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第五十三話 神様一行、出立する。






 白夜達は貴賓室で準備を終えた後、城の中庭へと出てきていた。

 今までこの城を守ってきた英雄達をとむらい、今後誰にも眠りを邪魔されないようにする為だ。


 白夜はイルミナに顔を向け、宣言する。


「……じゃあ、やるぞ」

「……待って、ハクヤさん」


 するとイルミナが手をバッと白夜の方に向けて制止する。


「……どうした?」


 そしてスタスタと白夜に近づき、目の前にまでやってくる。

 すっと両手を白夜の背中に伸ばして後ろで手を組み、体をぎゅっと密着させ、イルミナは白夜に抱擁をしてくる。


「え? お前、何を――」

「あ、貴女! 何を――」

「ごめんね、ハクヤさん。ちょっと我慢してね」


 イルミナがそう言った瞬間、白夜の体はふわりと浮く。

 するとその高度が突如グンッと上がり、白夜はビュンッとイルミナに抱きつかれたまま城の遥か上空へと一瞬で辿り付いていたのであった。


(……え?)


「――でええええええええ!? お前! 何してんの!?」

「あはは! 一緒に空を飛ぶの楽しいね! ハクヤさん!」


 イルミナは心底楽しそうだ。

 しかし、白夜はそれどころでは無い。――あれほど大きな城全体が、今では手に取れるような大きさになってしまっている。

 もはやまともに下を見れそうになかった。


「馬鹿野郎っ! 早く降ろせっ! 何する気だー!」

「あはは。そうだね〜。あたしのお願い聞いてくれたら、降ろしてあげるよ〜?」


 イルミナは「ふふん」と笑う。

 すると今まで対面に抱きついていた体勢を、今度は白夜をグルンとひっくり返してイルミナは背後に回り、後ろから白夜を抱きかかえる体勢へと移った。


「うおぉ!? ちょちょ! もうちょっと丁寧に扱って! 落ちるから!」

「大丈夫大丈夫。落ちないよ〜」


 イルミナはケラケラ笑いながら、城の方向を指差す。

 そして――


「あそこにあるお城……全部消しちゃって!」


 と元気良く宣言したのだった。






 ……は?






 白夜は耳を疑う。


「……はあああああ!? 何言ってんだお前! あそこにある城ってお前……『ヴラッド=シュタイン城』を消せってのか!?」

「うんそうだよ〜あはは!」


 イルミナはケタケタとまだ笑っている。――笑い事じゃないだろう。


「お前……! そんなことしたら、もう二度と戻せなくなるんだぞ!? お前の帰る場所が無くなっちまうんだぞ! それでも良いのか!?」


 白夜は怒気を込めてイルミナに対して問い詰める。

 すると――


「大丈夫。もう帰る場所はあるもん。……ハクヤさん、お父さんに言ってくれたよね? あたしのこと、絶対に幸せにしてくれるって」

「――っ!? お、お前! 何でそれを――」

「だからさ……」


 イルミナは白夜のことをぎゅっと抱きしめ、すうっと息を吸った後――


「――あんな質素なお城じゃ、あたし全然足りないんだから! だから……ね? ハクヤさん! もっと綺麗でかっこいいお城、建ててよね!」


 そう白夜に宣言する。


「はああぁぁ!? なんで俺がお前の城建てなきゃいけないんだよ!」

「……えぇ? マジ? ハクヤさん、そりゃ無いよ――」







 ヒュンッ! ヒュンッ!







 すると、白夜とイルミナの近くに超高速の風の球が飛んでくる。


「うおっ!? 今度はなんだ!?」


 慌てて飛んできた方向を見てみると――


「こおおおおの小娘ええええええ! わたくしの主人さまを……返せええええええ!」


 地上からここまでかなりの距離があるはずなのに、ここまで聞こえてくるほどの大声でコウハク(多分)が昨日も撃ってきた魔法を仕掛けてくる。


「――どわあああああ!? ヤベェ!? 撃ち落とされる!?」

「あちゃ〜……あれは連発されると避けられないね。……お? なんかでっかいの来るね〜。怖い怖い」

「冷静に実況してんなよ! 早く避けろおおお!?」

「やだもん〜。あのお城消してくれなきゃ、あたしここを動かないもん〜」


 イルミナは特大の風の球が迫ってきているのにも関わらず、口笛吹いてどこ吹く風だ。――あんなものが当たったとしたら、白夜の体は大きく吹き飛び、やがて地面に落ち、この星に新たなるクレーターを作ることとなるだろう。


「あああああ! ちきしょう! 分かったよ! やりゃ良いんだろやりゃあ! もうどうなっても知らんからな! 後で泣いて後悔したって、遅いんだからな!」

「良いよ良いよ! やっちゃって!」


 白夜は右手を城のある方面へと向け、スキル<削除デリート>を発動する。

 城は問題無く認識され、どうやらこの辺り一体を更地に変えることだって可能のようだ。


「おらよ! あの城をお前らの一族諸共! 地獄に送り込んでやるよ! せいぜいあの世で楽しく平和に暮らしやがれ!」


 そう言った後、白夜はスキル<削除デリート>を解放し――


「……短い間だったけど、ありがとな! 『ヴラッド=シュタイン城』! スキル<削除デリート>発動!」


 吸血鬼の国『ヴラッド』の王城、『ヴラッド=シュタイン城』はその役目を終え、世界から姿を消したのだった。






これにて第二章、ヴラッド=シュタイン城編は終了になります。

これまでのお話はいかがだったでしょうか?

少しでもお気に召されたのであれば幸いです。


さて、次回から第三章、救世主編が始まります。

人間の国――ヒュマノへ入国する足がかりを作るため、白夜達は魔物に襲われているという、ある村を訪れます。

果たして白夜達は魔物を退治し、村を救う救世主となることが出来るのでしょうか――?

乞うご期待下さい!


それでは、また次章でお会いしましょう。

最後になりましたが、ここまで付き合ってくださった読者の皆様方、本当にありがとうございます。

これからも、どうかご愛読のほど、よろしくお願い致します。

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