第九話 現人神、最初の方針を決める。
白夜はコウハクと今後について語り合おうとする。
だが、またふと疑問が湧いてくる。
(ん? 待てよ? そういや、さっきの『命名の儀』で、ステータス変動があるんじゃないか? 確認しておくか)
先ほどの命名の儀により、ステータスに変動が生じているはずだ。
自身の特殊能力値が減り、コウハクの特殊能力値がアップしていることだろう。
「コウハクよ。ちなみに俺達の今のステータスって、どうなってる? すまんがまた<解析>で見せてもらってもいいか?」
白夜はそう言って、コウハクの頭に手をポンと載せる。
「――っ! はい! こちらです!」
(気合のこもった良い返事だな。もっと軽くやってくれていいんだが……)
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名前:紅 白夜
性別:男性
年齢:十八歳
種族:現人神
ステータス
LV:1→3
HP:5→15
PW:5→15
MP:5→15
DF:5→15
IN:50
SA:25→20→コウハクへ5授与
種族特性
<飲食不要>
<天使系魔法適性>
<自動回復(中)>
保有スキル
マスタースキル<削除>
認識したものを削除する
一日一回のみ使用可能
マスタースキル<創造>
理解したものを創造する
一日一回のみ使用可能
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名前:賢者の現人神→コウハク(紅印)
性別:女性
年齢:十二歳
種族:現人神
ステータス
LV:1→2
HP:5→10
PW:5→10
MP:25→50
DF:5→10
IN:60
SA:5→10←ハクヤより5受理
種族特性
<飲食不要>
<天使系魔法適性>
<自動回復(中)>
保有スキル
ハイパースキル<解析>→マスタースキル<全知>
触れたもの、完全に認識したものを解析する
解析結果を他者と共有できる
記憶した事象を忘れることがない
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ステータスを確認してみると、いつの間にかレベルアップしていた。
(あれ? 俺レベル上がってる。やったぜ。でもここに来てから別にモンスター討伐とかしてないんだが……レベル上げの条件が何かあると見た。まぁその条件が何なのか全く分からないが……おいおい調べておくとしよう)
コウハクはレベルとスキルが強化されている。
種族名に白夜の苗字の刻印のようなものが掘られている。
――命名の儀の効果だろう。
(……おや? レベルアップで前と同じステータスに戻ったか? ちょっと安心した。というかステータスの上がり幅がやばい。MP一気に50とかすごいな。なるほど。前の種族じゃ1レベル上がっただけじゃ、ここまで上がることはなかったんじゃないか?)
ちらっと横顔を伺うと、ニコニコしながらこっちをじーっと見つめていたので、素直に喜んでくれてそうだ。
――良かった――と白夜は思い、胸を撫で下ろしてホッと一安心する。
(あ、PWも上がってる。ということは、ロケットの威力も上がってんのか……)
めちゃくちゃ不安になった。
(……マスタースキル<全知>。大層な名前だな。元々あったハイパースキル<解析>が、特殊能力値が上がって進化したのか? 触らずとも解析と共有ができるようになっている。これはすごい。それと、完全記憶能力まで付与されている。――何それ怖い。迂闊に失言できなくなってるぞ。恐ろしい……。コウハクが俺の黒歴史ノートにならないように、細心の注意を払わなければ)
とりあえず、これくらいで現状のステータス確認を終えておく。
「おぉ。よかったなコウハク。俺達パワーアップしてるぞ」
横にいるコウハクに対して、満足気に頷きながら答える。
「はい! 主人さまのおかげです! ありがとうございます!」
(うむ。やはり謝られるより、感謝されたほうが心地いいな)
「どういたしまして」
そう言って頭を撫でておく。
「あっ、えへへ……」
コウハクは少し恥ずかしそうに俯いている。
(ふむ。大分仲良くなれたかな? ……あ、そういえば、もう触らなくても情報共有できるんだから、頭に手をおく必要もなかったのか。いかんいかん。安易なもふりはもうしないと、心に決めたのに)
白夜はサッとコウハクの頭から手を離す。
すると、コウハクが「あっ……」と声を漏らし、しゅんとして物凄く名残惜しそうな表情をする。
(……え? なんで? 何が気に食わなかったんだ? わからん……)
新たに増える謎は取り敢えず置いておき、本来の目的を思い出す。
(――いかんいかん。さて、そろそろ本題に入ろう)
少し寂しそうにしているコウハクを余所に、白夜はある提案を出す。
「よし、じゃあ今後の方針について考えようか。色々あって結構お腹一杯なんだけど、ここは異世界だよな」
そう。色々ありすぎてちょっと忘れていたが、ここは異世界なのだ。
現実世界には無かった、あれやこれやがあるかもしれない。
そう思うだけで、白夜の冒険心が自然とくすぐられる。
「……はい。そのようですね」
「色々冒険もしてみたいが、まずはこの世界について知ることが何よりも大事だと思うんだ。コウハクはどう思う?」
「まさにその通りかと」
コウハクも同意見と頷く。
「ふむ。そこでだ。……まず、俺はあの建物に向かってみようと思う」
そういうと、ここから少し先の方にある建物を指差す。
最初に草原を見渡している時に見つけた、黒い大きな塔のような建物だ。
「……あの黒い、大きな塔ですか。遠いため、詳しく確認できませんね……危険やもしれません」
「ふむ……確かにな」
確かに安全とは程遠い、危険を顧みない行為だろう。
もしかしたらあの城には善良な者が住んでおらず、こちらを見た瞬間に『死ぬがよい』とか言われて襲われる危険性もある。
だが――
「そうだな。危険が潜んでいるかもしれん。だが、まぁ、ここでぼーっとしているわけにもいかないし、安全を確保するための危険と割り切るしかない。まずは少し近づいてみて、様子を見てみようじゃないか」
「……かしこまりました。主人さまがそう言うのでしたら」
コウハクの不安も分かるが、ここで立ち往生しているわけにもいかない。
何よりもこの世界についての情報が少なすぎる。
あれほど大きな建物ならば、少なからず人が居ることだろう。
もし善良な者が住んで居たならば、そこで情報収拾が出来るかもしれない。
リスクも大きいがリターンも大きいだろう。
「よし! んじゃ、とりあえずあそこへ向かうとしよう。行くついでに神様のことについて、簡単に教えてくれ」
「――! はいっ! かしこまりました! ご教授致します!」
コウハク先生による神様授業を歩きながら聴きつつ、白夜達は黒い建物へと足を運ぶのであった。