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第九十三話 メシア、伝言リレーをする。






 メシア達全員は見事マルバツクイズを一人の脱落者も出さずにクリアすることが出来た。

 当初の目的――知性を試すことは出来なかったが、それよりも良いものを見ることが出来た。


(素晴らしい団結力だ。最後には大事なことにも気づくことが出来たようだしな。全員が全員百点満点。先生としちゃ嬉しいものだ)


 白夜は朝礼台に立ち、満足げにうんうんと頷き、全員にプレゼントを用意することとする。


「皆、よくぞ最後まで全員残ったな。それでは全員に褒美を与えよう」


 白夜は左手をトラックの中央に向け――


「……スキル<創造クリエイト>発動」


 スキルを発動する。

 するとトラックの中央に光の渦が発生し、瞬時に消える。

 その場所には手の平一杯で持てるサイズの宝石――ミスリルの山が姿を表していた。

 その数ざっと二百。


「「「……は?」」」


 振り返った狼男達が、何が何だか分からないといった表情を作る。


「一人一つか二つくらい持っておくと良い。そこそこ良い石みたいだし。残ったら備蓄しておくと良い」


 驚く狼男達には目もくれず、白夜は淡々と言葉を述べる。


「……ハクヤ様はスケールが違いますな。あれほどの希少金属をポンと作り出してしまうとは……」

「まぁ……最初は驚いたけど、ハクヤさんならねぇ……」


 呆れる二人が横でポソリと呟くのを気にせず――


「それでは、これにてマルバツクイズを終了する。各員褒美を受け取った後、一時間程休息を取るように。テントの横に飲食物を置いてある。用意してくれた村人達に感謝し、午後の部も全力を出せるように休息を取れ。では解散!」

「「「は、はっ!!!!」」」


 白夜はマルバツクイズの終了を告げ、各個は昼休みを取るのであった。






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(さーて、次で最後か。終わったら結果を集計していよいよ配属だな)


 白夜達――審査員一行はテント内に置いた椅子に腰を降ろし、各々飲食を取ったり、集計結果を見つめたり、村人達とわいわい話しながら休息を取る狼男達を眺めたりしていた。


 白夜はまた二人娘がこぞって飲食を分け与えようとするのを防ぐため、「俺の分は取ってこなくて良い」と未然にキッパリと断っておいた。

 同じ過ちは繰り返すべきではない。――二人が肩をガックリと落とし、物凄くションボリしていたのは大変心苦しいが。


「しかし……さすがは主人さまです!」


 体制を取り戻したコウハクはキラキラとした眩しい視線を白夜に向けながら大声で絶賛する。

 当の本人は――お前最近そればっかりだな――などと思っていると――


「普通ならクイズで知性や惰性を図る所ですが、まさかそこで狼男達の団結力を図るとは……しかも褒美にマジックアイテムや武具の元となるミスリルを与えることによって、警護を厚くさせる狙いまで――」


 などとコウハクが興奮してベラベラと喋り倒している。

 また色々と盛大に勘違いしているらしい。

 ――そこまで考えてないですよ――と心の中だけで唱えておく。

 言ってもあまり効果が無いのは先ほど体験済みだ。


「なるほど。そのような狙いがあったのですな。あれほどの希少金属であればレベル3クラスの魔法が込められます。咄嗟の防衛手段として上々ですな」

「備蓄も五十個以上あるでござるからな。困った時はあれを売りに出せば資金も得られるでござろう」

「あれで水とかも作れるからね〜。食料は村人さん達に頑張ってもらわないといけないけど、水の心配は無くなったね〜」

「食料についても、狼男達に狩に向かわせれば良いのです。見回りのついでに食料調達もさせるべきでしょう」


 すると白夜が何を言うまでもなく、勝手に会議が始まっていた。――もはや司会進行は要らないのかもしれない。


 白夜は――また俺の仕事が一つ減ったな……――と肩身狭い気持ちを味わいつつ水を一口飲み、狼男達を眺めるのであった。






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 一時間程の休息時間を終え、最後の種目――伝言リレーが始まる。

 チーム分けは採点表を参照して三つに分けてある。――接客、情報、配送職の三つだ。


「……それでは以上でチーム分けを終了する。聴き逃した者は居ないか?」


 白夜は朝礼台に立ち、チーム発表を終えて周りを見渡す。

 三列に並んだ狼男達はうんうんと頷き、無事にチーム分け出来ていることが分かる。


「……よし。それでは各員所定の位置に付くように。解さ――」

「すみません! 一つお聞きしたいことがあるのですが!」


 すると一人の狼男がバッと手を挙げる。

 番号札を見てみると――三十三番だ。


「んん? なんだ? 三十三番」

「はい。この競技なのですが……同時に与えられた三つの仕事を、いかに早く――効率良く完遂させるか、という考えで臨んでも良いのでしょうか?」






 ――どういうことだろう。






 白夜は言われた意味があまり理解出来ずにいた。


(んん? 同時に三つの仕事? 効率良く? 良く分からん。何が言いたいんだ?)


「それは……どういうことだ?」


 白夜は重々しく三十三番に問いかける。


「は、はい。つまり、この競技は――」






 ――なるほど!






 白夜は三十三番の思考力を評価し、うんうんと満足そうに頷くのであった。






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 伝言リレーはもの凄くスムーズに進み、早くも終了間近となっていた。

 それもこれもあの三十三番の提案――メシアの予行演習をしてみては――というものによってだ。


 三十三番は三チームに分けられた人員を見て――もしやこれは得意な職業別に分けられているのでは――と気づき、この競技のルールを確認するべく聞いたのだ。


 その結果、この競技で判断するべき対象が変更された。――狼男達三チームで個々が競い合うのではなく、メシアが三つの仕事をいかに早くこなせるか評価するものへと。


 狼男達がここまで団結力のあるものなのかと感心した白夜はもちろん了承するのであった。――チーム分けを再度行うことを。


 チーム分けはメシアが自発的に行った。

 人員を見てこのチームは恐らく接客向け、配送向け、情報向けと仮想し、各員を各場所に設置した。――情報職は情報を覚え、配送職は情報職を乗せて運び、接客職は情報の伝達をスムーズに行えるよう、各中間地点に配属させたのだ。


 正に圧倒的と言わざるを得ない速度で競技を終えていく様を見て、白夜は――


「……こいつらなら、村々を任せても問題なさそうだな」


 と、ポツリと独り言を漏らした。


「……そのようですね。主人さま」

「……そうだね。ハクヤさん」

「……そうでござるな。ハクヤ殿」

「……成長したな。お前達」


 と各審査員も言葉を漏らし、メシア祭りは全ての競技を終え、閉幕するのであった。







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