第九十四話 メシア、後夜祭を開催する。
メシア祭りが無事終了し、村人達は村で後夜祭を開催していた。
村人も、狼男も、互いに大いに盛り上がっている。
「いやしかしあんたらすげえな! あんなに早く走れるなんてよ!」「いえいえ、滅相もございません」「礼儀も正しいし、頼りになるねぇ」「あぁ、お皿持ちますよ」「あらあら、ありがとう。力もあるわねぇ」
祭りのお陰で雑談に華が咲いているようだ。
皆、思い思いに祭りの後夜祭を楽しんでいる。
クロヌス以外の白夜達審査員一行も後夜祭に参加し、一つの円卓を囲って座っていた。
円卓の上には村で採れた新鮮な野菜のサラダ、豚丸々一頭をそのまま焼いた豪華で豪快な肉料理、これまた新鮮そうなミルク等、美味しそうな食物が並ぶ。
「それではメシア祭りの成功を祝って……乾杯っ!」
「「「乾杯〜!!!」」」
白夜の乾杯の音頭をきっかけに、各々が料理を楽しむ。
「んぐっんぐっ……ぷは〜っ! これは美味いミルクだ!」
「こちらのサラダも美味しいですよ。主人さま。わたくしがよそって――」
「こっちのお肉も美味しいよ! あたしがお皿に盛って――」
「ちょ、ちょっとお二方。ハクヤ殿のお皿が山盛りになってしまうでござるよ……」
などとわいわいと賑やかになる。
他の卓でも乾杯があげられ、後夜祭は益々盛り上がりを見せていくのであった。
「みなさんっ! 乾杯をあげられたばかりで恐縮なのですが、お聞きください!」
すると茶髪の黒いコートに身を包んだ高身長の男――クロヌスが中央部に立ち、皆の注目を集める。
「お? なんだ?」
「クロヌスさんですね。……なるほど」
「クロちゃんだ〜。何か話があるのかな?」
「クロヌスでござるな。何やら真剣な表情でござる」
円卓の一行もクロヌスに顔を向ける。
「本日は我々――メシアの為にこのような催し物を施してくださり、ドンブ村の村人の皆さん、旅の冒険者で仰せられるハクヤ様御一行に、多大なる感謝を申し上げます。ありがとうございました」
クロヌスは一礼し、頭を深く下げる。
「おいおい野暮ったいぜ救世主さま」「門出を祝うのは当然のことですよ」「そうそう。それに俺達もメシアの一員だろ?」「そうだそうだ。あんたらだけのメシアじゃないぜ?」
村人達は口々に言葉を発する。
「……ありがとう。そう言ってもらえると嬉しい。我々は明日には各村へと赴き、救世主となるべく行動を開始するつもりだ」
クロヌスは頭を上げる。
「これからは皆で村を守り、皆で村を支え、皆で村に貢献させていただく。もう私一人ではない。狼男一族全員……いや、村の皆全員がメシアの一員となるのだったな」
「ふふっ」と笑みをこぼすクロヌス。
「……宴を中断してしまい、申し訳ない。今日は我々メシアの門出だ! 皆、大いに盛り上がろうではないか!」
「「「うおおおおお!!!」」」
「当たり前だぜリーダー!」「食うぜ〜! 超食うぜ〜!」「おいおい、明日も控えてるんだから程々にな」「何言ってんだよ! じゃ、それ貰お!」「あっ!? おい!」
狼男達と村人達は宴を共に楽しむ。
村一番の呑んべえ対狼男一族の酒豪による呑み比べ。
村一番の力持ち対狼男一族一の剛力による腕相撲。
それらを見てゲラゲラと笑う聴衆達。
「……いい光景だな」
白夜はその光景を見て、ポツリと言葉を漏らす。
「これも偏に主人さまのおかげかと」
コウハクも満足そうにその光景を眺めつつ、答える。
「そうでござるな。ハクヤ殿は自身が倒れるまで頑張ったでござるからな」
ギンもうんうんと頷きながら答える。
「……あまり褒められたことじゃないけどね。でもこの光景が見られたのは、ハクヤさんのおかげだよ」
イルミナは若干不満そうにしながらも答える。
「……そうか。そうだといいな」
白夜達は穏やかな目で賑わう宴の光景を眺めつつ、料理を楽しむのであった。




