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第九十話 メシア、祭りを興す。






 各村に拠点を置くことは完了した。

 後は従業員の指導を済ませ、人材を適材適所に振り分けるだけだ。

 例の草原――狼男達の訓練場所に白夜達は向かう。

 到着すると、もう狼男達は既に集まり終えており、誰か人を待っているように見える。


「あっ! おはようございます! 指揮官の皆様方!」

「「「おはようございます!!! お三方!!!」」」


 すると三つに分けてある各グループのリーダーがこちらに気づき、挨拶をしてくる。

 それに気づいた各グループのメンバーも大きな声で挨拶をしてくる。――接客の心得はばっちりのようだ。


「うむ。おはよう諸君」

「おはようございます。狼男のみなさん」

「おはよ〜。今日も一日がんばろ〜」


 指揮官――白夜とコウハクとイルミナも挨拶を返す。


「今日はクロヌスとギンも来てるぞ」


 白夜はそう言って後ろからやって来るギンとクロヌスを指差す。


「これはこれは……お帰りなさいませ! 我らがリーダー! 我らが主人!」

「「「お帰りなさいませ!!! お二方!!!」」」


 すると狼男達は大きな声で二人に挨拶をする。


「ただいま戻ったでござるよ。これは……すごいでござるな」

「た、ただいま……これは圧巻されますなぁ」


 クロヌスとギンは百を超える狼男達の統率されたその佇まいにびっくりしているようだ。


(ふふ。良い表情だ。これが見たかったんだよな〜)


 白夜は満足そうにうんうんと頷く。


「訓練の賜物ですよ。わたくしとイルミナと主人さまの三人で、徹底的にやらせていただきました。皆、もう情報伝達の基本は完璧ですよ」

「うんうん〜。荷物運ぶのも慣れたものだよ〜」

「接客も問題なさそうだ。狼男達は覚えがよく、誠実な奴らだな。これは好感度上がるぞ〜」

「はぇ〜すごいでござるな」

「まったくですな」


 狼男達の覚えは良く、たった二日で基本は出来るようになった。

 戦闘訓練も彼らは野生で生きていたことも相まり、元々個々がかなりの戦力を保有していることが分かった。

 自衛術や鎮圧術、兵法などの基本を叩き込み、後は実戦経験を経ていくことで、村の警察官としてかなり優秀になることだろう。


「よし。それじゃあ今日の朝礼を開始するか。皆、整列!」

「「「はっ!!!」」」


 すると狼男達は隊列を整え、白夜達の前に整列する。

 縦横に十数列ぴったりと並ぶその姿は、まるでどこかの国の軍隊を思わせる正確さだ。


「皆、今まで訓練ご苦労様だった。たった数日でここまで出来るようになるとは大したものだ。誇りに思うが良いぞ」


 白夜はうんうんと満足げに頷きながら、狼男達に激励の言葉を投げかける。


「はっ! これもひとえに、指揮官の皆様方の御指導のおかげかと」

「まったくです。我らがチームはどこよりも素早く荷物を運ぶことが可能と自負します! 我らイルミナ親衛隊の名にかけて!」

「確かにそうでありますな。ですが情報伝達の制度ではうちのチームに敵うはずがありますまい。コウハク様の教えの賜物ですな」

「接客とは心と心を通じ合わせるためのスキルと知りました。仕事だけではなく、日常生活においても有用なものばかりです。ハクヤ様の教えは素晴らしいものです」


 グループリーダー達が次々と言葉を発する。


「そうだな……そこでだ、お前達の訓練の成果を試し、各個が得意な仕事に就けるよう、俺達が判断しようと思っているんだ」


 すると「おぉ……」「ついに職種が決まるってわけだな」「俺は運び屋志望だぜ」「俺は諜報機関だな」「私は接客でしょうか」「俺、どこに配属されても頑張る」などと狼達がポツリポツリと呟く。


「それを判断するために……明日狼男達の体育祭のような催しを興そうと考えているんだ」


 これはイルミナの訓練形式を見て思いついたことだ。

 今回は体育祭を通じて各個の能力や内面を見て判断し、適材適所に振り分ける。

 それが白夜の目的だ。いわゆる実技試験というものだろう。


「よって今日は各種種目を発表するので、それの練習にあたることを許可する。皆、無茶をしない範囲で励むように」


 まずは借り物競争。

 かけっこの形式で借り物の名称が書かれてある紙を置いた場所に向かい、書かれた名称のものを持って来てゴールで待つ者に渡す。

 その際借り物を見つける対応方法、正確さ、速さなどを見極める。


 次にマルバツクイズ。

 接客対応、情報の取り扱い、咄嗟の防衛手段などの基本的考えを問題にし、狼男達に選択させる。

 その際知性を見極める。


 最後に伝言リレー。

 これは少し特殊でスタート地点で各個に伝言が書かれた紙を見せて覚えさせ、中間地点に居るチームメイトに対して伝言をし続けてゴールへと向かう。

 この際情報の正確性、伝達速度、情報を忘れてしまった際の対応方法を見極める。


「以上、三種目の結果とお前達の志望先を考慮した上で配属先が決まる。分からないことがあった時や、何かアドバイスが欲しい時は各種指導員他、各狼男達に聞くのだ。それでは各員訓練を開始するように! 解散!」

「「「はっ!!!」」」


 狼男達は散り散りに各場所へと去って行き、各個で訓練や作戦を練っているようだ。


「さて……俺達は端で様子見でもするか」

「かしこまりました。主人さま」

「了解〜ハクヤさん」

「そうでござるなハクヤ殿」

「私は彼らに話でも聞いてきます。色々と興味深い話が聞けそうなので」


 クロヌスだけ狼男達の方へと去って行き、四人は草原の端に座り込み休息する。


「……上手く行けばいいんだがな」


 白夜は少々不安に思いながら独り言をぽつりと漏らす。


「上手く行かないわけありませんよ。主人さまのお考えなのですから」

「そだね〜。ハクヤさんが考えた事なら大丈夫でしょ」

「ハクヤ殿なら大丈夫でござる」


 と近くに座っている者達は皆が皆、白夜の考えを信頼しているようだ。


(お前らのその言葉が余計に不安にさせるんだがな……)


「……そうか。だといいけどな」


 白夜は――どうかうまくいきますように――と神頼みをし、明日の自分に託すのであった。






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