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理由2 無下にするから

「わたくし……

わたくしはこれ以上、殿下に無下にされることを良しとできませんの」


 ベレナが縋るような視線をマテルジに向けた。マテルジはベルナのそのような表情を見たことがなかったので仰け反った。


「ベレナ様。私もです……」


 ナナリーがハンカチで目尻を押さえる。


「「ナナリー様……」」


「私はすでにここ一年ほど、婚約者の義務であるお茶会をキャンセルされております」


 ナナリーが目を細めて婚約者サバルを見た後、憂いを帯びた目で床を見つめた。


「毎回お茶会の用意をしてくれる執事やメイドに申し訳ないので、『予定がつきましたらご連絡ください』とお願いしました。

しかし……一度も連絡はいただけませんでした」


「「まあ! わたくしもですわ……」」


 ベレナとジゼーヌが小さく左右に首を振って自分の眦にハンカチを置く。


 ジゼレーヌが首をもたげる。


「さらに、わたくしは……」


「「ジゼレーヌ様……」」


「わたくしは、パーティーのエスコートもここ一年ほど、突然のお断りをされておりますのよ。婚約者様とご一緒にとお誘いのパーティーが多ございましょう。ですから、パーティーにも参加できておりませんの」


 ジゼーヌは婚約者ライジーノをちらりと見やってからハンカチで眦を押さえた。


「パーティーに参加しないのにドレスを作ることは無駄遣いでしょう。ですから『出席なさるパーティーを教えてください』とお願いいたしましたの。

ですけど……一度も教えてはいただけておりませんわ」


「「まあ! わたくしも(私も)です」」


 ベレナとナナリーが賛同して、小さく頷いた。


「わたくしは先日のお誕生日に、プレゼントも届きませんでしたのよ……」


 ベルナは婚約者マテルジを一瞥もしない。


「こちらからのお誕生日プレゼントへのお手紙もありませんでしたわ」


「「まあ! わたくしも(私も)です……」」


 ベレナの腕にナナリーとジゼーヌが手を置いた。


 三人それぞれの『不実され自慢』かと思いきや、男ども三人が揃って『不実』を働いているようだ。野次馬たちはニヤニヤする者、軽蔑の眼差しを向ける者、クスクス笑いながら話をしている者がいるが、みなその後の展開を興味を持って待っている。


「それはっ! 我々は忙しい身なのだ! 当日に用事ができることもあるだろうっ!」


 サバルが声を荒げて反論した。

 それを聞いたナナリーはウンウンと二度三度首を縦に振る。


「そうですよね。前々から決まっていた日にちにも関わらず、その日に限って、何度も連続で用事ができる……。

そんな偶然は……ありますよねぇ……」


 ナナリーはサバルを肯定した。否定されれば反論できるが、肯定されてはそれ以上言えなくなる。サバルは目をキョドらせて口籠った。


「さらには、毎日毎日予定があって、一年もご連絡することさえもできない。

ことも……ありますよねぇ……?」


「「「プッ!」」」


 ナナリーが口では肯定しながら首を傾げると、野次馬たちは失笑した。


 今度はジゼーヌが頷く。


「そうですわね。わたくしたちのエスコートをキャンセルしたにも拘らず、なぜかエスコートをキャンセルしてきたご本人がパーティーには出席なさる。そのパーティーに呼ばれていないご令嬢を伴って……。

そういうことも…………あることですわよねぇ」


 ライジーノが、アワアワとしている。それを見たジゼーヌはライジーノに笑顔を見せた。


「そして、わたくしたちがパーティー主催者様からご心配してくださるお手紙をもらうことになり、お返事に窮する……。

そういうこともありますわよねぇ」


 ジゼーヌも否定しない。


「そうですわね。毎日毎日、他の方との逢瀬が忙しくて、プレゼントの用意もしないどころか、婚約者の誕生日さえも忘れることは…………偶然、ありますわよねぇ」


 ベレナもサバルを否定しなかった。

 が、男子生徒三人には周りから冷たい視線が飛ぶ。


「そして、『ありがとう』一言のカードも書けないほど忙しいことも…………

ありますわよねぇ」


 ご令嬢三人がウンウンと頷き、そして姿勢を正した。


「「「無下にされることに辛抱できなくて申し訳ありません」」」


 ご令嬢三人は再び頭を下げる。


「「「ですので、婚約を解消してくださいませ」」」

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