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第五十五話 神様一行、村に着く。






 白夜達はホフキンスという爺さんの乗る馬車の荷台に乗せてもらい、ドンブ村と言う村へと向かっていた。


「しっかしお主ら、この辺りは魔物がうじゃうじゃおって危ないぞ? 数年前に馬車など通らんようになったはずじゃ。運が良かったの」

「すみませんホフキンスさん。お代はしっかりと払いますんで」

「なぁに、心配いらんよ。未来の若者に向ける投資じゃと思うて、お代は無料じゃ無料〜」

「おぉ〜お爺さん、分かってるね〜。ここにいる三人は、将来絶対大物になるから、投資しといて損は無いよ〜?」

「全く……当たり前のことを言わないでください。主人さまが居らっしゃるのですから、当然のことでしょうに」


(おいおい……適当なこと言うなよ二人とも……)


「だっはっはっは! 言いおるわい! お主ら、見た所だと見込み有りじゃ。人間の国に来たら、わしの名前を忘れるでないぞ〜?」

「あはは。覚えておきます。ホフキンスさん」

「は〜い。ホフキンスさん」

「もちろん。忘れることなんてありませんよ」

「うむ! よろしい! ハクヤ君、イルミナ君、コウハク君よ」


(あらまぁ、すぐ仲良くなっちゃって。……しかし、見違えるほど成長したな〜イルミナの奴)


 以前のあのショボショボしたイルミナは、城消去の一件以来見たこともない。――本当に楽しそうだ。


(しかし、思わぬ所でパイプを手に入れてしまった。人間の国の魔法学院のトップと知り合えるとは。なんたる幸運。日頃の行いが良く出て来たな)


 白夜はガタゴトと馬車に揺られつつ、幸運の神に感謝しながらうんうんと頷く。


「しかし、おぬしらも物好きじゃのう。この辺りの人間の村に行きたいなどと。ここいらの人間の村は、ほぼ壊滅しておるらしいからの。なんでもある魔物が出たそうじゃ」

「ほぅ……魔物ですか?」

「そうじゃ。夜になると村人が襲われるらしい。ま、噂でしかないがの」

「なるほど……ありがとうございます。貴重な情報です」

「うむうむ。大した青年じゃ。情報の大切さを知っておる。益々気に入ったぞい!」


 ホフキンス爺さんは満足そうに頷く。


「……本当はわしが赴いてやらんでもないのじゃが、今は別件で力を余分に使う隙がないでの……」


 すると、突然今までの滑稽な爺さんの姿は鳴りを潜め、こう呟く。


「おぬしら、冒険者じゃろ? 危険じゃとは思うが、あの村を救ってやってはくれんかの〜?」

「……なるほど。確かにそれは一大事ですね。分かりました。ではお断りします」

「「「!?」」」


 一同は大いに驚いている。


「……あはは。何か隠し事してるでしょ? ホフキンスさん」

「「「!?」」」


 また驚いている。――こう見ると面白い反応だ。


「……くくっ……だっはっは! やはり見所有りじゃな!」


 爺さんは嬉しそうに大らかに笑っている。


「そうじゃよ。救う必要はないんじゃ。何でも“救世主”と呼ばれる者が村々を渡っておるらしい。そいつがもう村を救っちまってるから、おぬしらの出番はないじゃろうな。ま、危険がないのじゃから安心じゃろうて。いや、すまんな、試すようなことして。だっはっはっは!」


(よく喋る爺さんだな……)


「いえいえ、面白いお話でした。その救世主さんとやらにでも会って、武勇伝でも聞いてみますよ」


 そんな話をしているうちに村が見えて来た。

 ここから見る限りではそこまで大規模な村には見えず、家は転々と数十個、それを囲うように周りに子供の身長くらいの高さの柵を立て、柵の内周は家屋がある空間より余裕を持たせており、その余剰分の土地には家畜の小屋や畑があった。


「おぉ、ほれ。見えて来たぞい。じゃあここいらで降ろしてやろう。後は歩いて行くんじゃぞ。まだまだおぬしらは若いんじゃから」


 そう言って馬車を止め、白夜達を荷台から降ろしてくれる。


「ありがとうございました。ホフキンスさん。後々ヒュマノにも行くと思います。その時はよろしくお願いします」


 白夜はホフキンス爺さんに礼をする。


「もちろんじゃ! 絶対わしの学院に来るんじゃぞハクヤ君! 良いもん一杯見せたるわい! だっはっはっは!」


 そう言ってホフキンス爺さんを乗せた馬車は去って行った。――よく喋る爺さんではあったが、嫌いじゃない。

 またきっとお世話になる時が来るだろう。

 白夜は見えなくなるまで馬車に向かって、手を振り続けていた。


「ねぇねぇ。何でホフキンスさんが何か隠してるって分かったの? ハクヤさん」


 イルミナが先ほどの件について白夜に聞いて来る。


「あぁ……なに、簡単なことさ。あの話をした時、今までと雰囲気をガラッと変えた割りに、最後の言葉の語尾がちょ〜っと伸びたんだ。何かこう……人をおちょくってやろうって感じのいたずら心が一瞬感じ取れたからさ。カマかけたら当たった」


 白夜がざっくばらんに説明すると――


「さすがは主人さま! 人心把握など、主人さまならばスキルを使わずとも、いとも簡単に出来るのですね! わたくし、尊敬します!」

「えぇ〜!? すごいすごい! あたし、全然分かんなかったよ〜」

「わたくしも、スキルを使用してようやく分かりました……」

「あはは〜。コウハクもまだまだね〜」

「むっ! 貴女だって、分からなかったでしょうに!」

「な、何よ! ちょっとはおかしいかな? って思ったし!」


 その後もキャイキャイと騒ぐ二人娘は放っておき、白夜は村へと歩き出す。


(……しかし、もうとっくに村が救われてたなんてなぁ。……いや、まだ一難去っただけかもしれん。小さなことでも良い。何かしらの功績が立てられたらそれで後ろ盾が出来る。取り敢えず話を聞きに行くか)


 すると二人娘が「待ってください〜」「待ってよ〜」と言って、遅れて走って来る。

 白夜は二人が来るのを少し待ち、追いついたと同時に村へと歩を進めるのであった。






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