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バリアと科学者のお屋敷



辺境伯領でアイの捜索が決定したのと同じ頃。


「着いたよ、お嬢さん」

「ん。ありがとう」

乗合馬車は王都に到着していた。


「王都の図書館なら、科学者についての書籍もあるかもしれないわね。宿屋を決めたら、行ってみましょう」



○○○



辺境伯領のとある宿屋。


そこには、騎士団長、ギルドマスター、大聖女、辺境伯と大物が勢揃いしていた。



「で、その者の行く先は!?」


「......存じ上げません」

「聞いておりません」


床に正座し、平伏す魔法使いと聖女。


遥か上の存在からアイの行方を訊ねられ、ただただ緊張していた。


ただ内心、あの期待外れは何をしでかしたのか、追い出した後も迷惑をかけやがって、と怒りの感情が満ちていた。



「野宿をしている可能性を考えましょう。私は野営地に向かいます」

と騎士団長と辺境伯が部屋を出た。



「あの役立たずが何かしでかしたのでしょうか?」

と魔法使いがギルドマスターに問うた。


「なっ......」

信じられないものを見る目で大聖女が魔法使いを見つめる。


「......いえ。少しだけ彼女に用があったのですよ、我々全員が」

とギルドマスターが答え、大聖女とともに部屋を出て行った。



○○○



「科学者!あった!」

思わず声を上げ、周りの人たちに睨まれた。

ごめんなさい。


でもテンション上がるに決まってます。自分の職業の正体が分かるのだから。



「現在のところ、科学者の職についているのは......えっ!この人......150年間に亡くなってる......。そんな」


ああ、科学者同士で語り合いたかったのに。


時の流れは、残酷です。


「でも、このデイモンド博士のお屋敷、まだ保存されているのね。......ちょっと行ってみましょう!」



○○○



「ん?このお嬢さんなら確かに、この馬車に乗って、王都で降りたよ。何事じゃい?」

乗合馬車の御者は、騎士団に囲まれ、最初は戸惑ったが、事情が分かり、速やかに答えた。


「まさか、犯罪者かい?ワシャ知らんで乗せたんだ。仕事で乗せたんだ。ワシャ悪くないぞ!」

「ご安心を。彼女は犯罪者では無いですよ」

「じゃあ何じゃよ」


「......どうも“龍の息吹”を使う魔法使いかも知れないのですよ。町を救ったらすぐに去ってしまったらしく、騎士団長と伯爵さまがお探しなのです」

「なんじゃと!?」


「すぐに連絡を。王都にも向かわねばなるまい」



○○○



デイモンド博士のお屋敷に辿り着きましたが、そこで見たのは、大変面白いものでした。


「これ、私の空論ノートのものと同じですね。流石同士です。なら解き方も同じでしょう」


お屋敷には薄い膜が張られており、中に入ることが物理的に難しくなっていました。


電磁障壁(バリア)”です。


管理者権限で消失させるか、同波長のバリアーで共鳴させる以外にありません。

前者が無理なので、必然的に後者を選びます。


「“電磁障壁発生装置”を作らなくてはいけませんね。ギルドに行けば、機械生命体の残骸などが卸されてるかも、です。あんな宝石が二足三文なのだから、世の中うまくできてますねぇ」



○○○



「何!?ギルドマスターや騎士団長たちがアイを追っている?」

魔法使いと聖女は、野営地のガラウィンたちと合流する。


「賞金首ということか?」

「そこまでは」

「......教会で聞いた話ですと、アイは教会からの依頼を断り続けている不心得者だとか」

「前会った時は浮浪者じみていたのに、この宿泊費が高騰している中で、宿屋に泊まっていたことを考えると......」

「......教会の金を盗んで逃げている?」


「あいつは、どこまでも迷惑な奴だな!!」

ガラウィンが拳で地面を叩く。


「アイツを騎士団に突き出そう。勇者たる我々の勤めだ」

「顔見知りのせめてもの情けです」

「教会の物に手を出せば極刑。ならばせめて痛みの無いようにしてあげたいところですね......」


レンジャーが情報を集めてきた。


「どうもアイは王都へ向かったらしい」

「よし、我々も王都へ行こう」



○○○



ギルドで購入した機械生命体の残骸で、電磁障壁発生装置を作り上げた。


場所がないので、ギルドの裏側で弄っていたのだが、道ゆく人たちから哀れな物を見る目で見られた。


何故か、銅貨をもらい応援の言葉をいただけた。



「まさか、乞食と思われたのでは......」

確かにちょっと格好が浮浪者っぽいけど......。


装置完成の達成感は雲散霧消し、ただただ惨めさだけがあった。


「......博士のお屋敷に行こう」


博士のお屋敷に向かいながら、装置のダイヤルを回し、バリアを張り、波長を調整していった。



○○○



「何!?もう馬車は出せないだと!」

「もう夜じゃ。事故でも起きようものなら馬が怪我をしてしまう。盗賊や怪物だっておる。明日の朝まで待ちなされ」

「ぐぬ」



ガラウィンたちが野営地に戻ってきた時には、元いた場所は他の冒険者に取られていた。

宿屋も同である。



最終話は15時に投稿致します

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