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第五十話 現人神、魔法を習う。






 二人が白夜に対して哀れみの目を向ける居心地の悪い空気を何とか払拭し、白夜はもう一つの提案を出す。


「もう一つ提案があるんだけど、今日やること無くなったからさ、少し訓練をしておきたいかなって思ってるんだけど……」


 そこで二人をチラリと見渡す。


(……方や幼女。方や箱入りお嬢様。どう見たって、訓練出来るようには見えないよなぁ)


「……魔法訓練は無理だよなぁ」


 白夜はがっくりと頭を落とす。

 せっかく魔法が行使できる世界に来たのだ。

 どうせなら自分も何か使ってみたい。


「も、申し訳ございません! まだ魔法に関しては未知なる部分が多いので、わたくしは主人さまにお教えすることが出来ませ――」

「あっ、じゃあさ、あたしが教えてあげようか〜?」


 イルミナがにっこりと微笑みを向けながらそう言う。


「え? 教えられるの?」

「キッチンの使い方も教えたじゃん!」

「いや、あれ……呪文言うだけで出来たからさ」

「む〜、岩だって開いて見せたじゃん。基本くらいは教えられるよ」


(おぉ……イルミナが凄く頼もしく思える……)


 白夜はイルミナの自信あふれる佇まいに感動し――


「ぜひ、お願いしたい。一日で出来そうなくらいでいいから頼む」


 そう言って頭を下げておく。

 すると、「任されました〜」とイルミナが右手を頭の前に掲げ、敬礼をしてにっこりと笑う。

 そしてコウハクが心底悔しそうにイルミナを睨んでいる。――また何かの勝負をしているのだろうか。


「あとは戦闘訓練だが――」

「それに関しては、書斎で知識を得ました」


 白夜がそう呟くと、コウハクがすかさずカットインしてくる。


「……まぁ確かに、なんか武術書とか兵法とかの本見たけど、見ただけじゃなかなか動けるもんじゃないだろ?」

「いえ、わたくしにかかれば、主人さまに手取り足とり完璧に教えて差し上げられます!」


 そう言ってコウハクがキラキラと視線を向けてくる。


「……じゃあ、頼めるか――」

「はいっ! お任せください!」


 コウハクはすぐに返事をし、「むふん」と鼻息を立て、やる気に満ち溢れた表情で白夜を見てくる。――これは遠慮なくしごいてくるだろう。


「……じゃあ、先に魔法について教えてくれるか?」

「いいよ〜。じゃあ、まずは魔法の基本についてだね〜」


 それから白夜はイルミナに魔法について教えてもらった。


 魔法には術式というものがあり、それは魔法を発動するための情報の集合体のことらしい。


 その術式を描いたものを魔法陣と呼び、紙などに書いて展開し、魔力を魔法陣に流し込むことで魔法が発動するらしい。


 魔法の術式を複数組み合わせたものを魔法回路と言い、術式を複数組み合わせることで、魔法の効果も違ってくるようだ。


 術式のみのシンプルな魔法を術式魔法。

 複数術式を組み合わせたもの――魔法回路を使用した複雑な魔法を回路魔法。


 同様に術式魔法の魔法陣を術式魔法陣。

 回路魔法の魔法陣を回路魔法陣と言うらしい。


(なるほどねぇ。これは……)


 現実世界で言う所だと、理科の電池の働きを調べる実験に似ているだろうか。

 魔力が電池で、術式が抵抗やコンデンサーで、術式を繋ぐ線が導線で、魔法の効果が電球を光らせると言ったような。

 そう考えると、魔法陣=電子回路のように思えた。


 だが――


(……あんまり向いてなさそうだなぁ。物事を論理で考えるより、感情で考えることの方が多いし……。コウハク案件だな)


 白夜は理系ではあるが、どちらかというと精神論や感情論に走りがちである。

 大魔法使いになる夢は早々と諦め、その夢をコウハクへと託すことにした。


「……ふむ。俺にはあんまり向いてなさそうだな。コウハクなら大魔法使いになれるんじゃないか?」

「何を仰いますか。主人さまに出来無いことなんて、ほとんどありませんよ。大丈夫です。一緒に頑張りましょう!」


 すると、コウハクはキラキラとした笑顔でそう言ってくれる。


(――そうだな。やる前から諦めんなって話だよな。いい子だほんと……)


「ありがとなコウハク。そうだな……弱音吐く前にやる。当たり前のことだったな」


 白夜はコウハクの頭を撫でておく。


「えへへ……それでこそ、主人さまです!」

「……むぅ〜ちょっと〜? あたしをほっとかないでくれる〜?」


 放っておかれていたイルミナがプクッと頬を膨らましてむくれている。


「すまんすまん。続きを聞かせてくれるか?」

「もう……分かったよ」


 それからイルミナは簡単な術式魔法陣を教えてくれた。

 風を起こす魔法の術式らしい。

 イルミナが紙に術式を描いてくれた。

 線と線の間に一つ文字を書いただけの円形の魔法陣みたいだ。

 だが――


「……何これ?」


 その文字が奇怪であった。

 見たこともないし、読めそうにもない。

 

 まさか――


「ん? 何って……『風』って意味の文字だけど……」


(なん……だと……!? 文字っ!? 文字って言ったか!? くそっ! 文字が読めないことが、ここにまで及ぶとは……!)


 白夜はこの世界の文字を読み書きすることが出来ない。

 まさか、魔法にまで文字を使うとは思わなかった。――当たり前なのだろうが。


「……すまんイルミナ。俺実は、この世界の文字全く読めないんだよ。もちろん書くことも全く出来無い」


 白夜は申し訳なさそうにがっくりと頭を落とし、そう言うと――


「え? そうだったの? ふ〜ん……ハクヤさんにも、出来無いことってあるんだね〜」


 イルミナはにっこりと笑顔を見せ、それから――


「別に今出来なくてもいいじゃん。これから出来るようになればいいんだよ。あたし、教えてあげるからさ。……一緒にがんばろ?」


 と優しく言ってくれる。


(だからさぁ……こいつら、俺を泣かせる気かよ……)


 白夜は二人に涙を見せる訳にもいかず、「ありがとう」と言って頷いたのだった。






 コウハクが何やらむっとしている。






 また何かの勝負をしているのだろうか。






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