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理由10 相談していたから

 ナハトはべレナの美しい仕草に一瞬惚けるが、目をパチパチさせた後、息を吸って自分を落ち着かせる。


「それでね。

私は先程見てもらった通り、私を手足のように使いたがる兄がいてね」


「おいっ!」


 アドムの小さな反論にあちらこちらから小さな笑いが漏れる。ナハトがアドムをチラリと睨むとアドムは『ごめん』というように手を自分の目の前に出した。


「コホン! そういうわけだから、十数年は政務から離れられないと思う。なので、とても領地経営にまで口出しはできない。

そんな私だが、よかったらベルナ嬢の伴侶候補者の一人に入れて貰えないだろうか?」


 ナハトは真っ赤になりながら言葉を紡いだ。野次馬たちもべレナの反応に注目し、食堂は今までで一番静かになった。


「まあ! それは素晴らしい条件ですわ! 前向きに検討させていただきますわ」


 ベレナはナハトに笑顔で答える。


 貴族にとって、旦那様が領地に政務やら視察やらに赴き何ヶ月も会えないことなど当たり前なのだ。べレナの場合、その領地に赴く者が旦那様になるのかべレナになるのかの違いだけである。


 まだべレナが『伴侶候補者として検討する』としか答えていないにも関わらず、食堂内は拍手喝采となる。


 ベレナとナハトが生徒会役員として並び立ち生徒たちを導く様は、生徒たちの憧れであったのだ。『二人はお似合いだ』という話は陰で何度もされていた。

 マテルジというべレナの元婚約者を差し置いて……。


〰️ 〰️ 〰️


 淑女三人は学園を早退し、べレナの家であるタルント公爵邸のサロンでお茶を始めた。


「それにしても、言いたいことが言えてすっきりしましたわね」


 ジゼーヌはそう言いながらサンドイッチに手を伸ばした。騒動のおかげで昼食を食べ損ねていた。二人も軽食に手を伸ばす。


「相談した甲斐がありましたよね」


 三人は元々仲良しで、よくお茶会をしてはお互いの婚約者について愚痴を言い合っていた。


「ジゼーヌ様の台本は素晴らしいものでしたもの」


「お二人の演技も素晴らしかったですわ」


 三人は嬉しそうに笑う。

 いつもの愚痴をジゼーヌが台本化し、話す順番などは決められていたのだ。演技であるのでメイドがするかのような謝罪の仕草をして、本気ではないことを示していた。


「あの階段落ちが決め手になりましたわね」


 常々やり返したいと思っていた三人だが、ナナリーが怪我をさせられたことで、彼女たちの親たちも待てないと王家に談判した。


「婚約者としての態度が悪いことと冤罪をかけられそうになったことはともかく、センスがないことまで言えて、本当に楽しかったですわ」


〰️ 


 男たち三人のセンスは本当に酷かった。


 マテルジが『未来の俺たちの寝室に飾ろう』と言ってプレゼントしてきた絵画を見たべレナは唖然とした。

 森林を描いた絵画は子供の落書きのようだった。


「おいくらでしたの?」


 マテルジから聞いた金額にべレナは腰を抜かしそうになった。


「どこの商人に騙されましたの?」


 あまりにも酷い代物で、その商人はすぐに摘発された。市井に遊びに行って騙されたマテルジ。商人は『王子だと知らなかった』と泣いていた。マテルジは美男子であるが王族のオーラがなく、貴族の三男坊だと思われたそうだ。王太子の顔は有名であるしマテルジはアドム王太子に似ているのだが、少しばかり前髪の長いカツラを被れば気が付かれないらしい。

 とは言っても、貴族子息を騙そうとした時点で許されない。商人は財産没収のうえ、入国禁止とされた。


 べレナは、マテルジに婚姻後はこのような買い物をさせるわけにはいかないと頭を悩ませることになった。



 サバルがナナリーにプレゼントしたメリケンサックには宝石がついていた。


「これで壁を殴ったらこの宝石は割れますよ?」


「石は硬いのだ!」


 サバルはそう言ってナナリーからそのメリケンサックを奪うと外へ駆け出し、門の石柱にパンチした。確かに石柱は傷ついた。だが、サバルの瞳の色をしたタンザナイトはもっと傷だらけだった。石は硬いかもしれないが、石柱も石だし、何より分厚い。


「特注なのにぃ!!」


 崩れるサバルにナナリーは心の中で頭を抱えた。『こんな発注受けるなよっ!』



「この子を僕だと思って可愛がってほしい」


 ジゼーヌがライジーノから贈られたのは大きな水槽に入ったトカゲだった。引き攣りながら拒否できなかったジゼーヌは当然のように使用人に管理を任せる。

 そして、ビビりながら餌をやろうとした若い執事はトカゲに即時脱走され、その日の夜は屋敷中で大騒ぎになった。

 結局トカゲは見つからず、裏の森へ逃げたのだと判断された。


 それを聞いたライジーノは「仕方がないね……」と言って、翌日トカゲのブローチを贈ってきた。ジゼーヌの専属メイドは笑顔でクローゼットの引き出しの奥の奥へしまい込んだ。

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