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第七十九話 狼男達、休憩する。






 あれから各種訓練を全てのグループが一巡でき、白夜達と狼男達は各々休息時間に入っていた。


 白夜は草原の片隅で地面に座り込み、皆が休憩する様を眺めていた。

 訓練中は周りで眺めていただけの村人達にも今は休憩時間だと伝え、接触を許可すると――村人達が持ってきてくれたのだろう。

 おにぎりやパンと行った軽食と水を家から持ってきて狼男達に渡してあげていた。


(――良い光景だ)


「お疲れ〜。ハクヤさん」

「お疲れ様です。主人さま」


 すると草原の片隅に座っていた白夜の元に、イルミナが水筒とパンを二人分持って、コウハクは水筒とおにぎりを二人分持って、両脇からテクテクとやってきた。――嫌な予感がする。


「……おう。二人ともお疲れさん」

「ハクヤさん。村人さんからパンとお水もらったんだ〜。一緒に食べよ?」

「主人さま。村人からおにぎりと水を献上されましたので、ご一緒にいかがでしょうか?」


 白夜の予想は正しく、二人はほぼ同時にそう言った後、ピタリと止まる。


「……コウハク。わざわざ村人さんから二人分の水とおにぎり貰ってきてもらった所悪いんだけど……もうあたしがハクヤさんの分の水とパン持ってきちゃったから、それ要らないよ。一人で食べてね」

「……イルミナ。わざわざ懇願して村人から二人分の水とパンを頂戴してきてもらった所悪いのですが……もうわたくしが主人さまの分の水とおにぎりをお持ちしましたので、そちらは結構ですよ。お一人でどうぞ」


 またほぼ同時に言葉を発し、二人はしばらく互いに互いを黙って睨み合う。


「……ハクヤさんはおにぎりよりもパンの方が好みだと思うな〜」

「……主人さまはパンよりもおにぎりの方が好みに決まってます」

「……ありがとな二人とも。俺はどっちも好きだぞ。俺も大分熱く指導したからな。一人分じゃ足りなかったところだ。それ、両方貰えるか?」


 このままだとまた面倒な喧騒が始まりそうだと予感した白夜は二人から両方貰うという選択肢を選ぶ。


「……はぁ、分かったよ。コウハクも一緒ね」

「……まったく、分かりましたよ。イルミナも一緒ですね」


 そして白夜の右側にコウハク、左側にイルミナが座り、食事をする。


 白夜達は種族特性により飲食は不要である。

 ゆえに食欲は湧かないが、味覚はあるし、飲食は普通にできる。

 食欲が無い分空腹感が湧かないので、飯にありつけたという喜びは少ないが、二人が自分のために持ってきてくれたというのは素直に嬉しい。

 ならば据え膳食わぬは男の恥。

 ここは両方食すべきだろう。


 だが――


「……ありがとな、二人とも……元気、出たよ……」


(うえっぷ、せこい……食欲が無い分、生前よりも腹に入る量が減ったのか……? たったこれだけの飯で腹が膨れるとは……)


 今の白夜には随分と量が多かったようだ。

 二人分の飯はこの体にはきつい。

 しかし、二人娘は白夜が苦しく思っていることを知らずに――


「――っ! そっか! 良かった! なんなら、もっと貰ってこよっか――」

「――っ! それは良かったです! ならば、もっと元気付くように、更なる施しを――」


 またほぼ同時にそんなことを抜かす。


(おいやめろ。殺す気か)


「ま、待て待て! もうお腹一杯だ! これ以上は入らん……」


 白夜はそう言って両手の手の平を二人に向けて振り、なんとか二人を制止する。


(これ以上、二人に詰められたら……内側から爆発しそうだぞ……)


 そんなことを思いながら、白夜は二人が「そっか〜」「そうですか」と少し肩を落とす様を眺めるのであった。






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 〜某国〜


 ――おかしい。


 つい先日、あの者達から送られて来る信号が「村の奥の家に集まれ」と返って来たきり、音沙汰なくなった。

 こちらから連絡を送っても、向こうから何も返っては来ない。

 仮に村を制圧出来ているとするならば連絡が来る筈であるし、逆だとしてもあの者達の誰かから連絡が来る筈だ。

 だとするなら――


「……全員、やられたというのか? あの狼男達が……全滅だと? にわかには信じがたいな……」


 その者はただ一人椅子に座り、考え込む。


「ただの村人達が対抗できる戦力では元々無かった筈だ。……まさか、人間側に、村を救えるほどの余剰戦力がまだ……?」


 そう考えるなら、諸々の計画は破綻してしまう。

 人間側の戦力は抗争の戦線上に全て置いて貰う必要がある。

 その者は計画の破綻を恐れ、少し焦る。


「……ふぅ。落ち着け。焦ったところで良い考えは浮かばない」


 荒くなりがちな息を整え、冷静さを取り戻し、考えを浮かべる。


「計画が無事成功しているのであれば考えられるのは……連絡魔法石の故障、村の完全制圧の遅れ、あの狼男達の離反……これくらいか?」


 どれもこれも、あまり当てはまりそうには無いと思いながらも、口に出す。


「計画が失敗したならば考えられるのは……やはり戦力分析ミスか? たまたま村に強者が居たという可能性もあるな。……クロヌスめ。そこはしっかりと把握しておけとあれほど言っておいたのに……」


 「はぁ」とため息を吐き、使えない部下に対して心底呆れる。


「……まぁいい。駄目だったものはしょうがない。そればっかり悩んでいては時間の無駄だ。次の計画を成功させるために、頭を働かせるとしよう」


 まだ納得いかない点が多々あるが、もう終わったことだと半ば諦め、そのことについて考えるのはもうやめる。

 そして、次の計画――


「……邪魔な吸血鬼どもは今頃どうなっていることやら。さっさとあの場所から消えて無くなって欲しいところなんだが……」


 吸血鬼を根絶やしにする計画がどれほど進んでいるのかと考え、その者は玉座から席を立ち、歩きながら――思考の海に潜るのであった。






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