第四十八話 真祖、先代より受け継ぐ。
イルミナが一瞬光に包まれた現象に、白夜は見覚えがあった。
それは――
「……もしや、命名の儀……か?」
――命名の儀。
あの時コウハクに名前を付けた際に起こった現象と、先程イルミナに起こった現象は酷似していた。
もし、そうであるとしたら――
「――コウハク! イルミナのステータスを確認するんだ!」
白夜は呆けて何が起こったのか理解できていない様子のコウハクにそう指示する。
「――はっ!? はいっ! 主人さま!」
「ふぇ?」
コウハクは我に帰り、イルミナは何が何だか分かっていないような顔をしている状況だ。
だが白夜は構わず、イルミナのステータスを確認することを優先する。
すると――
「――っ!? こ、これは……」
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名前:イルミナ・ヴラッド=トゥルー(神祖印)
性別:女性
年齢:十六歳
種族:神祖
ステータス
LV:3
HP:15
PW:30
MP:30
DF:15
IN:40
SA:10←神祖から5受理
種族特性
<飲食不要>
<悪魔系魔法適正>
<自動回復(大)>
<聖属性耐性弱化>
保有スキル
マスタースキル<神祖>
魅了した者を眷属にできる
吸血鬼を無条件で従わせることができる
変身、飛行、催眠能力を得る
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「……は?」
はああああああああああああああ!?
イルミナが狭い空間内で例の大きな声を出す。
白夜は思わず耳を両手でふさぐ。
「何これ……『神祖』!? え? あたし、そんなのになっちゃったの!?」
イルミナが驚愕の表情を浮かべている。――なんだか既視感がある。
「……せっかくの銀朱石が……無くなってしまいました……」
コウハクはというと、折角の研究材料を失ったショックにより、がっくりと頭を垂れて落ち込んでいる。
「――あっ!? ご、ごめんね? だって……昔は触っても、何にも置きなかったんだもん……」
イルミナは慌てふためき、まるで食器を割ってしまった子供のように言い訳をする。
「……そうですか。命名の儀は命名者が認めた者にしか効果を発揮しません。貴女は主人さまの種族変更により『真祖』になりました。神様として祀られていた、先代の『真祖』――『神祖』に認められたのでしょう」
コウハクは少しションボリしながら説明する。
「あちゃ〜。そう言うことか。確かに『トゥルー』の名前が追加されてるな」
白夜はステータスを今一度確認する。
イルミナの名前に新たに『トゥルー』と追加され、その横には何やら『神祖』の印がある。――命名の儀の効果だろう。
ステータスはレベルが上がり、各種アップしている。――上がり幅がすごい。
SAが10まで上がり、スキルも<真祖>から<神祖>にパワーアップしている。
変身、飛行、催眠能力を使用できるようになったみたいだ。
そして種族特性も強化されており、自動回復が(大)になっている。
(吸血鬼の全ての能力が使えるような存在ってことか? こいつはえげつないな……)
「つまり――あの石には先代の真祖の命名の儀が込められてて、イルミナが認められたから、名を引き継いで、本当の神様レベルにまでパワーアップしたってことか」
白夜は起こったことを冷静に分析し、答える。
「冗談じゃないよ……あたしに神様なんて無理よ……コウハクやハクヤさんみたいに、何か凄いこととか出来ないし……」
イルミナを見ていると、かつての自分を見ているような気分になる。
体は強くなっても、心はそれになかなか着いていかない物なのだ。
(……分かる。分かるぞイルミナ)
なので、ここは一つ、先輩神としてアドバイスしてやることにする。
「大丈夫だ。物凄い能力じゃないか。イルミナならその内使いこなして、きっと俺やコウハクよりも凄くなれるさ」
白夜はキランと爽やかなスマイルを浮かべ、イルミナに対してグッジョブサインをする。
――てか多分、今の時点でも俺より強いよ――と心の内でのみ語りながら。
「……む〜、ハクヤさんがそう言うなら、頑張るけど……」
イルミナは照れ臭そうにそう言った。
最近確信したが、この子は褒められることに弱いらしい。
「あぁ。頑張れよ」
白夜はそう言ってイルミナにウインクを送り、激励するのであった。




