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第五十七話 神様一行、狼少年と出会う。






 白夜達は村長の家で門前払いをくらい、どうしようかと困っていた所を狼少年に住処に来るように誘われた。

 少年とは一定の距離がある中、イルミナが口を開く。


「……ハクヤさん。あの子のこと信じて大丈夫なの? あたし達をおびき寄せて、食べちゃうつもりかもしれないよ?」


 少年に聞こえないように手を口の前に当て、ヒソヒソと話す。

 しかし、白夜はイルミナの頭にコツンと拳を軽く当てる。


「あたっ」

「こらっイルミナ。失礼なことを言うんじゃない。あの子からは悪い雰囲気を感じなかった。本気で俺達のことを心配してくれているんだと思うぞ。コウハクはどう思う?」

「はい主人さま。あの少年は心からわたくし達を心配しているようです。スキルで心情を確認しましたので間違いありません」


 白夜はイルミナの間違いを正し、コウハクにも確認する。

 少年からは本当に自分達のことを心配しているような雰囲気を感じていた。――もう一つ、感じた雰囲気もあるが。


「ほら、コウハクも言ってるだろ? 大丈夫だ。向こうに着いたらちゃんとお礼を言うんだぞ?」

「……二人共ずるいよ〜。あたし何も感じなかったけどなぁ……む〜」


 イルミナは悔しそうに口を横にムッと結び、腕を組み、首を傾げている。


「おいおい、理由もなく相手を疑うのはあまりよろしくないぞ? かと言って、誰も彼も信じて言い訳ではないがな」

「えぇ〜? 難しいよ……」

「わたくしは主人さまを信じてますよ!」

「お? そうか〜ありがとな。俺もお前のこと、信じてるよ」

「――っ!? な、なんと……! 勿体なきお言葉……!」

「あぁっ!? ずるいずるい! あたしもハクヤさんのこと信じてるもん!」

「……あの、お三方。声が筒抜けでござるよ?」


 白夜達が喋っている内容は全て少年に筒抜けであったようだ。

 いつの間にか互いの距離も縮まっており、少年は他の家からは離れた場所に位置するある一軒家で立ち止まっていた。


「あらら……これまた失礼」


 白夜は頭を掻きながら、ぺこりと頭を下げる。


「ま、詳しい話は中で話すとするでござる。ここが拙者の住処でござる。入るでござるよ」


 そう言って少年は一階建ての小屋のような家の扉を開け、中へと入って行く。

 白夜達もその少年に続き、家の中へと入って行くのであった。


 家に入るとその少年の家は、失礼ながらとても質素なものであった。

 部屋の間取りはワンルームで、玄関を入ってすぐの所に人が一人二人並べるほどの大きさの台所。

 その前には風呂場と便所がある。

 奥に進むと椅子、机、収納棚、寝具などの必要最低限の家具が置かれた居間。


 白夜達はこの居間に案内された。


「狭い所でござるが、ゆっくりして行くでござるよ。今明かりを持って来るでござる」


 そう言って少年は台所へと向かって行った。

 白夜は部屋をざっと見渡してみる。

 机の間に一つと二つ、合計三つある椅子。――おかしい。






 気になることがあった。

 この少年は少年であるはずだ。

 だとすると、この椅子に座っているべき者の姿がない。――両親は居ないのだろうか。


 もちろん部屋の中にも姿は無く、あの少年は今一人ということだろう。

 共働きで夜遅いのかもしれない。

 それ以外だとすると――


「お待たせしたでござる」


 そう言って少年が火の点いたランタンを持って来て机に置いた。


「どうぞ椅子に座るでござるよ。拙者は寝具にでも腰掛けるでござる」

「ありがとう。そうさせてもらうよ」


 白夜達三人は椅子に座る。

 白夜は一つの座席の方へ座り、二人はその対面側に座った。

 先に白夜が一つの方へと腰掛けたのだ。――恐らく面倒なことになるだろうと予測して。

 そして少年は寝具に腰掛ける。


「さて、自己紹介が遅れたな。俺はくれない 白夜はくや。ハクヤでいい。旅の冒険者だ。今回は泊めてもらえて助かったよ。ありがとう」


 白夜は少年に自己紹介をし、お辞儀をする。


「あたしはハクヤさんのパートナー、イルミナよ。あたしからもありがとう。かわいらしい狼少年君」


 そう言ってイルミナも頭を下げた。――コウハクがパートナーという単語にピクリと反応した。


「わたくしは主人さま――紅 白夜さまの生涯の付き人、名をコウハクと申します。この度は困っていたわたくし達を救っていただき、感謝致します」


 コウハクもそう言った後、ぺこりと頭を下げる。――何やらメラメラと対抗心を感じるのは気のせいだろうか。


「救うなどとはとんでもないでござる。困っている者に手を差し伸べるのは当然のことでござる。拙者はギンと申す者。どうぞよろしくお願いするでござる」


 狼少年――ギンも、白夜達に対してぺこりとお辞儀をするのであった。






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