居ない。かつては身分違いで手が出せなかった。


 だがこの時は違う。精霊武具使い達の目には、ルイドの莫大な魔力量が見えている。まるで屋外訓練場全体を覆い尽くす程に巨大な獣が目の前で顎を開いている、そう錯覚した。


 彼等の本能と精霊武具は、眼前の脅威からの即時退避を警告している。


「家畜小屋で育った者には家畜精神しか宿らないか。くっくっくっ。いいことを思いついたぞ。俺に傷をつけた者には、土地と馬を二頭、与えよう」


 馬がいば犂を引けるので、時間と獣に踏みつけられて固まった大地を砕き耕せる。耕地を増やせば、税を納めても余剰分を蓄えとして財産を築けるかもしれない。平民階級の新人騎士からしてみれば、土地と馬は喉から手が出るほどにほしいものだ。


 だが、既に巨大な獣の口腔内で弄ばれているに過ぎない騎士達は、身動きが取れない。彼等は牙から滴る唾液にも似た濃密な魔力を浴び、全身を熱病に冒されたかのように震わせていた。度重なる挑発に応じる者は居ない。精霊武具使い達は、これから自分の上官となる男に心底恐怖した。


 ルイドは舌打ちをすると、女性精霊武具使いの前へ移動し、胸元へ手を伸ばす。


「腑抜けどもが。貴様等、目の前で級友を強姦でもされないと、戦意が湧かないのか?」


 服が引き裂かれ、女性の胸元が顕わになる。


 しかし、それでも、誰も動かない。


 当の女性精霊武具使いですら、恐怖のあまり、直立不動のまま胸を曝けだしている。


「ちっ。所詮は平民。豚と変わらんか」


 ルイドが立ち去るため、背を向ける。その瞬間。音もなく滑らかに動く褐色の影。農具の代わりに筆を手にしてなお、幼い頃から積み重ねた労働の染みが色濃く残る指先は、手にした拳銃のトリガーを躊躇なく引く。


 フレッド・バーランはルイドの右肩目掛けて魔力弾を発砲。


 間を置かずにルイドが身を翻して魔力弾を回避。旋風が生まれ、その場に居たものは腕で目を庇った。フレッドの節くれ立った指先は第二射を放とうとしていたが、既にルイドが手首を掴み、射線を逸らしていた。


 炎のように逆立った前髪の下で、赤い瞳が獰猛に輝く。


「射撃の瞬間に殺気を発しなかった技量は褒めてやろう。豚にはできないことだ。弓兵なら一流だ。だがな――」


「……ッ!」


 ルイドは自身の精霊武具、小烏丸の柄でフレッドの顎を突き上げる。


「これはただの武器じゃねえんだ。殺気だけ消しても意味がない。攻撃の直前まで魔力を抑えておけ。魔力のコントロールを覚えろ」


「……はい」


 叶わない。そう悟ったフレッドは同時に、自分の上官となる者が暴虐の具現ではなく、理性と洞察力を兼ね揃えた兵士だと理解する。


「他の家畜ども、聞け。女が強姦されるまで動けないようなら、貴様等は家畜以下だ。性根をたたき直してやる。それと、女ァ。犯されるなら好機と思え。達する演技でもして油断を誘い、敵を殺せ」


 最後にルイドはフレッドに視線を向ける。


「攻撃は当たらなかった。だが気にいった。土地と馬を与えよう」


 こうして、フレッドは能力を認められてルイドの配下となり、後に、今次のフラダ王国襲撃の一員に選出されるほどの懐刀となる。


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