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第六話 精霊賢者、具現する。






 ――わたくしは……どうなったの?






 ――あの時、主人さまに体を預けて……それから……。






 ――そうだ。わたくしはもうすぐ消えるんだ。






 ――何もかも無くなって、それで……。






 ――結局、何もお役に立てられなかったな……。





 

 ――主人さま……。ごめんなさい……。






「……」


 ――え?


「や……に……ぞ」


 ――あ、主人さま?


「お前には……俺の役に立ってもらうぞ。覚悟は良いな?」


 ――え? は、はい。どうぞ……この身を煮るなり、焼くなり、好きにしてください……。


「では、作り変えさせてもらおう」


 ――へ?


「身体情報取得……取得完了」


 ――な、何が……


「心核情報取得……取得完了」


 ――起き……て……


「種族情報取得……取得完了」


 ――い……


「追加情報取得……取得完了。全情報取得完了。これより、<創造クリエイト>を開始する」






 精霊の意識は失われた。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 白夜は発光体を左手で包み、スキルを発動させる。

 そのスキルの名は、<創造クリエイト>。

 ――理解したものを世界に具現させるスキル。


(とかかっこよく、それっぽく言ってみたはいいが、ぶっちゃけものを作り出せるってことだな。条件が合えばどうやら種族変更も可能らしい)


 そして、今実際に<創造クリエイト>が発動している。

 だが――


(……俺の左手が白い。眩しすぎて白い。てか眩しすぎるわ! なんだこりゃ? 前見えねえ!)


 このままだと眩しすぎて目がおかしくなりそうだと思った白夜は、左手に持っていたそれを地面にそっとおろし、一歩二歩下がって光を防ぐように手をかざしながら様子を見て見る。

 すると、ぼんやりとだが、人型が出来ているのが分かる。


(これは……成功したかな?)


 やがて光が収まってくる。

 そこには――少女が手を前に組み、祈りを捧げるかのようなポーズで座っていた。

 白い髪は透き通るかのように美しく、腰の辺りにまで真っ直ぐに伸びている。

 閉じた目をゆっくりと開けると、大きくて丸いその瞳の色が紅に染まっていることが分かる。

 色白い肌は白磁のごとく綺麗で、汚れひとつない白のワンピースを着ているその少女は背が低く、見た目だと年齢十歳程度に見えた。


(――うむ。少女っていうか、幼女。幼女だな)


「……主人さま?」

「お、気がついたか。どうやら成功したかな?」

「こ、これは、一体……?」


 幼女は困惑した様子で自分の顔をペタペタと触っている。――説明しよう。


「俺のスキル、<創造クリエイト>で君を作り直した」


 白夜は「ふふん」と得意げな顔をしながらドヤ顔でそう語る。


クリ……エイト? わたくしの姿を……? わたくしを、<削除デリート>で消滅させるのでは……なかったのですか……?」


(……やっぱり勘違いしてやがった!)


「いや、だからなんでそうなる……? 消滅させるほどのこと、何かしたか? 俺は理由なく『死ぬがよい!』とか言って、相手を消滅させるほど鬼でも悪魔でもないぞ? それに――言ったろ? 俺の役に立ってもらうって」


 白夜は最初首を横に振り、やれやれという表情と仕草をしながら、最後にはニカッと笑ってみせる。

 その後、幼女が何やらハッとした顔をしている。


「ま、まさか……! わたくしはとんだ勘違いを……!?」


(お、やっと気づいてくれたか。なんか俺に対して勘違いしてるみたいだったしな。ほらほら。俺って案外良い奴なんだぞ〜。誤解が解けて何よりだ)


 白夜が安堵しながらそう思っていると、幼女が何やら小さな声で独り言を言っているようだ。


(……ん? なんかブツブツ言ってるな……。『てっきり見限られた? でもほんとは全部逆? 認めてくれた? なんと寛大?』……駄目だ、声が小さくて分からん。何のことやら)


「そうだぞ〜。俺はお前をちょこっと作り変えただけなのさ」


 とりあえず、白夜は事実だけを述べることにする。


「えっ? 作り変えたって――こ、これは!? 種族変更が成されている!? わたくしの種族が……えぇっ!?」


 幼女が自分のステータスを確認し、驚いた様子で確認している。


「あぁ、『現人神あらひとがみ』だな。神様になりたかったんだろ? 俺が創造できる神様と言ったら、さっき<解析アナライズ>で見た俺みたいなやつだけだからな。そっくりそのままだと、色々弊害があるから手を加えたんだが……。いや、上手くいったみたいだな。よかったよかった」


 そう言った後、幼女がわなわなと震えだした。頬は赤く染まり、口元を両手で押さえ、両目には涙を溜めているようにも見える。


(あ、あれ? まさか怒っていらっしゃる!? なぜに!?)


 白夜はそそくさと幼女の頭に手をポンと置き、スクリーンに映し出されているステータスを盗み見ることにする。


——————————————————————


名前:賢者の精霊→賢者の現人神あらひとがみ

性別:女性

年齢:十二歳

種族:精霊→現人神あらひとがみ


ステータス

LV:10→1

HP:10→5

PW:10→5

MP:20→25

DF:10→5

IN:60

SA:5


種族特性

<飲食不要>

<光属性魔法適性>→<天使系魔法適性>

<自動回復(中)>(new!)


保有スキル

ハイパースキル<解析アナライズ

触れたものを解析する

解析結果を触れた者と共有できる


——————————————————————






 ――あれ?






(やらかした!? レベルダウンしてない!? 軒並みステータス下がってない!? ま、まさか、作り変えるとレベル1からやり直しか!? こりゃいかんぞ……!)


 いうなれば、これはこういうことだろう。

 「俺、このゲーム得意なんだよ。まぁ見せてみろって」とか言いつつ、友達からゲームを強奪し、「あん?おいおい〜。これ、ステータス糞じゃねーか。はぁ全く。何やってんだよ。ダメダメこんなんじゃ。ポチッ」とか言って、キャラクタを作り変えるために、友達の苦労してやりとげたという思い出と共にゲームのデータを削除する行為と同義だ。

 ――あの時は怒り狂う友の手により、自分は死ぬのかと白夜は思ったものだ。


 しかも今回の場合はこの世界をやり込んでいない分、ただの嫌がらせに近い。


(ど、どうする!? くそっ! 今回も良かれと思ってやったのに! あぁ……この子の今まで培ってきた努力が……)


「まぁ……うん……」


 遠い目で幼女を見つめる。


「主人……さま……」


(うわぁ……今にも泣きそうな顔してる……心が痛い……ごめんよほんと……)


 ジリジリと後ずさりし、幼女から少し離れながら――


「よかったな! ほとんど俺と、同じじゃないか!」


 そう言って、力なく笑うことしか出来なかった。


「あるじさまああああ!」






 ズドンッ!






 その時、目に見えないほどの速度で、何かが白夜の腹に飛び込んできた。


(――これは幼女と言う名のロケットだ。トラック? んなもん比じゃない。これは成層圏なんて突破余裕だろう。そんなのが俺の土手っ腹に対してズドンッ! っと来たもんだ。これは死――)


「ぐふうおあぁ!?」


 それが腹に当たった瞬間、脳内で一瞬走馬灯のような物が流れたが、それは腹部にかかる強烈な衝撃により、瞬時にかき消される。


(あっ死んだ。さよなら俺。三途の川は早く渡れよ。じゃないと……異世界に……送り込まれ……)


 その後、白夜は天を仰ぎ、地面に衝突し、意識を失うのだった。


(……来世では軽々しく魔改造なんてしないようにしよう)


 そう心に誓いながら。






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